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譲渡契約の解釈(16)
「『子連れ狼』実写映画化契約事件」平成251010日東京地方裁判所(平成24()16442/平成260327日知的財産高等裁判所(平成25()10094 

【コメント】本件は、原告が、被告に対し、(1)「本件原作」について、平成24116日から平成26419日までの間、その翻案権の一部である実写映画化権(「本件実写映画化権」)を取得したと主張して、原告が、当該期間、本件実写映画化権を有することの確認を求めるとともに、(2)被告が、本件原作の独占的利用権が被告に帰属する旨並びに本件原作を基に実写映画及びこれに派生した実写テレビドラマシリーズを製作する原告の行為が被告の独占的利用権を侵害する旨を告知したことが不正競争防止法2114号所定の不正競争行為に当たると主張して、同法31項に基づく告知、流布の差止めを求めた事案です。
 なお、「本件原作」は、昭和45年から昭和51年頃にかけて出版されて人気を博した漫画「子連れ狼」(以下「本件漫画」)の原作であり、Aが細かい描写や登場人物の台詞を含めて書き下ろした言語の著作物です(Bが本件原作に基づいて忠実に作画を行い、これにより本件漫画が作成されました)。
 以下参照:
       Aと米国法人である1212エンターテイメントは、平成23420日付けで、1212エンターテイメントがAから著作権の一部である実写映画化権等(実写版の映画及びこれに関する一切のリメイク版、続編等を製作するために必要な権利)を購入することができるオプション権を取得する旨のオプション契約(「本件オプション契約」)を締結した。
       原告は、同月23日、1212エンターテイメントから本件オプション契約上の地位の移転を受けた。
       原告、株式会社A作品普及会(以下「普及会」)及びAは、平成24116日、本件オプション契約に定められたAの義務及び責任を担保するため、原告がオプション権を行使した場合に購入することができる権利を、Aから著作権の譲渡を受けた普及会が原告に譲渡する旨の譲渡担保契約(「本件譲渡担保契約」)を締結した。
       本件原作については、Aを著作者とする著作権の登録がされており、その譲渡に関して以下の登録がされた。
 (普及会を権利者とする譲渡の登録)
 登録年月日:平成23114日(同年1017日受付)
 登録の目的:著作権譲渡の登録
 登録の原因等:平成23510日に譲渡人・Aと譲受人・普及会との間に著作権(著作権法27条及び28条の規定する権利を含む。)の譲渡があった。
 (原告を権利者とする譲渡の登録)
 登録年月日:平成2423日(同年124日受付)
 登録の目的:著作権譲渡の登録
 登録の原因等:平成24116日に譲渡人・普及会と譲受人・原告との間に平成24116日から平成26419日までの間に譲渡担保契約による著作権(翻案権)のうち実写映画化権及びこれに派生した実写テレビドラマシリーズ化権の譲渡があった。
 ・ 被告とAの間において、Aが被告に対し、被告が「子連れ狼」を含む著作物の原作等を利用するなどの事業を独占的に実施することを許諾する合意が成立した旨の記載がある平成20218日付け「著作物利用に関する契約公正証書」(「本件公正証書」)が存在する。 


※【 】内は、控訴審で追加又は変更された箇所。

2 本件譲渡担保契約の対象となる著作物について
(1) カリフォルニア州民法1636条は,「契約は,契約時に存在していた当事者の相互の意思が確認可能かつ合法的である限りにおいて,かかる意思を実現するものとして解釈されるものとする。」と規定している。そして,契約書の文言の解釈に争いがあり,当該文言が明瞭かつ明白でない(すなわち,契約書の文言が一義的に明確ではなく,他に合理的に解釈可能な意義を有する)場合,裁判所は,外部証拠を利用して契約時における当事者の相互の意図を解釈することができる。また,同法1640条は,「不正行為,錯誤または事故により,書面による契約が当事者の真の意思を表していない場合は,かかる意思が存在するものとみなされ,書面上において誤っている箇所は無視されるものとする。」と規定している。そして,誤りが存在する場合,契約当事者の意図に合致するように契約が修正される。したがって,契約書の文言が明瞭かつ明白であったとしても,その記載が当事者の真の意思と異なる場合には,その真の意思に沿って契約書の文言が解釈されることとなる。】
