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譲渡契約の解釈(18)-契約解除の効果-
「山野草DVD事件」」平成250829日東京地方裁判所(平成24()32409/平成260423日知的財産高等裁判所(平成25()10080 

【コメント】本件は、本訴において、原告が、被告に対し、被告がその販売するDVD商品等に原告に無断で原告の撮影した風景の映像動画を複製して頒布したとして、著作権法112条に基づき、DVD商品等からの映像の削除を求めるとともに、不法行為による損害賠償請求権に基づき、所定の損害金等の支払を求め、反訴において、被告が、原告に対し、原告が契約の条項に違反したことを理由に、原告との間の製作委嘱契約を解除したとして、当該契約に基づき、原告の撮影した山野草の映像動画について、被告が著作権を有することの確認、これらを収録した映像素材(原版)の引渡し並びに原告に対する既払金及びこれに対する所定の遅延損害金の支払を求めた事案です。

なお、以下の「前提事実」参照:

『原告と被告は,平成21111日付で,原告が被告の委嘱に基づき「Virtual Trip 山野草(仮題)」に使用する録音録画物の製作業務を行い,被告が原告に一時金150万円及び印税を支払うことを内容とする契約(以下「本件契約」という。)を締結した。これにつき作成された製作委嘱契約書は,被告を甲,原告を乙とし,別紙目録を「【原版】Virtual Trip山野草(仮題)に使用する録音録画物 撮影期間:2009 11 月〜2010 9月(予定) 備考:@カラー・ステレオ A春夏秋冬,各々の季節の山野草を収録」として,次のような記載がある。
1条(目的)
「乙は,甲に対し,別紙目録記載の録音録画物(複製,頒布,上映,放送,公衆送信等に適する未編集の録音録画物,以下,原版という)の製作業務(撮影業務(音声の収録を含む)をいう,また,必要な関連業務を含む,以下,本件業務という)を甲の委嘱に基づき行うことを承諾し,甲はこれらに関する対価を乙に支払うことを約諾した。」(1項)
「前項に基づき製作された原版(全ての収録素材を含む)及び原版を製作する過程で生じた中間成果物(以下,併せて,本件成果物という)に関する所有権並びに著作権法上の一切の権利(著作隣接権,並びに著作権法第27条,28条の権利を含む),産業財産権及びその他一切の権利は甲に帰属するものとする。」(2項)
2条(対価)
「甲は,本契約の一切の対価として下記の金員(一時金及び印税,以下,本対価という)を支払うものとする。尚,本対価には,乙に対する報酬金の他,本件成果物の撮影費(撮影機材費,撮影素材費,交通費等の経費等を含む),本件成果物製作に関与した者(乙以外のムービーカメラマン等を含む)に対する一切の報酬を含むものとする。
(1)一時金として,金1500000円(源泉税込,消費税別)を以下の通り,現金振込をもって乙の指定する銀行口座宛に支払うものとする。
(省略)」
9条(解約)
「前条に定める原版の検収が完了する前において,甲,乙のいずれかが次に定める各項のいずれかに該当する事由が生じた場合は,当該行為者の相手方は相当の催告期間を定めて是正を求めた後,当該行為者がその催告期間内に解約事由を是正することができないときは,本契約を解約することができるものとする。(省略)
(10)その他,甲,乙のいずれかが本契約に定める各条項のいずれかに違反した場合。」
10条(解約の効果)
甲が,前条の解約により本契約を終了させたときは,乙はそれまでに甲より受領した金員を甲に返還しなければならない。」(1項)
甲は,本契約を解約した場合においても,本契約によって取得した著作権,及び乙がそれまで取得した本件成果物の素材の所有権はすべて甲に独占的に帰属するものとする。」(2項)』 


