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黙示の利用許諾を認定した事例(15)
クレジットカード決済システム用ソフト導入サーバ事件平成240926日知的財産高等裁判所(平成24()10039 

【コメント】本件における前提事実は、以下のとおりです:

・控訴人は、通信機器の開発・製造及び販売を主たる業務とする株式会社であり、被控訴人NTTコムは、電気通信事業等を営む株式会社である。被控訴人INSソリューションは、情報処理システムのコンサルティング・システム開発・システム構築及びコンピュータセンターの保守・運用等を目的とする株式会社である。被控訴人GPネットは、クレジットカード決済用端末(以下「決済端末」という。)を介して、飲食店や小売店等のクレジットカード加盟店から送られてくる信用照会データや売上げデータを、独自のネットワーク網を利用して、国内外のカード会社及び金融機関に対して中継・配信することを主たる業務とする株式会社である。
・「本件プログラム」(サーバコンピュータ用ソフトウェア)は、韓国法人株式会社「KDE」らが開発したクレジットカード決済認証用のアプリケーションソフトウェアである。
控訴人は、平成178月及び10月、被控訴人NTTコムのデータセンターに設置されたターミナルゲートウェイサーバ用コンピュータ2台(以下「本件サーバ」という。)に、本件プログラムをインストールした
被控訴人NTTコムは、被控訴人GPネットに対し、平成171130日付けの契約により本件サーバを譲渡し、平成1831日、これを引き渡し(以下「本件譲渡」という。)、以後、上記被控訴人両名は、本件プログラムを使用していた。

 以上の「前提事実」に基づき、控訴審の当審における請求は、次の通りです:

『ア 主位的請求
 
控訴人は,本件プログラムについて,著作権者であったKDEから著作権及び損害賠償請求権を譲り受けたところ,@被控訴人NTTコムが,被控訴人らの構築する前記クレジットカード決済システムの製品・機能評価のための試験運用という範囲を超えて,平成171130日,控訴人に無断で本件プログラムがインストールされた本件サーバを被控訴人GPネットに譲渡したことが,著作権者が他人に著作物の利用を許諾できるとする著作権法631項及び許諾に係る著作物を利用する権利が著作権者の承諾を得ない限り譲渡できないとする同条3項に違反する不法行為に該当すると主張して,同被控訴人に対し,同法1142項により算出される損害賠償として合計62288万円の支払を求め,A被控訴人GPネットが,本件プログラムを使用する以上,これに権利制限がかかっていないかどうかを著作権者(KDE)に問い合わせて確認すべき商取引上の義務を負っていたのにこれを怠ったため,許諾に係る利用方法及び条件の範囲内において著作物を利用することができるとする同法632項に違反する不法行為を行い,被控訴人INSソリューションが,当該譲渡に関して被控訴人GPネットに加担したことにより民法7192項所定の共同不法行為を行ったと主張して,被控訴人GPネット及び同INSソリューションに対し,著作権法1142項により算出される損害賠償として合計1681575万円ないし1712703万円の一部である87712万円の支払を請求するとともに,B被控訴人NTTコム及び同GPネットが本件プログラムの許諾を受けずに使用していると主張して,同被控訴人らに対し,本件プログラムに係る著作権に基づき,その使用の差止めを求める(著作権法1121項)。』 


