著作権重要判例要旨[トップに戻る]







名誉毀損-否定事例(3)-
「‘北朝鮮の極秘文書’書籍事件」平成240131日東京地方裁判所(平成20()20337/平成240910日知的財産高等裁判所(平成24()10022等) 

【コメント】本件本訴事件は、「原告書籍」について著作権を有すると主張する原告が、「韓国書籍」は原告に無断で原告書籍の一部を掲載したものであり、同書籍を製作し販売した被告高麗書林は、原告書籍に係る原告の著作権(複製権、翻案権、譲渡権)及び著作者人格権(氏名表示権、同一性保持権)を侵害したなどと主張して、被告高麗書林、上記韓国書籍が出版された当時の同社の代表取締役であった被告B、及び被告Bの子で上記出版の当時から現在まで同社の代表取締役である被告Cに対し、不法行為に基づく損害賠償等として所定の金員を連帯して支払うよう求めた事案です。
 一方、本件反訴事件は、被告高麗書林及び被告B(以下「被告両名」という。)が、被告両名は、原告が執筆し日刊・大阪日日新聞に掲載された新聞記事、及び原告が朝鮮史研究会の会場において来場者に配布したビラなどに、被告両名が上記原告書籍を無断で盗用し、著作権侵害の海賊版(上記韓国書籍)を製作・販売したかのような内容が記載されていることによって、被告両名の名誉及び信用を毀損されたと主張して、原告に対し、謝罪広告並びに、不法行為に基づく損害賠償として所定の金員の支払を求めた事案です。 


【原審】

9 反訴争点1(本件新聞記事及び本件ビラ等は,被告両名の名誉ないし信用を毀損するものか)について
(1) によれば,本件新聞記事及び本件ビラ等に,別紙…記載の記事が掲載されていることが認められる。また,…によれば,原告は,本件ビラ等(ただし,本件名刺を除く。)を各100部ほど作成し,その大半を,原告の知人である朝鮮史研究会の会員や朝鮮問題の講演の参加者等に配布したことが認められる。
(2) 上記認定の本件新聞記事及び本件ビラ等の内容によれば,原告は,本件新聞記事を日刊・大阪日日新聞に掲載し,本件ビラ等を配布することにより,被告両名が韓国高麗書林と共謀ないし共同して韓国において原告書籍の海賊版を製作し,これを日本に輸入して販売しているとの事実や,被告両名が海賊版である「京城日報」の販売や「齋藤實文書」を無断複製して販売したことなどの事実を摘示するものであり,このような記載内容は,書籍・雑誌の輸入販売業者である被告高麗書林及び同社の前代表取締役で現在も会長の名目で同社の仕事を手伝っている被告Bの社会的評価を低下させるものであると認められる
(3) これに対し,原告は,本件新聞記事及び本件ビラ等には被告両名が韓国書籍を販売したと記載されているだけであり,被告両名が韓国書籍を製作したとまでは記載されていないと主張する。
 しかしながら,上記認定に係る本件新聞記事及び本件ビラ等の記載には,「高麗書林という日本と韓国にある兄弟会社である。兄が韓国で海賊版を作り,弟が日本で売る。日韓分業の海賊版には日本の著作権法は打つ手なしという。」(本件新聞記事),「この海賊版を製作・販売している高麗書林(日本側代表B…)」(本件ビラ1),「高麗書林(BDC)」(ぼくめつニュース1,同3ないし6の題名),「韓国の高麗書林と日本の高麗書林は互いの連携の下に海賊版を作って金儲けの道に走っている」(本件ビラ4),「高麗書林(BDC)らの海賊版」(ぼくめつニュース4),「海賊版常習の高麗書林(BC)」(ぼくめつニュース5),「日韓にまたがる海賊版業者の高麗書林は,日本と韓国に同名の会社を置き,韓国の兄が海賊版を作り,日本の弟がそれを『輸入』と称して持ち込み販売する。日韓双方で法の目をくぐる巧妙な手口といえます。」(ぼくめつニュース5)などの記載が存在する。これらの記載に鑑みると,本件新聞記事及び本件ビラ等に上記(2)認定の事実が摘示されていることは明らかである。
 原告は,被告両名が韓国高麗書林と協力していわゆる海賊版を販売していることは本件新聞記事の掲載及び本件ビラ等の配布以前から日本及び韓国において相当知られていたものであるから,本件新聞記事の掲載及び本件ビラ等の配布によって被告両名の名誉ないし信用が新たに毀損されることはないとも主張する。
 
しかしながら,原告の上記主張を認めるに足りる証拠はなく,これを採用することはできない。
10 反訴争点2(本件新聞記事及び本件ビラ等に掲載された事実は真実か,又は,原告において,本件新聞記事及び本件ビラ等に掲載された事実が真実であると信ずるについて相当の理由があったか)について
(1) 原告は,本件新聞記事及び本件ビラ等の内容は真実であり,仮に,本件新聞記事及び本件ビラ等の内容が真実でなかったとしても,原告はその内容が真実であると信ずるについて相当な理由があったと主張し,その根拠として前記…掲記の事実を挙げる。
(2) しかしながら,本件新聞記事及び本件ビラ等には,上記のとおり,被告両名が韓国高麗書林と共謀ないし共同して韓国において原告書籍の海賊版を製作していることなどの内容が断定的に記載されているところ,これらの事実を認めるに足りる証拠はない(前記3参照)。
 また,前記3の説示に照らすと,被告両名が韓国高麗書林と共謀して韓国書籍を製作した疑いがあることは否定できないものの,原告において被告両名が韓国高麗書林と共謀して韓国書籍を製作したことを断定的に記載することができるほど,同事実があったと信ずるに足る根拠資料があったと認めるに足る証拠はない。したがって,原告において,被告両名が韓国高麗書林と共謀して韓国書籍を製作したと信ずるについて相当な理由が存在したとまで認めることは困難であるというべきである。
 また,本件新聞記事及び本件ビラ等に前記のとおり摘示されているその他の事実についても,原告においてその内容が真実であると信ずるについて相当な理由があったと認めるに足りる証拠はない。
11 反訴争点3(被告両名の損害)について
(1) 名誉ないし信用毀損による損害
 前記認定に係る本件新聞記事及び本件ビラ等の内容や,本件新聞記事の掲載態様及び本件ビラ等の配布先,その他本件に顕れた一切の事情を考慮すると,被告高麗書林が受けた無形の損害及び被告Bが受けた精神的損害を金銭的に評価すれば,それぞれ30万円とするのが相当である。
(2) 弁護士費用
 