【原審】

2 反訴について
(1) 本件映像動画1及び2が本件契約の12項にいう本件成果物に当たるか否かについて判断する。
ア 本件映像動画1及び2は,これに対応する本件納品映像動画の撮影と同一の機会に撮影の角度や画角を変えて撮影したものであるから,本件納品映像動画と同様に,本件契約に基づいて製作された原版に当たるものと認められる(仮に本件納品映像動画のみが原版に当たるものとしても,本件映像動画1及び2はその原版を製作する過程で生じた中間成果物に当たる。)。
イ 原告は,花や風景の撮影を日常業務とし,本件契約の業務もその日常の中で遂行されたのであるから,どれが個人的な創作活動としての撮影で,どれが本件契約のための制作活動としての撮影であるかが明確でなく,どの映像動画が本件契約の成果物かを特定することが困難であるとして,本件映像動画1及び2は本件契約の12項にいう本件成果物に当たらないと主張する。
 しかしながら,たとえ原告が花や風景の撮影を日常業務としているとしても,本件契約に基づく録音録画物の製作として撮影をした以上,これと同一の機会に撮影の角度や画角を変えて撮影したものは,本件契約に基づき制作した録音録画物に当たるといわなければならない(なお,原告は,原告が個人の日常的製作活動の成果である花の映像動画を本件契約に基づく作品として納品していることは事実であり,このことは原告が納品した「夏」の一部と「秋」の大半の作品が本件契約前に撮影したものであることから明らかであるというが,仮にそうであるとしても,このことは,上記の判断を左右しない。)。
 原告の上記主張は,独自の見解であって,到底採用することができない。
(2) そこで,被告のした解除が効力を生じたか否かについて判断する。
 本件映像動画1は,上記(1)に判示したように,本件契約に基づいて製作された原版であるか,又は少なくても原版を製作する過程で生じた中間成果物であるから,その著作権は,本件契約の12項により,被告に帰属する。
 しかるに,原告は,ソニーPCL株式会社が運営する「高画質ビデオ素材ライブラリー」において本件映像動画1を販売したというのであるから,原告は本件契約の12項に違反したものである。そうであるから,被告のした解除は有効であり,これにより,本件契約は終了したといわなければならない。
 原告は,本件映像動画1が本件契約の12項にいう本件成果物に当たるか否かについて疑義があるのに,一方的な解釈をして,協議をすることなく解除するのは間違いであると主張するが,原告は,独自の見解に立って,本件映像動画1が本件契約の12項にいう本件成果物に当たることを否定するにすぎず,これをもって,本件契約上の解除権の行使が制限されることはない。原告の上記主張は,採用することができない。
 
また,原告は,平成24719日にソニーPCL株式会社が運営する「高画質ビデオ素材ライブラリー」から本件映像動画1を削除したし,原告の撮影した映像動画が本件契約の12項にいう本件成果物に当たることが確定したときにはこれを原告に引き渡す用意があると主張するが,本件契約は,被告のした解除により平成24624日に終了したのであるから,原告の上記主張の事実が認められたとしても,このことをもって,解除の効果が覆ることはない。原告の上記主張は,採用の限りでない。
(3) 本件契約は,被告のした解除により終了したが,本件契約の10条は,原告がそれまでに被告から受領した金員を被告に返還しなければならないと規定するとともに,本件契約によって取得した著作権等については被告に独占的に帰属すると規定する。
 したがって,反訴については,被告が本件映像動画1及び2の著作権を有することの確認請求及びこれらを収録した映像素材(原版)の引渡請求は理由があり,既払金返還請求は,期限の定めのない債務として請求により遅滞に陥るのであるから,1536465円及びこれに対する平成25524日付「訴えの変更申立書」の送達により原告に請求した日の翌日であることが記録上明らかな同月31日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。

