著作権重要判例要旨[トップに戻る]







通信社が新聞社に記事を配信するに当たり、その内容を真実と信ずるについて相当の理由があるとはいえないとした事例
「‘ロス疑惑’配信記事事件A」?平成140129日最高裁判所第三小法廷(平成9()1371 

1 本件は,通信社である被上告人が配信し,その社員(加盟社)の発行する新聞紙に掲載された記事が上告人の名誉を毀損するものであるとして,上告人が被上告人に対して不法行為に基づく損害賠償を請求する訴訟である。原審の確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
 (略)
2 原審は,次のように判断して,被上告人には名誉毀損による不法行為が成立しないとし,上告人の請求を棄却した。
 
被上告人の記者が,上告人の元妻であった乙から取材して,上告人の大麻所持についての具体的な供述を得ており,警視庁の捜査員が乙に対する事情聴取を行い,乙から同様の供述を得,上告人の渡航歴等も把握していること等について裏付けを取っているのであり,さらに,上告人は,時期は異なるものの,昭和56年ころ以降,大麻を吸っていたことがあることを自認していること等に照らして考えれば,被上告人が本件配信記事に摘示された事実を真実と信ずるについて相当の理由があったものというべきである。
3 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
 本件配信記事中の,上告人が昭和52年から同53年にかけて,自宅の冷蔵庫内に大麻を所持していたとの事実について見ると,前記認定事実によれば,丙記者が乙からその旨の供述を聞き,さらにE記者が警視庁の捜査官から確認を取っているのであるが,E記者が同捜査官から聞いたのは乙が警察でその旨の供述をしたことのみであり,結局は,乙の供述以外に上記事実の裏付けとなる資料が全く存在していないということができる。
 しかも,乙は上告人と離婚し,他の男性と再婚している者であり,現在の夫の手前,状況によっては上告人に関して殊更悪感情をもって話すこともあり得ること,丙記者の乙に対する取材が週刊G誌で「疑惑の銃弾」連載報道が開始され,上告人の行動が注目されていた時期にされたものであること等にかんがみると,捜査の対象にもなっていないような78年前の大麻所持という犯罪事実について報道するには,より慎重な裏付け取材が必要であったというべきである。
 乙の供述が具体的であること,その供述態度に不自然な点がないこと,乙の供述が丙記者の2度の取材及び警視庁での事情聴取において一貫していること,上告人が大麻との深いかかわりを自ら認めていること,本件配信記事作成の時点では上告人が既に逮捕されており,上告人に取材して確認することが不可能であったこと等の事情が存する場合であっても,上告人の友人や上告人が経営する会社の社員,取引先等他の関係者から昭和5253年ころの上告人と大麻とのかかわりについて取材することが不可能であった状況はうかがえないのであるから,本件において更に慎重な裏付け取材をすべき義務が軽減されることにはならない
 また,本件配信記事中には,上告人が大麻を自宅で所持したとの犯罪事実を捜査機関が突き止めたという本件配信記事の確実性を読者に強く印象付ける重要な事実も摘示されているところ,この点についても,E記者が警視庁の捜査官から取材して確認したのは,乙が捜査官に対し丙記者にしたのと同じ供述をしたということ及び捜査機関が上告人の渡航歴等を把握していたことのみであり,その他に捜査官が上告人の大麻所持についていかなる事実を把握し,どのような心証を持ち,どのように判断しているのかについて,E記者がした取材内容は全く明らかにされていない。したがって,本件において,捜査機関が上告人の大麻所持を突き止めたとの事実についても,これを真実と信ずるについて相当の理由があったことをうかがわせる事情は何ら認められない。
 以上によれば,本件の事情の下においては,被上告人に本件配信記事に摘示された事実の重要な部分を真実と信ずるについて相当の理由があるということはできないというべきである。
4 そうすると,原審の判断には,不法行為に関する法令の解釈適用を誤った違法があり,この違法は判決に影響を及ぼすことが明らかである。論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,被上告人の損害賠償責任について更に審理判断させるため,本件を原審に差し戻すこととする。











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