(2)】 原告は,本件譲渡担保契約による移転の対象となる著作物は,本件漫画ではなく,本件原作であると主張する。
 そこで検討すると,本件譲渡担保契約により原告が取得するとされたのは本件オプション契約に定められたオプション権を行使した場合に購入することのできる権利であるところ,本件オプション契約の契約書に契約の対象となるのが「Aが日本で発表した劇画作品」であると記載されていること,本件原作が同契約の締結までに発表されたことはうかがわれないこと,「劇画」とは言語と絵画が結合されて成るものであることからすると,契約書の文言上は,本件譲渡担保契約の対象は本件漫画であると解する余地がある。
 しかし,前記事実関係によれば,@本件オプション契約は,原告が,「子連れ狼」の物語に基づく実写映画を製作するために締結されたものであり,実写映画化するに当たっては時代(現代版とすることもあり得る。)や場所(原告は米国法人であり,日本以外を舞台とすることも考えられる。)の設定を異にし得るので,Bによる作画を利用する必要はないこと,A原告は本件漫画の作画部分を利用する意図は有しておらず,1212エンターテイメント及びAもこれを認識していたこと,B作画部分をも利用して本件漫画の実写映画を製作するとすれば,Bないしその権利承継人から許諾を得る必要があるが,A及び普及会がBの作画を含む本件漫画の著作権を管理し,処分する権限を有していたとはうかがわれないにもかかわらず,原告及び1212エンターテイメントがBないしその権利承継人とは交渉を行おうとせず,本件原作の著作権者であったA(本件オプション契約当時)及び普及会(本件譲渡担保契約当時)との間でのみ交渉を行ったこと,【C本件オプション契約締結以前に,本件原作の著作権のみがAを著作者として登録され,かつ,これがAから株式会社KK TRIBEに譲渡され,その旨の登録もなされているなど,本件原作は本件漫画とは異なる著作物として取り扱われていたほか,Aは,本件オプション契約においても,対象となる著作物の実写版の映画の著作に関する権利等が自らに独占的に管理されていることを表明し,保証していること,】【D】本件譲渡担保契約に基づいて本件原作につき著作権の譲渡の登録がされたことが明らかであり,これらの事情を総合すると,原告,A,普及会及び1212エンターテイメントは,本件漫画の原作,すなわち,本件原作についての実写映画化権等を設定するために本件オプション契約及び本件譲渡担保契約を締結したものと認めるのが相当である。
 なお,これらの契約書の文言上は,上記のとおり,本件漫画が契約の対象であるとされている。しかし,この点は,本件原作が公表されておらず,他の著作物と区別して契約書に記載し,対象物を特定することが困難であったことから,公表された本件漫画をもって契約の対象物の記載に代えたものと解することが可能である。そうすると,契約書の記載は上記のとおり解することの妨げにならないと考えられる。
 以上によれば,本件オプション契約の対象となる「Aが日本で発表した劇画作品」は,本件原作を指すものと解釈するのが相当である。仮に「Aが日本で発表した劇画作品」が本件漫画を指すことが本件オプション契約書の文言上明確であるとしても,これは当事者の真の意思を表したものとは認められず,カリフォルニア州法に従い,前記(1)記載のとおり当事者の意思に合致するように本件オプション契約が修正され,本件オプション契約の対象は本件原作となるというべきである。そうすると,同様に,本件譲渡担保契約の対象は本件原作となる。】
(3) これに対し,控訴人は,本件譲渡担保契約の対象は本件漫画である,本件譲渡担保契約の対象を本件原作であるとすると,本件オプション契約に基づく対価の支払をすることなく被控訴人が本件実写映画化権を確定的に取得することとなり不合理であるし,本件譲渡担保契約6条に基づく担保の実行をした効果について説明ができないなどと主張する。