【控訴審】

参照:『第9条(解約)
 前条に定める原版の検収が完了する前において,被控訴人,控訴人のいずれかが次に定める各項のいずれかに該当する事由が生じた場合は,当該行為者の相手方は相当の催告期間を定めて是正を求めた後,当該行為者がその催告期間内に解約事由を是正することができないときは,本契約を解約することができるものとする。但し,本条第5号,第6号及び第7号に該当する事由が生じた場合は,当該行為者の相手方は当該行為者に対して一方的に通告して即時本契約を解除することができるものとする。
(1) 正当な理由がなく,控訴人において制作スケジュールが著しく遅滞した場合。
(2) 控訴人が,被控訴人の定める制作基準に基づく本作品の納入を被控訴人の定める期限までに完了することが不可能と被控訴人が判断した場合。
(3) 控訴人が本件業務を中断した場合。
(4) 控訴人が本件業務に要する著作物等の権利を取得することが不可能となり,または被控訴人に取得させることが不可能となった場合。
(5) 被控訴人,控訴人のいずれかが金融機関から取引停止の処分を受けた場合。
(6) 被控訴人,控訴人のいずれかが差押え,競売,強制執行,滞納処分等の処分を受けた場合。
(7) 被控訴人,控訴人のいずれかが破産,民事再生,会社更生の申立てを自らなし,もしくは他からこれらの申立てを受けた場合。
(8) 本件業務遂行に際し,控訴人が第三者の権利を侵害し,又はその他の事由により被控訴人の名誉を著しく毀損した場合。
(9) 本件業務に関して公序良俗に反する行為,並びに被控訴人の品位を傷つける行為を行った場合。
(10) その他,被控訴人,控訴人のいずれかが本契約に定める各条項のいずれかに違反した場合。』 


