著作権重要判例要旨[トップに戻る]







複製権又は翻案権侵害の判断基準(14)
「錦絵・浮世絵世相史事件」平成240705日大阪地方裁判所(平成23()13060 

【コメント】本件は、原告が、被告に対し、@被告が執筆した「江戸のニューメディア 浮世絵 情報と広告と遊び」と題する単行本(「本件単行本」)の記述、A被告が執筆した「大江戸浮世絵暮らし」と題する文庫本(「本件文庫本」)の記述、及びB被告が出演した「NHKウィークエンドセミナー 江戸のニューメディア 浮世絵意外史」と題するテレビ番組(「本件番組」)での発言について、いずれも原告の著作権(複製権又は翻案権)を侵害し、又は一般不法行為が成立すると主張して、損害賠償金等の支払を求めた事案です。 

 被告の行為が,原告著作物についての著作権侵害(複製権侵害又は翻案権侵害)に当たるかについて
(1) 複製権侵害又は翻案権侵害の成否について
ア 著作物の複製(著作権法21条,2115号)とは,既存の著作物に依拠し,その内容及び形式を覚知させるに足りるものを再製することをいう。ここで,再製とは,既存の著作物と同一性のあるものを作成することをいうと解すべきであるが,同一性の程度については,完全に同一である場合のみではなく,多少の修正増減があっても著作物の同一性を損なうことのない,すなわち実質的に同一である場合も含むと解すべきである。
 また,著作物の翻案(著作権法27条)とは,既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的な表現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいう。
 もとより,著作権法は,思想又は感情の創作的な表現を保護するものであって(同法211号),思想,発想又はアイデア等を直接保護するものではない。そのため,仮に既存の著作物に依拠して創作された著作物であっても,具体的な表現のレベルでの本質的な特徴の同一性が維持されておらず,具体的な表現から抽出される思想,発想又はアイデアのレベルにおいて既存の著作物と同一又は類似と評価され,あるいは事実又は事件といったレベルにおいて同一又は類似の内容を述べていると評価されるにとどまる場合は,両者は,いずれも表現それ自体ではない部分において共通性を有するにすぎないから,著作権法上の複製にも翻案にも当たらない。また,具体的な表現に同一又は類似と評価される部分があったとしても,表現上の創作性がない部分について同一又は類似と評価されるにすぎない場合は,やはり複製にも翻案にも当たらない
イ このように,複製又は翻案に該当するためには,既存の著作物とこれに依拠して創作された著作物との間に,外形的表現としての同一性が認められることが必要で,さらに,同一性を有する部分が,著作権法による保護の対象となる思想又は感情を創作的に表現したものであることが必要である(著作権法211号)。そして,「創作的」に表現されたというためには,筆者の何らかの個性が表現されたものであれば足り,厳密な意味で独創性が発揮されたものであることまでは必要ないが,文章自体がごく短く又は表現上制約があるため他の表現が想定できない場合や,表現が平凡かつありふれたものである場合には,これを創作的な表現ということはできない。
ウ 本件において,原告は,被告による被告著作物部分の記述又は発言は,P3の浮世絵についての独自の研究成果を盗用したものであるとして,複製又は翻案に当たる旨主張する。
 しかしながら,前述のとおり,原告記述部分と被告著作物部分とを対比して同一又は類似するといえる部分があるとしても,それが思想又は感情の創作的表現の同一性の問題ではなく,表現から抽出される又は表現が前提とする,思想,発想又はアイデアにおける同一性,あるいは事実又は事件における同一性の問題にすぎないときは,当該被告著作物部分の記述又は発言は,複製又は翻案に該当するとはいえない。また,原告記述部分が何らかの歴史的事実に言及し,これに対する見解を述べるものであったとしても,そのような事実,見解自体について,排他的権利が成立するものではなく,これと同じ事実,見解を表明することが,著作権法上禁止されるいわれはない
(2) 原被告著作物対比目録についての検討
 (略)
(3) 小括
 
以上のとおり,本件では,著作権侵害(複製権侵害又は翻案権侵害)の成立は認められない。











相談してみる

ホームに戻る