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一般不法行為の成否-否認事例(30)-
「コンピュータ研究論文事件」平成241206日大阪地方裁判所(平成23()15588 

 一般不法行為の成否
1) 成果の盗用
 原告は,被告2名の行為が,原告や原告研究室の研究成果を剽窃するものであると主張する。
 しかし,原告は,前記のとおり,原告及び原告研究室における,それまでの研究成果を踏襲したものであると主張するだけで,それ以上に,具体的な説明をしない。
 そもそも,原告は,専ら,被告2名の行為について,被告P3が論文A〜論文Cの作成に関与していないにもかかわらず,共著者として記載されていることを問題にしているといえる。すなわち,本件訴訟において,原告は,被告P3の氏名の削除を求めているが,被告P2の氏名の削除を求めているわけではない(被告P2が研究成果を盗用したとまではいわず,被告P3の氏名を共著者として記載する以上,被告P3は,研究成果を盗用したのと同じであると主張する趣旨であると解することができる。)。また,上記各論文から原告自身の氏名の削除を求めているわけでもない。
 したがって,論文A〜論文Cの作成,公表自体が,原告や原告研究室の研究成果を盗用するという主張は,被告P3の氏名を論文A〜論文Cの共著者として表示したことが不法行為となるという主張であると考えて,さらに検討することとする。
2) 論文A〜論文Cに関する人格権侵害の成否
 原告は,被告2名の行為が,論文A〜論文Cのコレスポンディングオーサーとして,原告の有する名誉・信用等の一般的人格権を侵害すると主張する。
 前記(1)のとおり,原告は,論文A〜論文Cの作成に関与していない被告P3の氏名を,上記各論文の共著者として表示することが不法行為となると主張しているが,これは上記人格権侵害の根拠としての主張と解することができる。
 この点について,原告は,共著者の全員の同意がなければ,共著者として表示することは許されないにもかかわらず,被告P2が,原告の同意を得ることなく,被告P3の氏名を,論文A〜論文Cの共著者として表示したことが,原告の権利を侵害するものであると述べる。
 確かに,…によると,被告P2は,論文A〜論文Cを作成,発表するに当たり,原告の承諾を得ることなく,被告P3の氏名や原告の氏名を共著者として記載したことが認められる。
 このことは,文部科学省の科学技術・学術審議会の研究活動の不正行為に関する特別委員会作成の「研究活動の不正行為への対応のガイドラインについて−研究活動の不正に関する特別委員会報告書−」や,前記で述べた解説の記載に照らすと,不適切な行為であったといわざるを得ない。
 しかし,原告は,前記(1)のとおり,論文A〜論文Cの共著者として,自らの氏名が記載されたこと自体を問題にしているわけではなく(むしろ,原告は,自らを,論文A〜論文Cについてのコレスポンディングオーサーであると述べている。),もっぱら,被告P3の氏名が共著者として記載されていることを問題にしている。
 上記ガイドラインや解説によると,共著者として氏名が記載されている場合,論文の内容について責任を負うことになるため,共著者として自己の氏名が記載されるか否かの決定権は尊重されなければならないことは明らかであるが,他の共著者の氏名が記載されるか否かについては,必ずしも,同様に論じることはできない。
 すなわち,論文の第1著作者としては,共著者として予定される全員の承諾のもと,共著者として記載すべき氏名を確定することが望ましいといえるが,論文A〜論文Cの第1著作者である被告P2が,共著者として被告P3の氏名を記載することを,同じく共著者としてその氏名を記載する予定である原告の同意を得なかったからといって,原告に,金銭による慰謝料の支払をもって慰謝しなければならない程度の人格権の侵害があったということは困難である(仮に原告の主張を前提とすると,被告P3が,当該論文の作成に実質的な関与を一部しているような場合にまで,原告に対し,許諾を得る必要があり,その許諾を得られない以上,被告P3の氏名を共著者として記載できないということになりかねないが,そのような事態は不合理というべきである。)。











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