著作権重要判例要旨[トップに戻る]







利用許諾契約の解釈(29)-解除の有効性が問題となった事例-
韓流スタートーク番組DVD事件平成240711日東京地方裁判所(平成22()44305 

【コメント】本件は、所定のDVD商品(「本件商品」)の映像(本件商品のDVDに固定された一連の映像であり、音声・音楽・字幕を含む。以下「本件映像」という。)の著作権を有すると主張する原告が、被告に対し、本件商品の販売・頒布の差止めを求めるとともに、損害金等の支払を求めた事案です。
 本件においては、以下のような前提事実があります。
       原告は、「韓国」において設立された株式会社であり、映像物製造等を業としている。一方、被告は、映像・音楽ソフトメーカーであり、各種パッケージソフト(CDDVD等)及びデジタルコンテンツの企画・制作・販売等を業としている。
       原告は、平成19677日、「MBC」との間で、韓国の俳優・女優(いわゆる韓流スター)が出演した韓国のトーク番組である「パク・サンウォンの美しいTV顔」と題するテレビプログラム(以下「本件プログラム」という。)を利用したDVD映像を製作・販売する契約(以下「本件プログラム利用契約」という。)を締結した。本件プログラム利用契約により、MBCは、原告に対し、本件プログラムを利用して本件映像を製作、複製し、日本国内で頒布する権利を独占的に利用許諾した。原告は、上記契約に基づき、本件映像及びそれを収録した本件商品を製作した。
       原告は、「JCI」との間で、平成1996日、本件商品を1枚当たり1480円、最低購入保証額5920万円(4万枚分)で販売する旨の販売契約(以下「本件販売契約」という。)を締結した。本件販売契約により、原告は、JCIに対し、本件商品を日本国内で独占的に頒布すること及びJCIが被告に対し独占的頒布を再許諾することを許諾した。
       被告は、本件販売契約に先立ち、JCIとの間で、平成19831日、本件商品の頒布契約(以下「本件頒布契約」という。)を締結した。本件頒布契約により、JCIは、被告に対し、本件商品を日本国内で独占的に頒布することを許諾した。
 ・  原告は、JCIに対し、平成20417日にJCIに到達した同月16日付け書面をもって、本件販売契約を解除する旨の意思表示をした(以下「本件解除」という。)。同書面と同一内容の書面が被告にも参照送付され、同月17日に被告に到達した。 