 しかし,上記(2)において認定したところに加え,後記3(2)認定の点に照らすと,控訴人の上記主張を採用することはできない。】
3 本件譲渡担保契約による本件実写映画化権の取得について
(1) 原告は,本件譲渡担保契約により本件実写映画化権を取得し,これにつき著作権譲渡の登録を経たことから,被告に対し,原告が本件実写映画化権を有することの確認を求めることができると主張する。
 そこで検討すると,前記認定事実及び前記2によれば,@原告は,平成26419日までの間,本件実写映画化権を購入するオプション権を取得していたこと,Aところが,被告から本件漫画の実写映画化の独占的権利を有している旨の主張を受けたことから,A及び普及会と協議の上で,オプション権を行使した時に確実に原告に権利移転ができるようにする目的で,本件譲渡担保契約を締結したこと,B本件譲渡担保契約上,上記期間が満了するまで本件実写映画化権を原告に移転してその旨の譲渡登録をする一方,A及び普及会は上記期間中本件原作を利用した作品の開発又は制作をすることができないとされていることが明らかである。【以上の各事情に加え,A及び被控訴人代表者の各陳述内容を併せ考えると,】本件譲渡担保契約は,原告が将来本件実写映画化権の移転を受けられるという権利を保全するために,換言すると,原告が本件原作の実写映画を製作することに対してA及び普及会はもとより第三者から一切の権利行使又は妨害行為をされないように,上記の期間中,当該権利を原告に確定的に移転するというものであると解することが相当である。
 そして,原告はこの譲渡について登録を経たことによりその権利を被告に主張することができるものであり,さらに,原告が本件実写映画化権を有することを被告が争っていることから,確認の利益も認められる。
 したがって,原告は被告に対し原告が本件実写映画化権を有することの確認を求めることができる。
(2) これに対し,被告は,譲渡担保契約は権利を確定的に移転するものではなく,その効力は債権担保の目的を達するのに必要な範囲にとどまるから,原告は,本件実写映画化権を確定的な権利として取得しておらず,確認の利益がないなどと主張する。
 しかし,本件譲渡担保契約は,「譲渡担保」という語を用いているものの,金銭債権を被担保債権として物件の所有権を移転するという一般的な譲渡担保契約【とその性質を異にすることが明らかであり,本件譲渡担保契約により,前記期間中において,本件実写映画化権が被控訴人に確定的に移転したかどうかを判断するに当たっては,本件譲渡担保契約の具体的な内容に基づいてその効力を判断する必要がある。】そして,前記説示に照らせば,被告を含む第三者に権利主張ができなければ本件譲渡担保契約の目的を達することができないし,本件譲渡担保契約の内容もその目的に沿うものといえるから,【本件実写映画化権は,前記期間中,本件譲渡担保契約に基づき被控訴人に確定的に移転したものというべきであり,】原告は被告に対し本件実写映画化権の取得を主張し,その確認を求め得るものと解すべきである。
 したがって,被告の上記主張を採用することはできない。
4 権利の濫用について
(1) 被告は,本件の事情の下で原告が被告に対し本件実写映画化権の取得を主張することは権利の濫用に当たると主張する。
(2)ア …によれば,控訴人は,本件公正証書に係る契約に基づき,Aから本件原作について独占的利用権の許諾を受けたものと認められる。
() この点,被控訴人は,Aと控訴人の間で本件公正証書に係る契約が成立したかどうかについては疑問がある上,上記契約は,Aが将来作成する著作物を含む多数の著作物の独占的利用を許諾する内容であり,Aに過大な負担を課すものであって,公序良俗に違反し無効であるし,Aは,上記契約を解除しているので,被告が本件原作につき独占的利用権を有しているとはいえない旨主張する。
