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利用許諾契約の解釈(33)
「‘新おかやま国際化推進プラン’パンフレット事件」平成250716日大阪地方裁判所(平成24()10890 

【コメント】本件は、以下の「前提事実」の下で、原告らが以下のような「主位的請求」及び「予備的請求」をした事案です:
(3) 本件イラストを利用したパンフレットの制作
ア 「新おかやま国際化推進プラン」
 被告岡山県は,平成83月,「おかやま国際化推進プラン」を策定し,平成133月には,平成17年度までの5年間を計画期間とする「新おかやま国際化推進プラン」を策定した。
 同プランは,「国際化推進のための施策」の1つとして,「公設国際貢献大学校に対する連携・支援」を挙げていた。
イ 本件イラストの利用許諾とパンフレットの制作
 被告岡山県は,印刷会社との間で,平成1336日,「新おかやま国際化推進プラン」に関するパンフレットの構成・印刷を委託する契約をした。
 印刷会社は,原告リーブラの販売代理店を通じ,原告リーブラから,本件イラストをパンフレットの表紙に利用することについて許諾を受けた上で,パンフレット(以下「本件パンフレット」という,)を制作した。
ウ 本件パンフレットの表紙
 本件パンフレットの表紙は,別紙パンフレット表紙記載のとおり,本件イラストを改変して利用したものであり,本件イラスト上にハート形と「パートナーシップで築く世界にひらかれた岡山」という広告コピーが挿入されている(ハート形は日本の上で,岡山県の位置に記載されたものと思われる。広告コピーは,インド洋から太平洋南部にかけて)。著作者である原告P1の氏名は表示されていない。
(4) 本件大学校のウェブページにおける本件パンフレットの表紙の掲載
 本件大学校(設置者:哲多町)は,平成158月,被告岡山県から許諾を受けて,別紙ウェブページ記載の態様で,本件大学校のウェブページにおいて本件パンフレットの表紙の画像を掲載した(以下,この掲載行為を,単に「本件掲載行為」という。)。
 本件大学校(指定管理者:被告機構)は,平成24214日,上記ウェブページから上記表紙の画像を削除した。』
(原告らの請求)
(1) 主位的請求
ア 原告リーブラの著作権侵害に係る請求
 本件掲載行為が原告リーブラの有する本件イラストの著作権(複製権,公衆送信権)を侵害するものであるとして,共同不法行為に基づき,…の連帯支払の請求
イ 原告P1の著作者人格権侵害に係る請求
 本件掲載行為が原告P1の有する本件イラストの著作者人格権(同一性保持権,氏名表示権)を侵害するものであるとして,共同不法行為に基づき,…の連帯支払の請求
(2) 予備的請求(原告P1の著作権及び著作者人格権侵害に係る請求)
 本件掲載行為が原告P1の有する本件イラストの著作権(複製権,公衆送信権,送信可能化権)及び著作者人格権(同一性保持権,氏名表示権)を侵害するものであるとして,共同不法行為に基づき,…の連帯支払の請求』 


