著作権重要判例要旨[トップに戻る]







管理楽曲に係る放送等使用料の包括徴収行為の独禁法上の問題点
「管理楽曲放送等使用料包括徴収事件(
審決取消等請求事件)」平成251101日東京高等裁判所(平成24(行ケ)8

2 事案の概要
1 手続の経過等
(1) 参加人は,音楽の著作物(以下「音楽著作物」という。)の著作権(以下「音楽著作権」という。)に係る著作権管理事業(以下「管理事業」という。)を営む者(以下「管理事業者」という。)であり,著作権者から音楽著作権の管理を受託し,放送事業者に音楽著作物の利用を許諾し,使用料を徴収して著作権者に分配している。
 参加人は,放送又は放送のための複製その他放送に伴う音楽著作物の利用(以下「放送等利用」という。)に係る音楽著作権の大部分の管理を受託しており,ほとんど全ての放送事業者との間で,放送等利用に係る音楽著作権を管理する音楽著作物(以下「管理楽曲」という。)の利用許諾に関する契約(以下「利用許諾契約」という。)を締結し,楽曲の利用の有無や回数に関係なくそれぞれの放送事業者の放送事業収入に一定率を乗ずる等の方法で音楽著作物の放送等利用に係る使用料(以下「放送等使用料」という。)を算定し,徴収している
(2) 被告は,参加人が,全ての放送事業者との間の利用許諾契約において,放送事業者が放送等利用した音楽著作物総数における参加人管理に係る音楽著作物の割合を反映させない方法で放送等使用料を算定することとしているため,放送事業者は,参加人以外の管理事業者の管理楽曲を利用した場合には,それだけ負担すべき放送等使用料が増額することから,他の管理事業者の管理楽曲はほとんど利用しなくなり,参加人以外の管理事業者は,放送等利用に係る管理事業を営むことが困難な状態になっているとして,上記の放送等使用料算定方法及びその徴収は,他の著作権管理事業者の事業活動を排除し,公共の利益に反して,我が国における放送事業者に対する放送等利用に係る管理楽曲の利用許諾分野における競争を実質的に制限しており,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)25項のいわゆる排除型私的独占(以下「排除型私的独占」という場合がある。)に該当し,同法3条に違反すると判断して,平成21227日,同法71項に基づき,参加人に対し,排除措置命令(以下「本件排除措置命令」という。)を行った(平成21年(措)第2号)。
 本件排除措置命令の第1項の内容は,おおむね以下のとおりである。
 「参加人は,管理事業者から音楽著作物の利用許諾を受けて放送等利用を行う放送事業者から徴収する放送等使用料の算定において,放送等利用割合(放送事業者が放送番組において利用した音楽著作物の総数に占める参加人の管理楽曲の割合をいう。)が当該放送等使用料に反映されないような方法を採用することにより,当該放送事業者が他の管理事業者にも放送等使用料を支払う場合には,当該放送事業者が負担する放送等使用料の総額がその分だけ増加することとなるようにしている行為を取りやめなければならない。」
(3) 本件排除措置命令に対し,参加人は,独占禁止法3条違反が成立することを争い,同命令の取消しを求めて審判を請求し(平成21年(判)第17号事件。以下「本件審判事件」という。),被告は,平成24612日,「参加人が,ほとんど全ての放送事業者との間で放送等使用料の徴収方法を包括徴収とする利用許諾契約を締結し,この契約に基づき,放送等使用料を徴収している行為(以下「本件行為」という場合がある。)」が放送等利用に係る管理楽曲の利用許諾分野における他の管理事業者の事業活動を排除する効果を有するとまで断ずることは困難であるとして,本件行為が,同法25項のいわゆる排除型私的独占に該当し,同法3条に違反するとはいえないと判断して,本件排除措置命令を取り消すとの審決(以下「本件審決」という。)をした。
(4) 原告は,放送等利用に係る管理事業を営む管理事業者であるが,本件審決の取消しを求めて本件訴訟を提起し,参加人は行政事件訴訟法221項に基づいて,本件訴訟に参加した。
 (略)
3 当裁判所の判断