 確かに,@上記契約はAの現在及び将来の全ての著作物に関して独占的利用権を付与するものでありながら,本件公正証書に対価に関する定めがないこと,A控訴人が独占的利用権取得のための対価として支払ったと主張する合計2億円は,控訴人以外の者による支払があるほか,本件公正証書作成の約6か月ないし8か月前になされていることなどといった不自然な点も存在する。
 また,Aは,控訴人に対し,平成23915日付け契約解除等通知書により,本件公正証書に係る契約の解除ないしは無効を主張していることが認められる。
() しかし,Aは,前記通知書において,控訴人がAに対し本件原作の出版物の出版中止を再三にわたり要求したこと等が本件公正証書71(1)に該当することや,控訴人が本件公正証書3条の報告義務に違反していること,本件公正証書に係る契約が「人身拘束」,「奴隷契約」的要素が著しく強く公序良俗に違反し無効であることなどは記載しているものの,解除事由や公序良俗に違反する理由として上記契約につき対価の支払がないことは挙げていない。また,Aはその陳述書においても,上記2億円の性質について何の記載もしておらず,上記2億円の支払を受けたことやその性質が本件公正証書に係る契約の対価であることを否定する記載をしていない。さらに,本件証拠上,上記契約の対価以外の目的で控訴人がAに対し上記2億円を支払う必要があったことをうかがわせるような事情も認められない。上記2億円のうちの一部を控訴人以外の者が支払っている点も,上記各事情に照らすと,そのことのみで直ちに上記2億円の支払が本件公正証書に係る契約によるAの著作物の独占的利用権許諾の対価であるとの認定を覆すようなものとはいえない。
 以上の各事情に加え,控訴人代表者の陳述内容も併せ考えると,上記2億円は,控訴人が,Aに対し,本件公正証書に係る契約によるAの著作物の独占的利用許諾の対価として支払ったものであると認められる。そして,上記2億円の支払が既になされていることを前提に本件公正証書が作成されたものと解される上に,控訴人代表者の陳述内容も併せ考えると,上記@の点が上記アの認定を左右するものとはいえない。
 なお,Aは,本件公正証書は知らないところで作成されたなどと被控訴人に説明した旨,本件公正証書が偽造されたものであるかのような陳述をする。
 しかし,Aは,控訴人との間で,2010年(平成22年)126日付けで,本件公正証書が有効に存続していること等を確認すること等を内容とする確認書を作成している。また,上記通知書には,Aが本件公正証書の存在を知らなかったなどという記載はなく,上記認定のとおり,上記契約が公序良俗違反で無効であるとか,控訴人に債務不履行があるので上記契約を解除するという主張が主たるものであった。さらに,上記通知書には,本件公正証書作成に当たり,委任状が不正な方法により作出された旨の記載はあるものの,それを裏付ける的確な客観的証拠はなく,かえって,Aが本件公正証書の作成をCに対して委任した委任状(本件公正証書記載の契約と同内容の契約書が添付されている。)には,Aの実印が押印されている。
 以上の各事情に照らすと,Aの上記陳述を採用することはできない。
() また,Aは,控訴人に対し,前記通知書において,本件公正証書に係る契約の解除ないしは公序良俗違反による無効を主張していることが認められる。
 しかし,上記()認定のとおり,本件公正証書に係る契約の内容や独占的利用許諾の対価として2億円が支払われていることや,実際にAの著作物を出版する際にはAに対して印税が支払われることなどに照らすと,上記契約が直ちに公序良俗に違反するものとは認め難い(本件公正証書に係る契約において,Aが将来作成する著作物も含めて利用許諾の対象とする旨の記載がある点については,将来において同契約締結時において予想される範囲を超えた状況が生じたときに,同契約の合理的な解釈により,その許諾対象となる将来の著作物の範囲が制限的に解釈される余地があるとは解されるけれども,同契約が公序良俗に違反し,無効であるとは認め難い。)。また,本件公正証書7条記載の解除事由や同条以外の控訴人の債務不履行等,Aにおいて本件公正証書に係る契約を解除し得る事実が存在していたことを認めるに足りる的確な客観的証拠はない。
 よって,本件公正証書に係る契約が無効であるとか,Aにより解除されたと認めることはできない。