被告両名は,弁護士を選任して本件訴訟を追行しているものであり,本件事案の内容,認容額及び本件訴訟の経過等を総合すると,上記不法行為と相当因果関係のある弁護士費用の額は,それぞれ3万円と認められる。

【控訴審】

2 事案の概要
1 原告は,次の原告書籍につき編集著作物の著作権を有すると主張し,韓国の高麗書林名義で出版された次の韓国書籍について,原告に無断で原告書籍の一部を掲載したものであり,被告らが韓国の高麗書林と共謀して同書籍を製作・販売したことにより著作権(複製権,翻案権,譲渡権)及び著作者人格権(氏名表示権,同一性保持権)が侵害されたなどと主張して,被告会社と,韓国書籍が出版された当時の被告会社の代表取締役であった被告Yに対し,著作権侵害の不法行為に基づく損害賠償ないし不当利得返還を請求する(本訴事件)。
 (略)
 これに対し,被告らは,原告の執筆した日刊・大阪日日新聞の記事や,原告が朝鮮史研究会の会場において来場者に配布したビラ等に,被告らが原告書籍を無断で盗用し,著作権侵害の海賊版(韓国書籍)を製作・販売したかのような内容が記載されていることによって,名誉及び信用を毀損されたと主張して,謝罪広告の掲載と不法行為に基づく損害賠償を求めている(反訴事件)。
2 原判決は,本訴につき,多数の文書を収録した部分(原告書籍収録文書)と原告が執筆した解説文(原告書籍解説)からなる原告書籍に関して,原告書籍収録文書が編集著作物であることと,韓国書籍の解説文が原告書籍解説の翻案であることを認めた上で,被告らには韓国書籍を販売したことについて過失があるとして譲渡権侵害の不法行為を認め,30万円の限度で請求を認容した。反訴については,記事等の内容が真実であると信ずるについて相当の理由があったとはいえないとして,損害賠償請求を各33万円の限度で認容し,謝罪広告請求はその必要がないとして棄却した。
 (略)
7 反訴請求について
(1) 当裁判所は,本件新聞記事及び本件ビラ等は,被告らの名誉ないし信用を毀損するものと判断する。その理由は,原判決…のとおりである。
(2) そこで,本件新聞記事及び本件ビラ等の内容が真実であるか,あるいは,その内容が真実であると信ずるについて相当の理由があったかについて判断する。
 本件新聞記事及び本件ビラ等の内容は,「兄が韓国で海賊版を作り,弟が日本で売る。日韓分業の海賊版」,「日韓分業の海賊版業者」,「この海賊版を製作・販売している高麗書林(日本側代表Y)」,「高麗書林(Y・B・A)の海賊版」のように,被告らが,著作権侵害行為によって作成された韓国書籍を輸入・販売したことに加え,韓国高麗書林と一体の「高麗書林」として韓国書籍の製作にも関与していたとの印象を与える事実を摘示するものである。
 このうち,被告らが,著作権侵害行為によって作成された韓国書籍を輸入・販売した旨の摘示については,上記で判示したとおり,真実であると認められる。
 これに対し,被告らが韓国高麗書林と一体の「高麗書林」として韓国書籍の製作にも関与していたとの事実については,上記で判示したとおり,被告らが,韓国高麗書林と共謀するなどして原告書籍の海賊版を製作している事実まで認めることはできず,真実であるとは認められない。
 しかしながら,被告らが,韓国書籍について,韓国高麗書林が著作権を侵害する行為によって作成した物であることを認識した上で,これを輸入・販売していたと認められることは,上記で判示したとおりである。このような事実に加え,上記で認定したとおり,韓国高麗書林の経営者であるBは被告Yの兄であること,韓国高麗書林と被告会社との間に長年の取引関係があり,平成元年以降も被告会社が韓国高麗書林の発行する書籍を輸入・販売していたこと,韓国高麗書林が被告会社と同一のロゴを使用していたことがあったこと,被告会社は,韓国高麗書林による不二出版書籍無断複製本の発行に先立ち,これと近接した時期に不二出版書籍を購入し,その後に不二出版書籍無断複製本を韓国から輸入していることなどといった事実も認められるのであり,さらに,韓国書籍の発行者である韓国高麗書林と被告会社とは,「高」と「」の字体の違いはあるものの,一見すると同名であること,原告書籍の発行された我が国に被告Yが居住しており,被告Yが韓国書籍製作の前提となる原告書籍の入手に関与したと原告が考えたとしても無理はないこと,外部者である原告にとって韓国高麗書林と被告会社との内部関係を正確に把握することは困難であることなどの事情を総合すると,原告にとって,「この海賊版を製作・販売している高麗書林(日本側代表Y)」などと記載したように,被告らが韓国高麗書林と一体の「高麗書林」として韓国書籍等(海賊版)を製作したと信ずるにつき相当な理由があったというべきである。
 
したがって,その余の点について判断するまでもなく,反訴請求はいずれも理由がない。











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