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黙示の利用許諾を認めなかった事例(9)
「世界のSLビデオ映像放送事件」平成240322日東京地方裁判所(平成22()34705 

【コメント】本件は、世界各地の蒸気機関車(SL)を撮影したビデオ映像の著作者及び著作権者である原告が、当該ビデオ映像が被告らによってテレビ放送用の番組に編集され、テレビ局に販売されてテレビで放映されたことにより、同ビデオ映像に係る原告の著作権(複製権、頒布権及び公衆送信権)及び著作者人格権(同一性保持権、氏名表示権及び公表権)が侵害されたと主張して、被告らに対し、不法行為に基づく損害賠償金等の支払を求めた事案です。 

 原告は,被告らに対し,本件ビデオ映像を編集して放送番組を制作すること及びテレビ局を通じて同番組を放送することを黙示に許諾したについて
(1) 認定事実
 (略)
(2) 上記事実関係によれば,原告は,平成16528日にCから本件ビデオ映像の説明書の作成を依頼された際,被告らにおいて本件ビデオ映像を利用した放送番組を制作するという企画を検討中であることも伝えられていたものであり,その時点では,同企画及び本件説明書を作成することについて特段異議を述べず,むしろ,Cに対し,本件説明書を作成するために必要であるとして本件ビデオ映像のコピーを渡して欲しいと求めるなど,本件説明書の作成に応じるかのような対応をとっていたことが認められる。
 そして,被告らは,このような事実をもって,原告は,本件ビデオ映像が編集されて放送番組が制作されること及び同番組がテレビ局を通じて放送されることについて黙示の許諾を与えていたものと評価することができると主張する。
 しかしながら,…によれば,Cが原告に対し本件ビデオ映像を利用した放送番組制作の企画を検討していることを伝えた段階では,本件ビデオ映像を使用して実際に放送番組を制作することができるか否かは,まだ判断ができない状態であって,当該企画自体が明確に確定していたわけではなく,当然,被告らにおいて,どのような方針で本件ビデオ映像を編集し,具体的にどのような内容の番組を制作するのかという点や,制作された番組を誰に対してどのような条件で販売し,いつどのような形で放送されるのかという点についても,確定していなかったものであり,これらの事項について,被告らから原告に対して説明したり,原告の許諾を求めたりしたことはなく,原告においてこれらの事項を認識していたものでもなかったこと,その後,別件訴訟が提起されるまでの間に,被告らが,これらの事項を原告に説明するなどして許諾を求めたことはないこと,が認められる
 そうすると,原告が,Cから,本件ビデオ映像を利用した放送番組制作の企画があること及びそのために本件説明書を作成する必要があることを伝えられ,そのことに特段異議を述べず,むしろ,Cに対して本件説明書の作成に応じるかのような態度をとっていたとしても,そのことだけをもって,原告が,被告らに対し,本件ビデオ映像を編集して放送番組を制作し,これをテレビ局に販売することや,同番組をテレビで放送することについて,黙示に許諾していたものと認めることはできない
(3) 以上のとおりであるから,被告オスカ企画による本件テレビ番組の制作,被告オスカ社による本件テレビ番組の販売及び販売先のテレビ局による本件テレビ番組の放送につき,原告の許諾を得ていたと認めることはできない。また,前記認定のとおり,本件テレビ番組がテレビで放送された当時,本件ビデオ映像は,まだ公表されていなかったものであり,かつ,同番組には,撮影者である原告の氏名は表示されていなかったことが認められる。
 したがって,原告は,被告オスカ企画が,原告の意に反して本件ビデオ映像を編集し,本件ビデオ映像の一部を利用して本件テレビ番組を制作したことにより,本件ビデオ映像に係る原告の著作権(複製権)及び著作者人格権(同一性保持権)を侵害されたものと認められる。
 また,原告は,被告オスカ社が,本件テレビ番組がテレビで放送されることを目的として,同番組をテレビ局に販売し,その後同番組がテレビで放送されたことにより,本件ビデオ映像に係る原告の著作権(頒布権及び公衆送信権)及び著作者人格権(氏名表示権及び公表権)を侵害されたものと認められる。
 
なお,被告らは,本件テレビ番組の販売先は特定かつ少数であるから,被告オスカ社が本件テレビ番組を販売した行為は原告の著作権(頒布権)を侵害するものではないと主張する。しかしながら,被告オスカ社が,本件テレビ番組がテレビで放送されること,すなわち,同番組を公衆に提示すること(著作権法2119号)を目的として同番組をテレビ局に販売したことについては上記認定のとおりであるから,被告オスカ社の上記行為は原告の著作権(頒布権)を侵害するものといえる











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