2 争点1(許諾に付された条件の有無及び被控訴人NTTコムによる著作権法63条違反の有無)について
(1) 本件プログラムに関する利用許諾の有無について
ア 本件プログラムの本件サーバへの提供とその対価について
() 控訴人は,被控訴人NTTコムの依頼に基づいて本件プログラムを調達し,平成17822日,本件プログラムを本件サーバのうち1台にインストールして被控訴人NTTコムの大手町データセンターに納入し,同年1025日,本件プログラムを大手町データセンターにおいて本件サーバのうちもう1台にインストールしたものである。
() しかるところ,控訴人による本件プログラムの被控訴人が管理する本件サーバへの提供に関しては,その利用許諾及びこれに対する対価について,前記インストール以前には契約書等が何ら作成されておらず,被控訴人NTTコムから見積依頼を受けた岩通SSが,平成17725日,被控訴人INSソリューション及び控訴人代表者であるAらに対して「ソフト費用」などとして300万円の見積りを記載した電子メールを送信し,これが同日中に被控訴人NTTコムSE部のCに転送され,さらに,被控訴人INSソリューションが,同年88日,被控訴人NTTコムに対し,電子メールで「ソフト費用一式」として300万円の見積りを記載した電子メールを送付したほか,その間に本件サーバの導入等に参画することになったNTT−DCSが,同月9日,被控訴人NTTコムに対し,同内容の見積りを送付したにとどまる。
() また,本件プログラムの本件サーバへの提供及びインストールに関連する費用も,当該インストール前には決済されておらず,@被控訴人NTTコムは,上記インストール後の平成171021日,NTT−DCSから,本件プログラムがインストールされた本件サーバ(2台)を,見積金額と同じ代金合計63945000円で購入したものである。そして,上記見積りによれば,上記代金のうち「ソフト費用」は,300万円である。上記インストールに関与したNTT−DCS,被控訴人INSソリューション及び岩通SSは,その頃,サーバソフト設定費用一式(本件プログラムの内訳である「Webサーバ」,「メッセージ・コンバータ」及び「モニタリング・システム」の対価250万円及び本件プログラムのインストール費用等を含む。)として,ANTT−DCSと被控訴人INSソリューションとの間の代金を3675000円とする見積書及び仮注文書,B被控訴人INSソリューションと岩通SSとの間の代金を3465000円とする見積書及び仮注文書を取り交わし,平成181月から2月にかけて,これをいずれも決済している。以上に加えて,C岩通SSは,平成171031日,東京ソフトに対し,サーバソフト設定費用一式の代金を315万円とする仮注文書を発行し,D控訴人も,平成183月頃,東京ソフトから,「サーバ監視ソフト一式」の代金2625000円の支払を受けている。
 以上によれば,@被控訴人NTTコムは,本件プログラム及び本件サーバを調達したNTT−DCSに対して本件サーバの取得代金(199万円)及び本件プログラムの提供の対価(300万円)を含む代金6394500円を支払っており,ANTT−DCSは,自社を本件サーバの調達等に関与させた被控訴人INSソリューションに対して本件プログラムの提供の対価(250万円)を含む3675000円を支払っており,B被控訴人INSソリューションは,かねてKDE製の決済端末の調達に当たってKDEらとの間の窓口となっていた岩通SSに対して本件プログラムの提供の対価(250万円)を含む3465000円を支払っており,C岩通SSは,KDE製の決済端末の調達に当たって関与を求めた東京ソフトに対して本件プログラムの提供の対価を含む315万円を支払っているものと推認され,さらに,D東京ソフトは,KDE製の決済端末の購入相手である控訴人に対して本件プログラムの提供の対価を含む2625000円を支払っていることが認められる。
() そして,本件プログラムの提供の対価として実際に決済されたこれらの金額が本件プログラムの本件サーバへのインストール前に示されていた「ソフト費用」(300万円)との見積金額である300万円におおむね近似することに照らすと,これらの関係者の間では,控訴人による当該インストールの時点において,おおむね300万円が,本件プログラムの提供の対価として被控訴人NTTコム→NTT−DCS→被控訴人INSソリューション→岩通SS→東京ソフト→控訴人との順番で支払われることについて合意が成立していたことが推認される。
() また,本件プログラムの本件サーバへのインストールは,被控訴人NTTコムの依頼に基づき,本件プログラムを調達した控訴人によって,被控訴人NTTコムが大手町データセンター等において管理する本件サーバに対して行われたことに照らすと,上記のおおむね300万円は,本件プログラムの提供の対価として,被控訴人NTTコムから控訴人に対して給付されることが当初から予定されており,当該インストールに至る経緯から,上記のように順次の決済が行われることとされたものと認められる。
イ 本件プログラムの利用許諾料について
() 次に,本件プログラムの提供に関する前記対価(おおむね300万円)が,本件プログラムの利用許諾料を含むものであったか否かについて検討すると,本件プログラムの本件サーバへのインストール前に作成された電子メールや,当該インストール後に作成された決済関係の書類には,いずれも,本件プログラムの利用許諾料について明示的に触れたものは存在しない一方,被控訴人NTTコムBP部のBは,平成17629日の打合せの際,控訴人代表者であるAらに対し,本件プログラムの利用許諾とインストールに要する価格を提示するよう依頼したもので,上記300万円には利用許諾料が含まれている旨を供述する。
() そこで検討すると,…に照らすと,Bの上記供述は,自然であり,かつ,裏付けがあるものとしてこれを信用することができる。
() したがって,上記本件プログラムの提供の対価(おおむね300万円)には,本件プログラムの使用に係る利用許諾料が含まれているものと認められる。
 以上によれば,被控訴人NTTコム,NTT−DCS,被控訴人INSソリューション,岩通SS,東京ソフト及び控訴人は,控訴人の被控訴人NTTコムに対する本件プログラムの本件サーバへのインストールの段階で,控訴人による本件プログラムの提供の対価としておおむね300万円の対価を前記記載の順番で支払うこと及び当該対価には本件プログラムの利用許諾料が含まれていることについて合意していたものと認められる。すなわち,控訴人は,被控訴人NTTコムとの間で,上記インストールの時点において,被控訴人NTTコムに対して本件プログラムの利用を有償で許諾する一方,その利用許諾料を含む対価(おおむね300万円)を,上記の各関係者の順番で決済して受領することに合意していたものということができる
(2) 本件プログラムの利用許諾に係る条件の有無について
 (略)
(3) 小括
 