() 以上によれば,被控訴人の前記()記載の主張を採用することはできない。】
 【もっとも,控訴人の有する独占的利用権は】著作権者の利用許諾に基づく債権的権利であるから,その後に著作権の全部又は一部の譲渡がされた場合には,我が国の著作権法上,譲受人に対抗することができないものである。そうすると,著作権の譲受人がその取得に先行する独占的利用権の存在を知っていたことのみから,譲受人の被許諾者に対する著作権の主張が権利の濫用になると解するのは相当でなく,その権利主張が権利の濫用に当たるか否かは,著作権の取得経過等に関する事情を総合的に考慮して決すべきものである。
 本件についてこれをみると,前記認定事実によれば,@本件オプション契約締結前に我が国及び米国において本件漫画の権利関係についてトラブルがあると報じられたことがあるものの,原告がこのような報道に接していたと認めるに足りる証拠はなく,原告が被告の独占的利用権について知っていたとは認められないこと,A被告又は被告から許諾を受けた者が現に実写映画化に着手したり,その企画がある旨報道されたりした事実があるとはうかがわれず,原告が被告の存在を知らなかったことにつき過失があるともいえないこと,B原告は,被告からの権利主張に接するより前に,Aが著作権者であるとの表明及び保証を信じて35万ドルもの代金を支払ってオプション権を取得したこと,Cその後,被告から権利主張を受けたため,Aに権利関係を確認したところ,被告に独占的利用権はないとの説明を受けたので,本件オプション契約上の自らの権利を保全するための手段を講じることにしたこと,D本件譲渡担保契約はこのような経緯で締結されたものであり,これにより原告が,本件実写映画化権の移転を受けてその旨の登録を経たものであることが明らかである。このような事情に照らせば,本件公正証書に係る契約の効力にかかわらず,原告の被告に対する本件実写映画化権の主張は正当な権利行使に当たるというべきであって,被告の主張する諸事情を考慮しても,原告の権利主張が権利の濫用に当たるということはできないと判断するのが相当である。
(3) 以上によれば,原告の被告に対する本件実写映画化権の確認請求は理由がある。
5 不正競争行為の有無について
(1) 原告は,本件各通知書の送付が不正競争行為に当たる旨主張するものである。
(2) そこで,まず,本件各記載が「虚偽の事実」であるといえるかについてみると,本件各通知書にいう「本件財産」は本件漫画を指すものと解されるが,本件漫画は本件原作に基づいて作成されたものであり,本件漫画を利用して実写映画を製作する際には,当然に本件原作の創作性のある部分を利用することになる。そうすると,本件各記載に接した者は,本件各記載をもって,控訴人が本件漫画のみならずその原作である本件原作についても独占的に利用する権利を有し,控訴人以外の他の者は本件原作を利用することはできず,したがって,本件原作を基に実写映画やこれに類する作品を製作する被控訴人の行為が控訴人の権利を侵害するという事実を述べるものと理解すると解することができる。そして,前記説示のとおり,被控訴人は,本件原作の実写映画及びこれに派生した実写テレビドラマシリーズを製作する権利を有する一方,控訴人は,本件原作の独占的利用権を被控訴人に対抗できず,したがって,被控訴人に対して上記権利を主張できないのであるから,本件原作の独占的利用権が控訴人に帰属する,すなわち控訴人以外の他の者が本件原作を利用することはできないとか,被控訴人が本件原作を基に実写映画等を製作する行為が控訴人の権利を侵害するということはできない。したがって,本件各記載は,虚偽の事実に当たるものと認められる。】
(3) 次に,本件各通知書の送付が原告の営業上の信用を害するかどうかについて検討する。
 この点につき,被告は,本件各通知書の送付先であるCは,本件漫画の映画化についての被告の取引先であるシーエスデヴコの代理人であるから,Cに対して本件漫画の権利関係に関する通知をしても原告の営業上の信用を害することはないと主張する。しかし,同社と原告は共に映画の製作等に携わる会社であって,他人の権利を侵害するような映画の製作を試みている旨の事実が告知された場合には,事柄の性質上,映画製作会社としての原告の評価を低下させることになると認められる。そうすると,被告の主張する事実を前提としても,本件各記載が原告の営業上の信用を害することは明らかである。
