著作権重要判例要旨[トップに戻る]







譲渡権侵害を肯定した事例(2)
「‘北朝鮮の極秘文書’書籍事件」平成240131日東京地方裁判所(平成20()20337 

【コメント】本件本訴事件は、「原告書籍」について著作権を有すると主張する原告が、「韓国書籍」は原告に無断で原告書籍の一部を掲載したものであり、同書籍を製作し販売した被告高麗書林は、原告書籍に係る原告の著作権(複製権、翻案権、譲渡権)及び著作者人格権(氏名表示権、同一性保持権)を侵害したなどと主張して、被告高麗書林、上記韓国書籍が出版された当時の同社の代表取締役であった被告B、及び被告Bの子で上記出版の当時から現在まで同社の代表取締役である被告Cに対し、不法行為に基づく損害賠償等として所定の金員を連帯して支払うよう求めた事案です。

 なお、以下の前提事実も参照:

       被告Bの兄であるDは、韓国のソウル市において、「高麗書林」という屋号を用いて(以下「韓国高麗書林」という。)、韓国の書籍の出版、販売等の業務を行っていたことがある。

       平成82月、日本国内において、「米国・国立公文書館所蔵 北朝鮮の極秘文書(19458月〜19516月)」という題号の、原告を編者及び著者とする全3巻の書籍(「原告書籍」)が出版された。原告書籍には、米国軍が朝鮮戦争の当時北朝鮮地域を一時占領した際に押収し、その後米国の国立公文書館に所蔵されていた合計160万ページに及ぶ文書の中から原告が選択した、約1000点の文書(合計約1500)が収録されている(以下原告書籍に収録された文書の全部をまとめて「原告書籍収録文書」という。)。また、原告書籍の各巻の末尾には、原告が執筆した原告書籍の解説文(以下「原告書籍解説」という。)が掲載されている。

 ・ 
韓国高麗書林は、平成106月、韓国において、「美國・國立公文書館所蔵 北韓解放直後極秘資料(19458月〜19516)」という題号の全6巻の書籍(以下「韓国書籍」という。)を出版した。韓国書籍に収録された資料(文書)(以下韓国書籍に収録された文書の全部をまとめて「韓国書籍収録文書」という。)及びそれらの資料の掲載順序は、原告書籍収録文書と同じである。また、韓国書籍(1)の冒頭には、韓国語(ハングル)で書かれた韓国書籍の解説文(以下「韓国書籍解説」という。)が掲載されている。韓国書籍解説は、原告書籍解説から別紙記載の点が削除されているほかは、原告書籍解説をハングルに翻訳したものと同じである。 


(4) 韓国書籍収録文書及びそれらの資料の掲載順序が原告書籍収録文書と同じであることは前記記載のとおりであるから,韓国書籍中の韓国書籍収録文書部分は,原告書籍中の原告書籍収録文書部分に依拠して,これを複製したものであると推認することができる。
 [韓国書籍解説は,原告書籍解説に係る原告の著作権(翻案権)を侵害するか]
 前記のとおり,韓国書籍は,原告書籍が出版された約2年後に出版されたものであり,韓国書籍収録文書及びそれらの資料の掲載順序は,原告書籍収録文書と同じである。また,韓国書籍解説は,原告書籍解説が原告書籍各巻の末尾に掲載されているのに対して韓国書籍(1)の冒頭にまとめて掲載されており,別紙…記載の事項が削除されているほかは,原告書籍解説をハングルに翻訳したものと同じである。さらに,…によれば,上記削除部分が原告書籍解説全体に占める割合はわずかなものであると認められる。
 これらの事実を考慮すると,韓国書籍解説は,原告書籍解説に依拠して作成されたものと推認することができ,かつ,韓国書籍解説は,原告書籍解説の表現上の本質的な特徴を維持しながら,表記を日本語から韓国語に翻訳する変更を加えたものであり,原告書籍解説を翻案したものであるということができる。
 [被告らは,韓国高麗書林と共謀して韓国書籍を製作したか]
 (略)
 …こと,などを併せ考慮すれば,被告らが韓国高麗書林と共謀して韓国書籍を製作したことについては,これを認めるに足りないというべきである。原告の主張は理由がない。
 [被告らは,韓国書籍が原告書籍に係る原告の著作権及び著作者人格権を侵害するものであることの「情を知って」(著作権法11312号),韓国書籍を販売したものか]
(1) 原告は,被告らはDと共謀して原告書籍に基づき韓国書籍を製作し,これを日本で販売したのであるから,韓国書籍が原告書籍に係る原告の著作権及び著作者人格権を侵害するものであることの「情を知って」(著作権法11312号)韓国書籍を販売したものであると主張する。
(2) しかしながら,被告らが韓国書籍の製作に関与したことを認めるに足りないことについては,上記で説示したとおりである。また,本件証拠を精査しても,被告高麗書林が韓国書籍を販売した際に同書籍が原告の著作権及び著作者人格権を侵害するものであることを認識していたと認めるに足りる証拠もない。
 (略)
 [被告らは,韓国書籍を販売することにより,原告書籍に係る原告の著作権(譲渡権)を侵害したか]
 原告が平成1444日に被告高麗書林の店舗を訪れた経緯及び同店舗における原告と被告Bとのやりとりについては,前記認定のとおりである。したがって,被告Bは,少なくともその時点で,原告書籍の存在を認識し,かつ,韓国書籍に収録されている資料と原告書籍に収録されている資料の内容及び掲載順序が同様であるとの指摘を受けていたものである。
 そうすると,被告Bないし被告高麗書林は,出版を業として営む者として,原告から原告書籍(全3巻)を借り受けるなどして原告書籍の内容と韓国書籍の内容とを対照すれば,韓国書籍収録文書が原告書籍収録文書を複製したものであること及び韓国書籍解説が原告書籍解説を翻案したものであることを認識し得たにもかかわらず,このような調査を行うことなく,その後も韓国書籍を販売したものであるから,原告の上記訪問後の被告高麗書林による韓国書籍の販売による原告書籍に係る原告の著作権(譲渡権)侵害について,被告高麗書林及び被告Bに過失があったというべきである。
 なお,被告Cに過失があったことについては,これを認めるに足りる証拠はない。
 したがって,被告高麗書林及び被告Bは,平成1444日以後の韓国書籍の販売につき,原告の原告書籍に係る譲渡権を侵害したというべきである。

控訴審-平成240910日知的財産高等裁判所(平成24()10022等)-参照











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