前記(1)及び(2)を総合すると,控訴人は,被控訴人NTTコムとの間で,本件プログラムの本件サーバへのインストールの時点において,被控訴人NTTコムに対して本件プログラムの利用を有償で許諾する一方,その利用許諾料を含む対価(おおむね300万円)を,被控訴人NTTコム,NTT−DCS,被控訴人INSソリューション,岩通SS,東京ソフト及び控訴人の順番で決済して受領することに合意しており(前記(1)),かつ,その段階で,被控訴人GPネットが本件プログラムを利用するものであって,本件プログラムが全ての決済端末に対応できる被控訴人GPネットの標準仕様となることを認識しており,したがって,被控訴人GPネットによる本件プログラムの利用を許諾していた一方,本件プログラムの使用について期限や条件等を観念してはいなかったものと認められる(前記(2))。
 したがって,本件プログラムについて著作物性が認められるか否かにかかわらず,また,著作権法63条の解釈について論じるまでもなく,被控訴人GPネットによる本件プログラムの使用は,控訴人の利用許諾に基づくものであって,控訴人が主張する条件が付されていたとはいえないから,被控訴人NTTコムによる被控訴人GPネットに対する本件プログラムがインストールされた本件サーバの譲渡(本件譲渡)も,何ら違法なものではないというべきである。
 よって,控訴人の被控訴人NTTコムに対する損害賠償請求は,理由がない。
 (略)
3 争点2(被控訴人GPネットによる確認義務違反の有無及び被控訴人INSソリューションによる加担行為の有無)について
 
前記2に説示のとおり,被控訴人GPネットによる本件プログラムの使用は,控訴人の利用許諾に基づくものであって,被控訴人NTTコムによる被控訴人GPネットに対する本件プログラムがインストールされた本件サーバの譲渡(本件譲渡)も,何ら違法なものではないというべきであるから,被控訴人GPネットは,控訴人に対して何ら損害賠償義務を負わないし,被控訴人INSソリューションも,本件プログラムに関して何らかの違法行為に及んだと認めるに足りる証拠はないから,控訴人に対して何ら損害賠償義務を負うものではない。
 よって,控訴人の被控訴人GPネット及び同INSソリューションに対する損害賠償請求は,理由がない。
4 争点3(控訴人に対する損害賠償請求権の帰属及び対抗要件の具備)について
 控訴人は,平成19108日,IKLが開発した本件プログラムに関する権利を,KDEを経て取得したものと認められる。
 しかしながら,被控訴人らは,前記2及び3に説示のとおり,いずれも本件プログラムに関して何らの違法行為も行っていないから,KDEは,控訴人による上記権利取得以前に,被控訴人らに対して損害賠償請求権を有していたものとは認められない。
 仮に,KDEが被控訴人らに対して,本件プログラムに関して何らかの債権を取得しており,控訴人がその譲渡を受けていたとしても,KDEが被控訴人らに対して当該債権譲渡に関する通知等をしたと認めるに足りる証拠はない。
 よって,控訴人の被控訴人らに対する損害賠償請求は,理由がない。
5 争点6(被控訴人NTTコム及び同GPネットによる現時点における本件プログラムの使用の有無)について
 
(略)
 以上のとおり,被控訴人NTTコム及び同GPネットは,現時点において本件プログラムを使用しておらず,これを使用するおそれも認め難い。
6 主位的請求についてのまとめ
(1) 以上のとおり,被控訴人GPネットによる本件プログラムの使用は,控訴人の利用許諾に基づくものであって,控訴人が主張する条件が付されていたとはいえないから,被控訴人NTTコムによる被控訴人GPネットに対する本件プログラムがインストールされた本件サーバの譲渡(本件譲渡)も,何ら違法なものではなく,被控訴人INSソリューションも,本件プログラムに関して何らかの違法行為に及んだと認めるに足りる証拠はない。したがって,被控訴人らは,控訴人に対して何ら損害賠償義務を負うものではない。
(2) また,被控訴人NTTコム及び同GPネットは,現在,本件プログラムを使用しているものとは認められず,これを使用するおそれも認め難いから,控訴人の被控訴人NTTコム及び同GPネットに対する差止請求は,理由がない。











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