(4) そして,原告と被告は,いずれも,著作物を利用した映画の製作に関する事業を行っており,原告は被告と競争関係にあるから,被告のCに対する本件各通知書の送付は,競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実の告知(不正競争防止法2114号)に当たると認められる。
(5) 本件各通知書の記載内容,控訴人は,被控訴人に対し,被控訴人が本件実写映画化権の譲渡の登録を受けたことを知った後も,平成24330日付けの通知書において,被控訴人の本件実写映画化権に基づく映画の製作行為が,A作品の「子連れ狼」に関する控訴人の権利を否定するものであり,被控訴人の上記の著作物の行為について法的措置及び大手メジャー映画会社,配給会社を含むマスコミに対する権利表明等あらゆる手段をもって阻止する旨を通知していること,控訴人が本件訴訟においても被控訴人の主張を争っていることに照らすと,控訴人による本件各記載と同旨の事実の告知及び流布による不正競争行為により被控訴人の営業上の利益が侵害されるおそれがあると認められる。
 この点,控訴人は,上記通知書は,被控訴人が作画家の許諾を得ずに映画化をすることができるかのような主張を繰り返していたために,その点に異議を述べたもので,本件原作について被控訴人が権利を有するか否かについて記載したものではない旨主張する。しかし,上記認定のとおり,上記通知書においても,A作品の「子連れ狼」に関する控訴人の権利を否定するなどといった記載もあることに照らすと,控訴人の上記主張を採用することはできない。
 また,控訴人は,本件各通知書の送付は社会通念上やむを得ないものであったとか,控訴人代表者の陳述を根拠として,被控訴人の営業上の利益が侵害されるおそれはない旨主張するが,上記認定した各事情に照らすと,控訴人の主張する事情が,被控訴人の営業上の利益が侵害されるおそれがあるとの上記認定を左右するものとはいえない。よって,控訴人の上記主張を採用することはできない。
(6) 控訴人は,平成26420日以降については,差止めの対象たり得ない旨主張する。
 しかし,本件譲渡担保契約書11項なお書には,「オプション契約第4条又は同契約「Standard Terms and Conditions」(判決注・本件オプション契約書別紙A)第3条に従って当初権利行使期間が延長された場合,譲渡担保の期間も自動的に延長されるものとする。」との定めがある。
 そして,本件オプション契約別紙A3条には,当初権利行使期間が本件原作に関し何らかの請求が行われ,又は申し立てられた場合にはこれを延長することができる旨の定めがあることが認められ,かつ,延長される期間に限定も付されていない。
 以上によれば,本件訴訟におけるような控訴人による本件原作に関する請求又は申立てが存在する限り,本件オプション契約における当初権利行使期間が延長され,それに従い譲渡担保の期間も延長される。そして,上記請求等がなされるのが平成26419日までの期間に限られるとも認められない。したがって,不正競争防止法に基づく差止めの期間が同日までに限られるものとはいえない。さらに,前記(5)において認定した点に照らすと,差止めの期間を限定するのは相当でない。
 なお,前記(2)認定のとおり,控訴人が被控訴人に対し本件原作の独占的利用権を対抗できない以上,平成26420日以降につき本件実写映画化権の登録がなされていないとしても,上記認定が左右されるものではない。
 よって,控訴人の上記主張を採用することはできない。
(7) 以上によれば,被控訴人は,同法31項に基づき,控訴人に対し,本件各記載と同旨の事実の告知及び流布の差止めを求めることができると判断するのが相当である。】











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