著作権重要判例要旨[トップに戻る]







譲渡権侵害を否定した事例
クレジットカード決済システム用ソフト導入サーバ事件」平成240323日東京地方裁判所(平成22()30222 

【コメント】本件は、原告が、被告らの構築するクレジットカード決済システム(DSL回線対応クレジットカード決済システム)の製品評価、機能評価のために一時的に使用させる目的で、被告NTTコムが運営するデータセンター内のサーバ(以下「本件サーバ」という。)2台にプログラム(サーバとクレジットカードの決済端末の認証を行い、DSL回線経由で送られてきた暗号化された電文を復号化等して、決済認証用のホストコンピュータに送信するアプリケーションソフト。以下「本件プログラム」という。)をインストールしたにもかかわらず、被告NTTコムが被告GPネットに本件プログラムがインストールされた本件サーバ2台を無許諾で譲渡し、被告らにおいて上記目的が終了した後も本件プログラムを継続的に使用していると主張して、被告らに対し、本件サーバの譲渡が本件プログラムに係る著作権(譲渡権)を侵害するものであるとして、不法行為(譲渡権侵害)による損害賠償金等の支払いなどを求めた事案です。 

 譲渡権侵害の成否について
(1) 原告は,被告NTTコムが被告GPネットに対し,本件プログラムがインストールされた本件サーバ2台を譲渡したことが,本件プログラムに係る原告又はKDEの譲渡権(著作権法26条の21項)を侵害する旨主張する。
 しかしながら,譲渡権は,著作物(映画の著作物を除く。)をその原作品又は複製物の譲渡により公衆に提供する権利をいい,「公衆」には「特定かつ多数の者」も含まれるが(同法25項),特定少数の者に対する譲渡について譲渡権は及ばない
 本件において,被告NTTコムは,本件プログラムがインストールされた本件サーバを被告GPネットに譲渡したにすぎないのであるから,同譲渡は公衆に提供する行為には該当せず,本件プログラムに係る譲渡権を侵害するものということはできない
(2) また,上記の認定事実によれば,KDEが作成し,原告が邦訳して被告NTTコムに送付した本件サーバに係る仕様説明書には「Gpnet様向けGateway Server」という記載や,「最少の費用と簡単な設置で既存システムをインターネット対応のシステムにアップグレード」,「今後,Gpnet様の全ての端末にSSL基盤を簡単に適用可能」との記載があり,これらの記載は,原告において,本件サーバが被告GPネットに納品され,被告GPネットが本件プログラムを使用することをあらかじめ認識していたことを示すものである(この点,原告は,上記仕様説明書について,何者かが偽造したものである〈原告が邦訳したものではない〉などと主張するが,上記仕様説明書は,原告代表者Aが被告NTTコムSE部のCに対し,平成17825日に送信した電子メールに添付されていたものと認められ,原告の上記主張は採用することができない。)。
 これに加え,上記のとおり,被告INSソリューションが原告に交付した「SSLサーバ・アプリ年間保守(業務委託)」に係る注文書には,原告が行う業務内容として,「NTTコミュニケーションズ鰍ェ実施するGPネット保有のSSLサーバ・アプリに対する年間保守に関する委託業務」という記載があったことも併せ考慮すると,原告は,被告NTTコムから被告GPネットに対して本件プログラムがインストールされた本件サーバが譲渡され,被告GPネットにおいて使用していることを認識し,これを了承していたことが認められる。
(3) さらに,原告は,本件プログラムに関連して,東京ソフトから「サーバソフト設定費用一式」として800万円を超える金銭を受領しているが,この「サーバソフト設定費用」は,被告NTTコムSE部のCが当初,見積りを依頼した「サーバソフト」(本件プログラム)に対応する費用であり,環境構築という作業に対応する費用(システム構築費用)とは別項目とされていること,「サーバソフト設定費用」の内訳がNTTDCSの被告NTTコムに対する見積りや物品売買契約書別紙の物品内訳書の項目と一致しているだけではなく,被告INSソリューションのNTTDCSに対する見積書や岩通SSの被告INSソリューションに対する見積書の「サーバーソフト設定費用一式」の項目とも一致していることからすると,本件プログラムを使用することの対価がこれに含まれていたものと認めるのが相当である。
 したがって,NTTDCSと被告INSソリューションとの契約,被告INSソリューションと岩通SSとの契約のみならず,岩通SSと東京ソフトの契約及び東京ソフトと原告との契約における「サーバーソフト設定費用一式」には,本件プログラムの使用の対価が含まれていたということができるから,本件においては,原告→東京ソフト→岩通SS→被告INSソリューション→NTTDCS→被告NTTコム→被告GPネットと順次本件プログラムの使用許諾がなされ,それぞれ使用許諾の対価が支払われていたものと認められる。
(4) 上記(2)(3)のとおり,原告は,本件サーバが被告GPネットに対して譲渡され,被告GPネットが本件サーバを使用することについて,対価を得た上でこれを許諾していたことが認められるから,いずれにしても,本件プログラムに係る譲渡権侵害を認めることはできない











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