著作権重要判例要旨[トップに戻る]







プログラムの著作物の侵害性が問題となった事例(11)
「ディスクパブリッシャー制御ソフト販売事件」平成241218日東京地方裁判所(平成24()5771 

 本件ソフトウェアのプログラムの著作権侵害の成否について
(1) 著作権法が保護の対象とする「著作物」は,「思想又は感情を創作的に表現したもの」(同法211号)をいい,アイデアなど表現それ自体でないもの又はありふれた表現など表現上の創作性がないものは,著作権法による保護は及ばない。また,著作権法上,「プログラム」とは,「電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したもの」(同法2110号の2)をいい,「プログラムの著作物」(同法1019号)に対する著作権法による保護は,その著作物を作成するために用いる「プログラム言語」(プログラムを表現する手段としての文字その他の記号及びその体系),「規約」(特定のプログラムにおけるプログラム言語の用法についての特別の約束)及び「解法」(プログラムにおける電子計算機に対する指令の組合せの方法)には及ばない(同条3項)。
 そうすると,プログラムにおいて,コンピュータ(電子計算機)にどのような処理をさせ,どのような機能を持たせるかなどの工夫それ自体は,アイデアであって,著作権法による保護が及ぶことはなく,また,プログラムを著作権法上の著作物として保護するためには,プログラムの具体的記述に作成者の思想又は感情が創作的に表現され,その作成者の個性が表れていることが必要であるが,プログラムは,その性質上,プログラム言語,規約及び解法による表現の手段の制約を受け,かつ,コンピュータ(電子計算機)を効率的に機能させようとすると,指令の組合せの具体的記述における表現は事実上類似せざるを得ない面があることからすると,プログラムの作成者の個性を発揮し得る選択の幅には自ずと制約があるものといわざるを得ない
 一方,複製とは,印刷,写真,複写,録音,録画その他の方法により著作物を有形的に再製することをいい(著作権法2115号参照),著作物の再製は,当該著作物に依拠して,その表現上の本質的な特徴を直接感得することのできるものを作成することを意味するものと解され,また,著作物の翻案とは,既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいうものと解される(最高裁判所平成13628日第一小法廷判決参照)。
 以上の諸点に鑑みると,原告ソフトウェアのプログラムが本件ソフトウェアのプログラムの複製又は翻案に当たるかどうかを判断するに当たっては,まず,本件ソフトウェアのプログラムの具体的記述における表現上の創作性を有する部分と原告ソフトウェアのプログラムの具体的記述とを対比し,原告ソフトウェアのプログラムの具体的記述から本件ソフトウェアのプログラムの表現上の本質的な特徴を直接感得することができるかどうかを検討する必要があるというべきである。
(2) 被告は,本件ソフトウェアのプログラムのソースコードの記述における表現上の創作性を有する部分と原告ソフトウェアのプログラムのソースコードの記述とを,別紙のとおり対比すると,両者は,同一又は類似した表現となっており,相違が認められる部分は些細なものにすぎないから,表現上の本質的な特徴が同一である旨主張する。
 しかしながら,被告が主張する本件ソフトウェアのプログラムにおける表現上の工夫は,いずれも本件ソフトウェアの機能を述べるものにすぎず,それらは,プログラムの具体的記述における表現それ自体ではないアイデアであって,著作権法による保護が及ぶものではないから,その主張自体,本件ソフトウェアのプログラムの具体的記述における表現上の創作性を基礎付けるものではない。
 また,別紙から明らかなとおり,被告が主張する本件ソフトウェアのプログラムのソースコードの記述における表現上の創作性を有する部分と原告ソフトウェアのプログラムのソースコードの具体的記述とは,一部分において共通する箇所があるものの,一致しているとはいえない。
 さらに,上記共通する箇所は,原告が主張するように,第三者(Baidu社)が提供しているオープンソースソフトウェアを利用した記述や,マイクロソフト社の「Visual Studio」が自動生成するソースコードを利用した記述,マイクロソフト社が公開している関数の名称(「OnSize」,「AddString」,「LoadBitMap」,「SetTimer」,「AddPage」,「GetDlgItem」,「IMPLEMENT_DYNCREATE」,「AfxMessageBox」,「IMPLEMENT_DYNAMIC」等)の記述,コンピュータプログラムの文法上一般的に使用される表現を用いたもの(「While」文等)など,いずれもありふれた表現であって,作成者の個性が表れているものとはいえない。
 以上によれば,被告が本件ソフトウェアのプログラムのソースコードの記述における表現上の創作性を有すると主張する部分は,そもそも表現上創作性を認めることはできないし,また,被告が主張する原告ソフトウェアのプログラムの具体的記述から本件ソフトウェアのプログラムの表現上の本質的な特徴を直接感得することはできない。
 したがって,本件ソフトウェアのプログラムのソースコードの記述における表現上の創作性を有する部分と原告ソフトウェアのプログラムのソースコードの記述とが表現上の本質的な特徴が同一であるとの被告の主張は採用することはできない。
(3) 以上のとおり,原告ソフトウェアのプログラムの具体的記述から本件ソフトウェアのプログラムの表現上の本質的な特徴を直接感得することができないから,その余の点について判断するまでもなく,原告ソフトウェアのプログラムが本件ソフトウェアのプログラムを複製又は翻案したものと認めることはできない。
 
したがって,原告が原告ソフトウェアを製造,販売する行為が,被告が保有する本件ソフトウェアのプログラムの著作権(複製権又は翻案権及び譲渡権)の侵害行為に該当するとの被告の主張は理由がないから,被告が,原告に対し,著作権法1121項に基づいて,原告ソフトウェアの製造,販売の差止請求権を有するものとは認められない。











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