 (略)
3 争点(3)(排除型私的独占該当性についての判断の誤り)についての判断
 参加人の本件行為が,放送等利用に係る管理楽曲の利用許諾分野において,競業者の参入を著しく困難にするなどの効果(排除効果)を有するか否かは,放送等利用に係る管理楽曲の利用許諾分野における市場の構造,同市場における参加人及び原告の地位,音楽著作物の特性,著作権者から音楽著作権の管理の委託を受けることを競う管理委託分野等との関連性等の諸事情を,総合的に考慮して判断すべきである。以下,これらの諸事情につき,検討する。
(1) 参加人は,ほとんど全ての放送事業者との間で,放送等使用料の徴収方法を包括徴収とする利用許諾契約を締結しており,これらの契約における包括徴収は,当該年度の前年度の放送事業収入に一定率を乗ずる等の方法で放送等使用料の額を算定するものであり,参加人の管理楽曲の利用割合によって変動することなく,一定額に定まっている。このような利用許諾契約を締結した結果,放送事業者は,参加人の管理楽曲を利用する場合には,その利用楽曲数がいかに増加しようとも,上記算定方法に基づく定額の放送等使用料に追加してこれを支払う必要はないのに対して,参加人以外の管理事業者の管理楽曲を利用する場合には,当該管理事業者との利用許諾契約に従って別途放送等使用料の支払を余儀なくされる。
 放送事業者としては,経費削減の観点から,参加人以外の管理事業者の管理楽曲を利用した場合に生じる放送等使用料の支払を控えようとすることは,ごく自然な経営行動であるということができる。特に,厳しい経営環境に置かれている中小規模の放送事業者にとっては,より経費削減の要請が強いといえる。また,平成1810月当時は,民放連と参加人との間において,民放連平成18年協定で合意されたとおり,放送等使用料額につき,従来適用されていた調整係数を撤廃し,参加人に支払う放送等使用料の額を増額することが協議されていたこと,このような状況においては,より一層,経費の追加負担を回避する要請が高まっていたことが伺える。
 参加人は,放送等利用に係る管理楽曲の利用許諾分野において,平成13101日の管理事業法施行の前後を通じて,ほぼ唯一の管理事業者であり,大部分の音楽著作権について放送等利用に係る管理を行っている。したがって,放送事業者としては,楽曲を放送等に利用するためには,参加人と利用許諾契約を締結しないという選択肢はあり得ない状況があった。参加人は,放送等使用料の徴収方法として個別徴収の方法も定めているが,個別徴収によると,11回の利用ごとに参加人から利用許諾を受けなければならないこと,包括徴収に比べ11回の利用に対する放送等使用料の額が高額となることから,個別徴収方式は,放送事業者にとって,現実的な選択肢と評価することはできない。
 これに対し,原告は,放送等利用に係る管理楽曲の利用許諾分野に新規に参入して放送等使用料を徴収している唯一の管理事業者であり,参加人と比べ,放送等利用に係る管理を委託された音楽著作権の数は極めて少ない。
 そうすると,「ほとんど全ての放送事業者との間で放送等使用料の徴収方法を包括徴収とする利用許諾契約を締結し,この契約に基づき,放送等使用料を徴収している参加人の行為」は,放送事業者をして,放送等使用料の追加負担を避けるために,他の管理事業者の管理楽曲の利用を回避する対応を採らせる蓋然性が高く,他の管理事業者の管理楽曲の利用を抑制する効果を有しているといえる
(2) 楽曲の選定については,さまざまな要因があり,例えば,歌手,演奏者の人気度,聴取者の嗜好等により影響を受けたり,カウントダウン番組,リクエスト番組,歌手がパーソナリティーやゲストとして出演する番組など番組の性格により影響を受けたりする面があることは否定できない。しかし,そのような特別な場合を除くならば,番組の目的,内容,視聴者の嗜好(聴取率)等を勘案するとしても,多くの場合は,選定の対象とされる楽曲は,一つではなく,複数となると考えられる。したがって,複数の選定対象楽曲の中に,放送等使用料の追加負担の不要な楽曲と必要な楽曲があれば,経費負担を考慮して追加負担の不要な楽曲が選択されることは,経済合理性に適った自然な行動といえる。
