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プログラムの複製権侵害の成否
「不動産物件表示プログラム制作事件」平成241130東京地方裁判所(平成24()15034/平成250702日知的財産高等裁判所(平成24()10100 

【原審】

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別件乙3の印刷による複製権侵害による不法行為について
(1) 原告は,別件乙3の印刷物は,原告が著作権を有するプログラムの著作物である本件プログラムを紙に印刷して複製したものであり,複製権侵害であると主張するので,この点について検討する。
(2) 原告は,本件プログラムは原告が創作した「プログラムの著作物」(法1019号)であると主張する。
 
プログラムは,「電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したもの」(法2110号の2)であり,所定のプログラム言語,規約及び解法(法103項)に制約されつつ,コンピュータに対する指令をどのように表現するか,その指令の表現をどのように組み合わせ,どのような表現順序とするかなどについて,法により保護されるべき作成者の個性(創作性)が表れることになる。
 したがって,プログラムに著作物性(法211号)があるというためには,指令の表現自体,その指令の表現の組合せ,その表現順序からなるプログラムの全体に選択の幅があり,かつ,それがありふれた表現ではなく,プログラム制作者の個性,すなわち,表現上の創作性が表れていることを要する(知財高裁平成24125日判決)。
 原告は,本件プログラムのソースコード(A4用紙7枚(1枚当たり36行。全部で232行)のもの。)を提出するものの,本件プログラムのうちどの部分が既存のソースコードを利用したもので,どの部分が原告の制作したものか,原告制作部分につき他に選択可能な表現が存在したか等は明らかでなく,原告制作部分が,選択の幅がある中から原告が選択したものであり,かつ,それがありふれた表現ではなく,原告の個性,すなわち表現上の創作性が発揮されているものといえるかも明らかでない。
(3) 仮に本件プログラムに原告の創作性が認められるとしても,以下に述べるとおり,原告の主張には理由がない。
 原告は,被告がブラウザを用いて本件プログラムにアクセスし,その情報を被告のパソコンのモニタに表示させ,表示された情報のスクリーンショットを撮り,当該スクリーンショットの画像ファイルを紙である別件乙3に印刷したことが,プログラムの著作物である本件プログラムの複製に当たると主張する。
 法にいう「複製」とは,印刷,写真,複写,録音,録画その他の方法により有形的に再製することをいうが(法2115号),著作物を有形的に再製したというためには,既存の著作物の創作性のある部分が再製物に再現されていることが必要である。
 これを本件についてみると,紙である別件乙3に記載されているのは画像であって,その画像からは本件プログラムの創作性のある部分(指令の表現自体,その指令の表現の組合せ,その表現順序からなる部分)を読み取ることはできず,本件プログラムの創作性のある部分が画像に再現されているということはできないから,別件乙3の印刷が本件プログラムの複製に当たるということはできない
(4) したがって,別件乙3の印刷による複製権侵害は認められない。
3 本件各アクセスによる複製権侵害による不法行為について
(1) 原告は,被告が平成21611日,同年717日及び同月18日,原告の承諾なく,ブラウザを使って本件プログラムにアクセスし,本件プログラムの複製物を被告のコンピュータの①メモリ,②CPU,③I/O及び④ハードディスクに保存したことは複製権侵害であり,また,本件プログラムを使用(入力,演算,出力)したことはみなし侵害であるから,不法行為が成立すると主張する。
(2) そこで検討するに,被告のコンピュータのブラウザを使って本件サーバに記録された本件プログラムにアクセスした場合において,本件プログラムの複製物が被告のコンピュータの①メモリ,②CPU,③I/O及び④ハードディスクに保存される。
 ところで,上記のような複製は被告の電子計算機における情報処理過程で行われるものであるが,このような電子計算機における情報処理過程における記録については,平成21年法律第53号により追加された法47条の8では一定の要件のもとに複製権侵害とはならないものとされた。この改正の施行日は平成2211日であり,本件各アクセスは,いずれも上記改正前の行為であるから,同条の適用はないが,その趣旨に鑑みれば,上記改正前の複製行為であって電子計算機の情報処理過程で生じるものの違法性の有無については,複製された著作物の内容,複製の態様,複製に至る経緯等を総合的に考慮して判断すべきである。そこで,以下においては,このような見地から被告の行為の違法性について判断する。
(3) 複製された著作物の内容
 被告のコンピュータに複製された本件プログラムは,本件において書証として提出されているソースコードによる限り,A4用紙に7枚(全部で232行)からなるものであり,本件プログラムによって表示される画像としては,本件証拠上,「光商事物件の検索はこちら」と題する被告用のウェブサイト(以下「本件ウェブサイト」という。)のトップ画面(以下「トップ画面」という。)のみである。
(4) 複製の態様
 本件証拠上,本件各アクセスの際,被告が本件プログラムによって表示されるトップ画面を閲覧したほかに,顧客に対する営業活動等に本件プログラムを使用したり,本件ウェブサイトの閲覧のために一時的に行われる複製の範囲を超えて,長期的に使用するためにCD-ROM等の固定媒体にこれを固定し複製したような事実を認めるに足りる証拠はない。
 したがって,被告のコンピュータへの本件プログラムの複製物の記録は一時的なものにとどまったものと認められる。
(5) 複製に至る経緯
 被告が本件プログラムを複製するに至った経緯は次のとおりである。
 (略)
(6) 以上に認定した複製された本件プログラムの内容,複製の態様及び複製の経緯に照らすと,本件プログラムは被告がその事業の用に供するためのウェブサイト用として作成されたものと認められるが,そのソースコードは比較的短いものであって,本件証拠上認定できる機能としては,トップ画面の画像を表示するというものにとどまる
 また,被告によるその利用態様も,本件ウェブサイトを閲覧したという,コンピュータによる情報処理の過程において,当該情報処理を円滑かつ効率的に行うために必要と認められる限度で,当該コンピュータの記録媒体に,被告による意図的な複製を目的とする特別の操作を伴うことなく,一時的に記録したものにすぎない
 なお,本件プログラムにアクセスできる本件ウェブサイトは,IDやパスワードによるアクセス制御は行われておらず,本件ウェブサイトのURLを知っている者は,特段のアクセス制御回避措置を講ずることなく,本件ウェブサイトを閲覧して本件プログラムにアクセスすることが可能であった。
 さらに,被告が本件ウェブサイトに3回にわたってアクセスした時期は,原告から内容証明郵便が送付された後であって,別件訴訟の提起の前後の時期であり,別件訴訟において別件乙3が提出された前後の時期にアクセスしたものと認められ,別件訴訟における訴訟活動との関連がうかがわれるものである。
 
以上のとおりの,複製された本件プログラムの内容,複製の態様及び複製に至る経緯に照らせば,被告による本件各アクセスの際の複製行為をもって,違法な行為であると認めることはできない

【控訴審】

 当裁判所も,原判決の認定判断を支持するものであって,控訴人の請求は理由がないものと判断する。











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