著作権重要判例要旨[トップに戻る]







図表の著作物性(5)
「自動車用プラスチック部品書籍表事件」平成250718日東京地方裁判所(平成24()25843/平成260219日知的財産高等裁判所(平成25()10070 

【原審】

(1) 著作権法の保護の対象となる著作物は,「思想又は感情を創作的に表現したもの」(著作権法211号)をいうのであって,表現の内容とされた思想,感情若しくはアイデアなどそれ自体又は表現ではあっても表現上の創作性がないものについては,著作権法による保護は及ばない。そして,表現上の創作性があるというためには,作成者の独創性が現れていることを要するものではないが,作成者の何らかの個性が表現として現れていることを要するものであって,表現が平凡かつありふれたものである場合は,これに当たらないというべきである。
(2) これを本件についてみると,原告は,本件書籍の著作物性は本件書籍の各表が創作性を有することに基礎付けられている旨主張し,その創作性の具体的な内容として,本件書籍の各表が,自動車に用いられるプラスチック部品につき最適の選択と配列を行い,その採用プラスチックについて原告の実務経験に基づく情報を掲載しているため,他の資料にはない正確かつ詳細な最新情報が記述され,読者に今後の技術開発・市場開発の将来展望を与えるものとして,原告の個性と独創性が発揮されていることを挙げている。
 しかしながら,原告の上記主張は,本件書籍の各表を作成するに当たってのアイデアの独創性や,本件各表に記載されている情報そのものの価値を主張するものにすぎず,これらは著作権法による保護の対象となるものではない。したがって,原告の上記主張はそれ自体失当というほかない。
 さらに,本件書籍の各表の記載内容は別紙対照表のとおりであって,例えば,その1番目に記載の表には,「表13 バンパーモジュールのプラスチック採用例」との表題の下,モジュールの分類として「バンパーモジュール」が記載され,その「構成部品」(バンパー,フェーシア等)ごとに,これに使用されている「プラスチック」の種類及びその成形法が列挙されている。そして,…によれば,同表は,本件書籍の執筆段階において自動車に用いられていたプラスチックの種類,採用部位,成形法等を当該分類項目に従って整理したものであること,このような事項を整理した表は本件書籍の発行以前にも多数みられたことが認められ,この点は本件書籍の各表のうち他のものについても同様ということができる。そうすると,本件書籍の各表は,自動車に採用されているプラスチックに関する事実をごく一般的な表の形式に整理したものにすぎないから,その表現自体は平凡かつありふれたものというべきであって,これに著作物性を認めることはできないと判断するのが相当である。

【控訴審】

1 当裁判所も,原判決の認定判断を支持するものであって,控訴人の請求は理由がないものと判断する。
 
(略)
2 控訴人は,本件書籍は全体として編集著作物としての構成を有すると主張するが,当該主張の具体的内容は,本件書籍の各表が編集著作物としての著作物性を有するというものである。そして,本件書籍の各表の編集著作物性について,その素材の選択と配列において,読者・ユーザーが明快かつ明確に理解して自らの研究開発・ビジネスを効果的・効率的に進めるためのヒントを受け止められるように,工夫されており,そこに控訴人の発想の独創性と個性が発揮されているなどと主張する。
 しかし,その主張の実質的内容は,原審において控訴人が本件書籍の各表が著作物性を有するとして主張した点と同一であって,アイデアの独創性や記載事項の情報としての価値を述べるものにすぎず,これらが著作権法上の保護の対象となるものでないことは,原判決説示のとおりである。
 
そして,本件書籍の各表は,本件書籍の執筆段階において自動車に用いられていたプラスチックの種類,採用部位,成形方法等を,当該分類項目に従って詳細かつ網羅的に整理したものにすぎず,個別の記載事項が情報として有用であるとしても,一般的な表形式で整理が行われており,その素材となる各事項の選択又は配列について,どのような工夫がなされているのかは明らかでなく,控訴人の個性が表れているとは認められない。したがって,素材の選択又は配列によって創作性を認めることはできず,本件書籍及び同書籍の各表は,いずれも編集著作物としての著作物性を有するということはできない。











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