2 争点2(本件解除の有効性)について
(1) 末尾に掲記した証拠によれば,次の各事実が認められる。
ア 本件販売契約によれば,JCIが本件販売契約に定めた条項のいずれか一つにも違反した場合,原告は相当の期間を定めて催告後に本件販売契約を解除することができることとされていた(101項)。
イ 本件販売契約によれば,JCIは本件商品を最低5920万円分(4万枚分)購入し,契約締結後10営業日以内に1184万円,本件商品が全て納入されたことを確認した後,平成201月末日までに4736万円を,原告に支払うこととされていた(7条)。
ウ JCIは,平成19921日,原告に1184万円を支払った。
エ 原告とJCIは,平成19127日,本件商品の発注枚数を4万枚から37000枚(5476万円)に変更する旨合意した。
オ 原告は,平成20129日頃までに,本件商品37000枚をJCIに引き渡した。
カ JCIは,平成2028日,本件商品に「大量に不良品」がある旨原告側に連絡し,平成20212日,「概算約1000枚」の不良品が出ている旨を原告に通知した。
 原告側で確認したところ,本件商品を包んでいるビニール(シュリンク)が破損したものやパッケージに赤いゴミが混入していたものが3枚あったが,DVD自体に不良品はなかった。
キ 原告は,平成20312日,JCIに対し,本件商品の不良品の数量の連絡を求め,不良品がある場合はその全部を交換する旨通知した。
 原告は,平成20318日,JCIに対し,同月20日までに返事がなければMBCで直接本件商品に対する取引中止及び著作権破棄に関する手続を進行するようになる旨通知した。
ク JCIは,平成20328日,原告に対し,原告との「今後の取引が継続不可能」であること,原告に合計44520094円の賠償を求めること,「現在の返品数」は合計2860枚であることなどを通知した。
ケ 原告は,JCIに対し,平成20416日,「貴社ではDVDが販売されている現在まで弊社にDVD契約代金を支払っていないので弊社は貴社がこれ以上支払い意志がないことに見做してDVDの著作権及び肖像権一体を破棄するところです。」との内容を記載した同日付け書面を送付し,同書面は,同月17日,JCIに到達した。
(2) 上記事実によれば,原告は,平成2028日までに本件商品37000枚をJCIに引き渡しており,うち3枚のシュリンクやパッケージに瑕疵があったことは認められるが,それ以上に不良品が存在していたことを認めるに足りる証拠はない。
 そうすると,JCIは,少なくとも債務の本旨に従った履行のあった36997枚に対応する残代金42915560円(1480円×36997枚−1184万円)を原告に支払うべき義務があったというべきである。
(3) 次に,本件販売契約においては,催告を要する解除事由と無催告での解除事由とが分けて定められており,本件販売契約上の義務違反は催告を要する解除事由となっている(101項,3項)。
 しかし,催告をしたとしても相手方が催告に応ずる意思のないことが明らかな場合には,催告をしないで直ちに契約を解除することができるものと解するのが相当である。
 これを本件についてみると,JCIは,上記(1)クの通知において,原告との「今後の取引が継続不可能」であり,原告に合計44520094円の賠償を求める旨主張し,催告をしたとしても催告に応じて残代金を支払う意思はないことが明らかであったから,原告は,本件販売契約101項や民法541条の文言にかかわらず,催告なくして本件販売契約を解除することが可能であったというべきである。
(4) 上記(1)ケの書面には,「DVDの著作権及び肖像権一体を破棄する」旨記載されており,本件販売契約を終了させる,すなわち本件販売契約を解除する旨の意思表示であったと認められる。
(5) 上記(1)ケの書面が平成20417日にJCIに到達したことは上記認定のとおりであるから,本件販売契約は,同日,原告の解除により無効となり,本件販売契約による原告からJCIへの頒布許諾も無効となったものである。
3 争点3(原告の頒布権は消尽しているか)について
 本件映像のように公衆に提示することを目的としない映画の著作物については,当該著作物の頒布権は,いったん適法に譲渡(以下「第一譲渡」という。)されるとその目的を達成したものとして消尽し,その後の再譲渡にはもはや著作権の効力は及ばないと解されているところ(最高裁判所平成14425日第一小法廷判決),本件において,原告からJCIに対する本件販売契約が債務不履行により有効に解除されたことは前記のとおりであるから,適法な第一譲渡があったとはいえず,本件において消尽を論ずる余地はない
4 争点4(被告は解除前の第三者として保護されるか)について
(1) 民法5451項ただし書にいう「第三者」とは,解除前において契約の目的物につき別個の新たな権利関係を取得した者であって,対抗要件を備えた者をいうと解される。
(2) 被告は,解除前にJCIから頒布許諾を受けていたものではあるが,原告からJCIに対する頒布許諾と,JCIから被告に対する頒布許諾とは別個の債権的な法律関係であるから,被告が解除された本件販売契約の目的物につき新たな権利関係を取得した者ということはできず,また被告の権利は対抗力を備えたものでもないから,いずれにせよ被告が民法5451項ただし書にいう「第三者」として保護される余地はない。なお,原告は,原告とJCIとの間の契約が,第三者(被告)のためにする契約であったと主張するが,(証拠)の各契約内容に照らし,採用することができない。
(3) したがって,被告は,本件解除によりJCIが頒布権原を失ったことにより,JCIからの利用許諾に基づく頒布権原を原告に対抗することができなくなり,被告は原告の著作物を無許諾で頒布したということになる
5 争点5(被告の故意過失)について
(1) 本件販売契約が事後的に効力を失ったとしても,本件解除前に被告が本件商品を頒布した時点においては,本件販売契約及び本件頒布契約が有効に存在していたのであるから,被告が頒布権原を有するものと認識して本件商品を販売したことに落度はなく,本件解除前の頒布行為については被告に故意過失は認められない
(2) 本件解除後の頒布行為については,被告は,平成20417日,原告からJCIに対する本件解除の通知の参照送付を受けていたのであるから,被告は,同日,本件販売契約が解除されたことを認識し,少なくとも同通知により本件販売契約が解除された可能性があることを認識したというべきであり,その後の被告の頒布行為には少なくとも過失があったと認められる











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