著作権重要判例要旨[トップに戻る]







公衆送信権侵害を肯定した事例(2)
総合格闘技‘UFC’無断アップロード事件」平成250517日東京地方裁判所(平成25()1918 

【コメント】本件は、総合格闘技である「Ultimate Fighting Championship」(「UFC」)の大会及び試合を撮影・編集した映像作品である本件各作品の著作権を有する原告が、被告は、本件各作品をウェブサイト「ニコニコ動画」にアップロードし、原告の公衆送信権を侵害したと主張し、上記著作権侵害の不法行為により原告が被った損害(ライセンス料相当額の逸失利益)等の支払を求めた事案です。 

1 準拠法
 文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約(以下「ベルヌ条約」という。)5(2)によれば,著作物の保護の範囲は,専ら,保護が要求される同盟国の法令の定めるところによるとされるから,我が国における著作権の有無等については,我が国の著作権法を準拠法として判断すべきである。我が国とアメリカ合衆国(以下「米国」という。)は,ベルヌ条約の同盟国であるところ,本件各作品の著作者は,米国法人である原告であると認められるから,我が国において著作権法による保護を受ける(著作権法63号,ベルヌ条約5(1)2(1))。なお,著作権侵害を理由とする損害賠償請求の法的性質は不法行為であり,法の適用に関する通則法17条により準拠法を決定するべきであるところ,本件において,同条にいう「加害行為の結果が発生した地」は日本国内であると認められるから,我が国の法律がその準拠法となる。
2(1) 以上を前提に,まず,本件各作品のうち,原告が請求の根拠とする作品11番,26番及び68番の著作物性について検討する。
 作品11番,26番及び68番は,いずれも,総合格闘技であるUFCの大会における試合を撮影した動画映像であり,各場面に応じて被写体(選手,観客,審判等)を選び,被写体を撮影する角度や被写体の大きさ等の構図を選択して撮影・編集され,映像に,選手等に関する情報等を文字や写真により付加する等の加工を加えたものである。このように,作品11番,26番及び68番は,試合の臨場感等を伝えるものとするべく,被写体の選択,被写体の撮影方法に工夫がこらされ,また,その編集や加工により,試合を見る者にとって分かりやすい構成が工夫されているものということができるのであって,思想又は感情を創作的に表現したものであると認められるから,映画の著作物に該当する。
(2) 原告は,作品11番,26番及び68番の企画・製作を行った者であり,映画製作者としてそれらの著作権を有するものと認められる。また,被告が上記各作品について別紙一覧表の番号1126及び68に記載の日時,場所において,パーソナルコンピュータを使用して,株式会社ニワンゴがウェブサイト「ニコニコ動画」を運営するために設置して管理するサーバコンピュータ内の記録媒体に,作品11番,26番及び68番の情報を記録・保存し,インターネットを利用する不特定多数の者に対し自動公衆送信し得るようにしたこと,被告が故意により上記行為に及んだことについては,当事者間に争いがない。
(3) 株式会社ニワンゴが設置・管理する上記サーバコンピュータは,公衆からの求めに応じ自動的に公衆送信を行うものであり,上記サーバコンピュータ内の上記記録媒体は,上記サーバコンピュータの記録媒体のうち自動公衆送信の用に供する部分であると認められるから,上記サーバコンピュータは自動公衆送信装置であり,上記記録媒体は公衆送信用記録媒体に当たるものと認められる。
 したがって,被告の上記(2)の行為は,作品11番,26番及び68番を送信可能化するものであり(著作権法219号の5イ),原告の公衆送信権(同法23条)を侵害するものに当たる。
(4) よって,被告は,原告に対し,著作権(公衆送信権)侵害の不法行為責任に基づく損害賠償義務を負う。
3 損害額
(1) によれば,次の事実が認められる。
ア 原告は,UFCの試合を撮影した映像作品(本件各作品を含む。)のインターネット配信について,TVバンクとの間でライセンス契約を締結しており,上記契約において,原告は,上記配信によりTVバンクに生じた収入が歴月計算において1200万円を超えない限度において,その60%を取得するものとされていた。
イ TVバンクにおけるインターネット配信料は,その注目度に応じ,試合種別により異なるものとされており,具体的には次のとおりであった。
 () 「ナンバーシリーズ」の大会のメインカードの試合 500円
 () 「ナンバーシリーズ」以外の大会のメインカードの試合 350
 () メインカードの前座の試合 200
ウ 作品11番及び26番は各500円でインターネット配信されていたものである。また,上記イ()ないし()の区分に照らし,作品68番は,インターネット配信する場合,配信料を500円とすべきものであったと認められる。
エ 作品11番,26番及び68番は,下記()ないし()記載の期間において,次の回数にわたり再生された。
 () 作品11
 平成22927日から同年115日まで 13172
 () 作品26
 平成221024日から同年115日まで 13999
 () 作品68
 平成221122日から平成2315日まで 6837
(2) 以上の事実に照らすと,作品11番,26番及び68番に係る被告の侵害行為により,上記各作品が再生される毎に,原告に損害が生じたものと認められ,TVバンクにおける配信料相当額である500円に再生回数を乗じ,更に60%を乗じた金額に相当する額を上記損害額とみるのが相当である(著作権法1143項)。
 原告の損害額は,具体的には次のとおりである。
 ア 作品11
 500円×13172回×60%=3951600
 イ 作品26
 500円×13999回×60%=4199700
 ウ 作品68
 
500円×6837回×60%=2051100











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