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コンビニコミックの黙示の出版契約がその増刷にも及ぶとした事例
「コンビニコミック増刷事件」平成250627知的財産高等裁判所(平成25()10013 

【コメント】本件は、「本件漫画各話」の作画(以下、「本件各作画」と総称する。)を制作した控訴人が、本件漫画各話を掲載した各コミック(本件各コミック)の初版及び増刷を発行した被控訴人に対し、被控訴人が本件各コミックを増刷して発行した行為は本件各作画について控訴人が保有する著作権(複製権)の侵害に当たる旨主張して、被控訴人に対し、不法行為に基づく損害賠償金等の支払を求めた事案です。
 原判決は、被控訴人が本件各コミックを増刷して発行することについて、控訴人の利用許諾があったものと認められるから、被控訴人の行為が本件各作画について控訴人が保有する複製権の侵害に当たる旨の控訴人の主張は理由がないとして、控訴人の請求を棄却したため、控訴人が、これを不服として、前記金員の支払を求める限度で本件控訴に及んだものです。 


 当裁判所も,控訴人の本訴請求は,理由がなく,棄却すべきものであると判断する。その理由は,後記のとおり原判決を訂正し,後記のとおり付加するほかは,原判決…に記載のとおりであるから,これを引用する。
1 原判決の訂正
 (略)
2 当審における控訴人の主張について
(1) 控訴人は,コンビニコミックは基本的には初版から2週間程度の出版に限定されるものであり,増刷されることは例外であるから,本件各合意による利用許諾の効力は,初版から2週間程度の出版に限定され,増刷分には及ばない旨主張する。
 しかしながら,原判決が認定したとおり,被控訴人は,本件コミック1については作画原稿1枚当たり1万円の原稿料を,本件コミック2ないし6については作画原稿1枚当たり13000円の原稿料を支払うとの条件で,控訴人に対し,本件各作画の制作を順次依頼し,控訴人は,その都度これを了承して,控訴人と被控訴人との間で,本件各合意が成立したものである。本件各合意により,控訴人は本件各作画の制作を行うとともに,被控訴人が本件各コミックに本件各作画を掲載して出版及び販売することについての利用許諾を与えたものであるが,本件各合意で定められた控訴人の原稿料は,上記のとおり,作画原稿の1枚当たりの所定金額に枚数を乗じて算出されるものであって,本件各コミックの発行部数はその額を定めるための直接的な要素とされていない。実際,本件各合意に当たり,控訴人と被控訴人との間では,原稿料以外の条件や本件各コミックの発行予定部数,流通期間等について話題となることもなかったものである。以上のような原稿料の定め方は,書籍等の単価に印刷部数又は販売部数を乗じ,更に一定割合(印税)を乗じて著作権者に支払われるべき対価を算出する,いわゆる印税契約とは異なり,著作物が掲載された出版物の発行部数の多寡によってその金額が左右されるものではない。そして,本件各コミックの出版において,初版時の発行部数やその後に増刷を実行するか否かは,いずれも出版社である被控訴人において適宜決定すべき事項であるところ,被控訴人との間で,作画原稿の1枚当たりの所定金額に枚数を乗じて算出される金額をもって当該作画原稿の制作や出版及び販売についての利用許諾の対価とすることに合意した控訴人にとっては,増刷によって本件各コミックの発行部数が増加することは,初版における発行部数の多寡とその性質において異なる意味を有するものではない
 また,原判決が認定したとおり,被控訴人においては,本件各コミックと同種のコンビニコミックについては,雑誌扱いの不定期の刊行物として,主にコンビニエンスストアで発売後2週間程度販売された後,売れ残ったものは返品されるのが通常であり,初版の発売時にあらかじめ増刷することは予定されていないが,これは事実上の取扱いであり,初版が返品された後であっても,需要があれば,増刷して発行することもあり得るというのであるから,コンビニコミックの流通期間が性質上当然に初版から2週間程度に限定されているということもできない。
 さらに,前記のとおり,本件各合意に当たり,控訴人と被控訴人との間では,原稿料以外の条件や本件各コミックの発行予定部数,流通期間等について話題となることはなかったのであるから,控訴人の制作した作画原稿の出版及び販売に係る利用許諾を初版の発行から2週間程度に限定するとの明示的な合意があったとは認められないし,また,被控訴人においては,本件各コミックのように,需要によっては,コンビニコミックを増刷することも行われているものである以上,たとい控訴人において増刷を想定せず,また,被控訴人においても増刷は例外的なものであるとの認識を持っていたとしても,それによって直ちに控訴人と被控訴人との間で本件各合意による利用許諾の効果を本件各コミックの初版の発行から2週間程度に限定するとの黙示的な合意があったということもできない
 以上によれば,本件各合意により生じた控訴人の利用許諾の効力は,本件各コミックの初版の発行から約2週間程度に限定されるものではなく,その増刷分についても及ぶものと認めるのが相当である。
 なお,被控訴人は,本件作画310ないし13を掲載した都市伝説Gコミックについて再録掲載料を支払っているが,原判決が判示したとおり,都市伝説Gコミックは,本件各コミックに収録された漫画の中から全14話を選択して収録したものであり,本件各コミックにおける本件作画310ないし13の利用形態とは異なるものであるから,上記再録掲載料の支払の事実は,控訴人の上記主張を裏付けるものではない。
(2) 控訴人は,当初の想定期間を超えた出版は控訴人の手間暇という意味での負担はないが,だからといって控訴人に特段の不利益がないとした原判決の判断は,著作権法の趣旨に反するものである旨主張する。
 しかしながら,原判決は,本件各合意の効力が本件各コミックの増刷分にも及ぶか否かの判断において,本件各コミックの2刷及び3刷は,初版を増刷したものであって,本件各作画の利用形態は初版と何ら変わることはないから,本件各コミックの流通期間が控訴人が想定していた2週間程度を超えたからといって,控訴人において特段の不利益をもたらすものではないと判示したのであり,控訴人が主張するように,控訴人に手間暇の負担が掛からなければ,いかなる複製等の行為が行われても,その著作権者である控訴人に不利益が生じないなどと判断したものではない。
 
したがって,控訴人の主張は,採用することができない。











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