 以上のとおり,放送事業者は,特殊例外的な番組についてはさておき,通常の番組で放送される楽曲の選択においては,放送等使用料の追加負担を抑制するため,参加人以外の管理事業者の管理楽曲の利用を回避するといえる
(3) 前記のとおり,@首都圏のFMラジオ局を含む少なくない数の放送事業者は,原告管理楽曲の利用を回避した,又は回避しようとしたこと,A証拠上,原告管理楽曲の利用を回避し,又は回避しようとした放送事業者であると特定できるのは,テレビ朝日,TBSテレビ,J−WAVE,ベイエフエム,Kiss−FM,エフエム富士,エフエム岩手,エフエム山形,エフエム青森,エフエム佐賀,静岡朝日テレビ,茨城放送,及びNACK5であるが,その他の放送事業者の中にも,原告管理楽曲の利用を回避する働きかけ等がされていたところがあると認められること,B放送事業者は,経費の追加負担を極めて重大な事象と受けとめ,経費の追加負担を抑制しようとしていたこと,C放送事業者が上記のような対応を採ったのは,原告への放送等使用料の支払が追加負担となることが大きな要因であったこと,が認められる。
 また,エイベックス・グループは,原告との放送等利用に係る管理委託契約を解約したが,同社がそのような判断をしたのは,放送事業者にとって原告への放送等使用料の支払が追加負担となるため,少なくない数の放送事業者が,原告管理楽曲の利用を回避した,又は回避しようとしたことが大きな要因であったことが認められる。
 確かに,原告が管理する楽曲数は増加しているものの,原告が放送事業者から徴収した放送等使用料の額は極めて低額であり,この事態が容易に解消すると認めるに足りる証拠はない。
(4) 原告が管理していた「恋愛写真」については,無料化措置が放送事業者に伝達される前(無料化措置が放送事業者に伝達された日は,平成181016日頃から同月25日以降までの間であると認められるが,各放送事業者にいつ伝達されたかを特定することはできない。)にも放送事業者に利用されていた事実は認められる。しかし,同楽曲は,人気のある歌手の楽曲であること,原告が放送等利用に係る管理業務を開始して間もない同月25日にCDが発売されたこと等の特殊事情を考慮するならば,「恋愛写真」が無料化措置が放送事業者に伝達される前に放送事業者に利用されていたことから,原告の管理に係る他の楽曲についても,参加人の管理楽曲と同様の条件の下で利用される状況にあったと推認することは到底できない。
(5) 小括
 以上の事実を総合すれば,参加人の本件行為は,放送等利用に係る管理楽曲の利用許諾分野において,原告の事業活動の継続や新規参入を著しく困難にしたと認められ,本件行為は,放送等利用に係る管理楽曲の利用許諾分野における他の管理事業者の事業活動を排除する効果を有する行為であると認められる。したがって,「本件行為が放送等利用に係る管理楽曲の利用許諾分野における他の管理事業者の事業活動を排除する効果を有するとまで断ずることは,なお困難である」とした本件審決の認定は実質的証拠に基づかないものであり,その判断にも誤りがある。
4 結論
 以上のとおり,本件行為は,放送等利用に係る管理楽曲の利用許諾分野における他の管理事業者の事業活動を排除する効果を有するものと認められることから,この点が認められないことを理由として,本件行為が独占禁止法25項に定める排除型私的独占に該当しないとした本件審決の認定,判断には,誤りがある。被告は,「本件行為が,自らの市場支配力の形成,維持ないし強化という観点からみて正常な競争手段の範囲を逸脱するような人為性を有するものであるか否か」等,本件行為が独占禁止法25項所定の排除型私的独占行為に該当するための,その他の各要件を充足する否かについて,認定判断をすべきである。
 
したがって,原告主張の取消事由には理由があるから,その余の点について判断するまでもなく,本件審決を取り消すこととする。

最高裁判決(平成26(行ヒ)75参照











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