2 許諾の有無について
 以下のとおり,本件パンフレットの表紙に本件イラストを利用することだけでなく,本件掲載行為についても,原告らによる本件イラストの利用に関する許諾の範囲内のものと解するのが相当であるから,原告P1の有する本件イラストの著作権に対する不法行為は成立しないものというべきである。
(1) 本件掲載行為が本件イラストの複製,公衆送信,送信可能化に当たること
 本件掲載行為が本件イラストの複製,公衆送信,送信可能化に当たることについては,被告らも積極的に争っておらず,これを認めることができる。
(2) 本件イラストの利用に関する原告らの許諾
ア 原告リーブラから原告P1に対する著作権利用料の支払
 支払報告書によれば,原告リーブラは,原告P1に対し,平成13926日,被告岡山県から著作権利用料の支払を受けたことについて報告をしたこと,著作権利用料を原告リーブラと原告P1とが折半したことが認められる。
 ところで,上記支払報告書には,「パンフレット/表」の用途に関する著作権利用料が50050円であり,「パンフレット/2次」の用途に関する著作権利用料が25480円である旨の記載がある。原告らは,「パンフレット/表」の記載が本件イラストをパンフレットの表紙に利用することに関する利用料であり,「パンフレット/2次」の記載が二次利用に関する利用料である旨主張している。
イ 本件掲載行為が原告らによる許諾の範囲内の行為であること
() 本件パンフレットの表紙への利用の許諾
 前記アによれば,原告らは,被告岡山県が本件パンフレットの制作を依頼した印刷会社に対し,本件イラストを本件パンフレットの表紙に利用することについて許諾していたことが認められる。
 なお,本件イラストは,別紙イラスト記載のものであるから,これをパンフレットの表紙として利用するためには広告コピーなどを挿入することが必要であることは明らかであり,本件パンフレットの表紙における本件イラストの改変も,原告P1による許諾の範囲内の行為であると認めることができる(後記)。
() 二次利用についての許諾
 前記アのとおり,原告らは,被告岡山県に対し,本件パンフレットの二次利用について許諾し,対価を得ていたことが認められる。
 一般に,二次利用とは,著作物を引用(転載),複製するなどして利用することをいうところ,本件で,原告らが,被告岡山県に対し,許諾した二次利用の具体的態様は必ずしも明らかではないが,その一方で,二次利用の範囲について何らかの限定を付していたというような事情は見当たらない
 前提事実のとおり,本件掲載行為は,本件パンフレットの表紙(本件イラスト)を別紙ウェブページ記載の態様で何ら改変することなく掲載したものであり,当該ウェブページは,本件大学校の協働施設として,被告岡山県との連携,とりわけ本件大学校と密接な関連のある「新おかやま国際化推進プラン」について紹介したものである。また,本件パンフレットの表紙(本件イラスト)は,ウェブページ全体の中ではごく一部,紹介記事の本文と比較しても半分以下の大きさで掲載されているにすぎない。
 このような本件掲載行為の態様は,著作物の二次利用としてみた場合に,当該著作物の著作権に及ぼす影響が非常に少ない態様のものであるということができる。仮に,原告らが本件パンフレットの二次利用に係る許諾の範囲について何らかの限定を付していたとしても,このような行為について許諾していなかったというのは考えがたいことである。むしろ,このような本件掲載行為についてまで二次利用としての許諾の範囲に含まれないとすると,許諾の範囲に含まれる適法な二次利用を想定しがたい。
 以上のことからすれば,本件掲載行為は,原告らによる二次利用に係る許諾の範囲内の行為であると認めることができる
 (略)
4 著作者人格権侵害の成否について
(1) 本件パンフレットの表紙の作成が原告P1の有する著作者人格権を侵害するものではないこと
ア 本件パンフレットの表紙における本件イラストの改変が原告P1の有する本件イラストの同一性保持権を侵害するものではないこと
 前記2(2)()のとおり,本件イラストをパンフレットの表紙として利用するために広告コピーなどを挿入することが必要であることは明らかであり,この改変について認識もしていなかったことを前提とする原告P1の主張は採用することができない。
 本件イラストに挿入された被告岡山県の所在を示すハート形についても,本件イラストの作品としての実質的同一性を害することのない微細な改変であるし,本件パンフレットの制作目的に適うものである。
 これらのことからすると,本件パンフレットの表紙における本件イラストの改変について,原告P1の許諾の範囲内のものと認めることができるから,当該行為は原告P1の有する本件イラストの同一性保持権を侵害するものではない
イ 本件パンフレットの表紙に原告P1の氏名表示がないことは,原告P1の有する本件イラストの氏名表示権を侵害するものではないこと
 前記アのとおり,原告らは,本件パンフレットの表紙に本件イラストを利用することについて許諾していたのであるから,これに原告P1の氏名を表示しないことについて承諾していなかったとか,本件イラストの著作権管理について委託を受けていた原告リーブラが認識もしていなかったというのは,にわかに採用しがたい主張である。
 少なくとも,原告P1に対し,金銭的に慰謝されなければならないような氏名表示権侵害に係る損害を生じさせるものであるとも認められない
(2) 本件掲載行為が原告P1の有する著作者人格権を侵害するものではないこと
ア 同一性保持権の侵害
 前記(1)アのとおり,本件パンフレットの表紙における本件イラストの改変は原告P1の有する本件イラストの同一性保持権を侵害するものではない。
 本件掲載行為は,本件パンフレットの表紙に何ら新たな改変を加えたものではなく,本件掲載行為が原告らによる利用許諾の範囲内の行為であり,適法な引用に当たることも前述のとおりである。
 そうすると,被告新見市及び被告機構が本件パンフレット表紙を本件大学校のウェブページに掲載するに際し,広告コピー及び被告岡山県の場所を示すために挿入したハート形の記載を削除せずに使用したからといって,原告P1の有する本件イラストの同一性保持権を侵害するものであるとはいえない。
イ 氏名表示権の侵害
 前記(1)イのとおり,本件パンフレットの表紙に原告P1の氏名表示がないことは,原告P1の有する本件イラストの氏名表示権を侵害するものとはいえない。本件掲載行為が原告らによる利用許諾の範囲内の行為であり,適法な引用に当たることも,前記アと同様である。
 そうすると,本件掲載行為が,原告P1の氏名表示権を侵害するものであるとはいえない。
 
少なくとも,本件掲載行為が,原告P1に対し,金銭的に慰謝されなければならないような氏名表示権侵害に係る損害を生じさせるようなものであるとは認めることができない











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