1 争点(1)(本件風景映像動画利用の許諾の有無)について
(1) 許諾の有無及び範囲
 前記のとおり,被控訴人における社内決裁用の稟議書には,「総点数約400種類に及び植物を春夏秋冬毎に収録。日本の四季の風景とともに映し出すリラクセーション目的の映像コンテンツ」との記載があり,しかも,この稟議書は,被控訴人代表者に至るまでの被控訴人の各役員,各役職者,各担当者の決裁を得ているものであるから,ここに記載された内容が,被控訴人内部において本件作品の正式な構成として最終的に定められたものと認められる。そうであれば,本件作品の担当者であるAは,当然,この内容を控訴人に伝えたものと推測され,これを覆すに足りる合理的な理由は見当たらない。現に,Aは,平成22930日付けメールで控訴人に対して,風景の映像動画の納入を催促しているのである。そして,控訴人が,@平成22108日に春夏秋冬の各1点のみの風景映像動画が収録されたDVDを被控訴人に送付した後に,A平成221018日に新たに送付したDVDのサンプル映像動画から,Aが適宜風景の映像動画を選択して使用してよいとの内容のメールをしていることに照らすと,それは,春夏秋冬各1点では数が足りないため,@とAの間に風景映像の追加がAから求められたものと考えるのが自然である。
 また,風景の映像動画を,山野草の映像動画の「扉」として使用するとの合意があったことは,当事者間に争いがないが,「扉」が何を意味するのかは具体的には明確でないところ,本件作品に収録する風景映像について,A発信の平成22930日付けメールによれば「季節毎の実景のみの映像」と,控訴人発信の平成221018日付けメールによれば「季節の扉候補」との表現がされているが,ここから四季の各1季節の冒頭に各1点の映像動画のみを収録するとの限定されたような趣旨を読み取ることはできない。また,同メールの「風景の中から抜粋して頂いてもいいかと思います。(今のところ,構図を固定した『動く写真』的な撮り方で統一しています)」との記載からすると,前記のとおりAが使用できる部分を任意に選択することが許されたものと解するのが相当であり,この記載によって使用できる点数が限定されていると理解することは困難である。
 以上の認定判断にかんがみると,控訴人が被控訴人に送付した提供サンプル映像動画から不足分の風景の映像動画を使用することが包括的に許諾された旨を述べるA作成の陳述書に記載の事実経過は,ごく自然なものといえ,同陳述書は信用できるから,本件契約には,風景の映像動画を納入することも含まれていたものというべきである。
(2) 控訴人の主張等に対して
 控訴人は,風景の映像動画として使用を許諾したのは5点のみである旨を主張するが,他方で,本件訴訟提起前には風景の映像動画として使用を許諾したのは4点であるとも主張していたのであり,一貫性を欠いている。本件作品中の本件風景映像動画とする部分(控訴人による各映像動画の特定は必ずしも十分なものではないが,本件風景映像動画の点数及び尺数自体は,当事者間に争いがない。)の中には,風景というよりも樹木や山野草を遠望したといえるものがあるなど,風景の映像動画と,風景の映像動画以外の映像動画とが明りょうに区分けできているものではない。結局のところ,本件契約の当事者間において,風景の映像動画として使用を許諾される映像動画の数量を明確に取り決めたと認めることはできないのである。すなわち,風景の映像動画として使用が許諾されたものが5点のみであることを積極的に裏付ける的確な証拠はないというべきであって,上記(1)の認定判断を左右する事情はうかがわれない。
 なお,本件契約書には,控訴人の製作する録音録画物について「備考:…A春夏秋冬,各々の季節の山野草を収録」と記載されているだけであって,風景の映像動画を含むような記載はされていないが,本件作品の主たるテーマは自然の中の山野草であって,風景となるような付随的な部分を記載しないとしても格別不自然ではない。
(3) 小括
 以上からすると,控訴人は,本件風景映像動画を複製,頒布することの許諾をしたものと認めるのが相当である。
2 争点(5)(本件映像動画1及び本件映像動画2の本件成果物該当性)について
 本件契約書第1条にいう「原板」は,「未編集の録音録画物」であり,この原板(未編集の録音録画物)の製作業務が控訴人に委託され,原板(未編集の録音録画物)を製作する過程で生じたものが「中間成果物」と,原板と中間成果物を併せたものが「本件成果物」とされている。したがって,控訴人が撮影場所において目的物を録音録画行為をする過程で生じた未だ編集されない状態の映像素材のすべてが本件成果物に該当することは,契約書面から明らかである。また,本件映像動画1及び本件映像動画2は,これに対応する本件納品映像動画の撮影と同一の機会に撮影の角度や画角を変えて撮影したものである。したがって,本件映像動画1及び本件映像動画2が,原板であるか,それとも中間成果物であるのかはともかくとして,本件契約書の条項上は,本件成果物に該当するといえる。
 なお,本件契約書は,平成2112月ころに,平成21111日付けで作成されたものであるところ,本件作品に収録された山野草の映像動画は,夏及び冬のブロックのごく一部(夏ブロック2映像,冬ブロック1映像),秋のブロックのかなりの部分(66映像)が,本件契約書の作成日付けよりも前に撮影されたものであることが認められる。したがって,本件契約の履行の実態としては,委託に基づいて新たに撮影された映像動画を被控訴人に納入するだけでなく,それと同時に,控訴人が既に撮影済みの映像動画を納入することも行われていたものであり,山野草の映像動画の撮影日が記載された本件作品の収録リストが,控訴人からAに提出されていることからすると,Aがこのような履行の実態を承知していたことも,明らかである。
 そして,本件映像動画1についても1映像(番号10)は,控訴人が本件契約前に撮影済みの手持ちの映像動画が使用されたものと認められる。
 しかしながら,控訴人が既に撮影済みの上記映像動画を含む本件作品(本件風景映像動画部分を除く。)が,本件成果物に該当することは,当事者間に争いがなく,また,本件映像動画1における控訴人による手持ちの映像動画の使用は1映像にすぎず,その余の映像及び本件映像動画2においては,すべて本件契約に基づく撮影の機会に撮影されたものが使用されていることからすると,本件映像動画1及び本件映像動画2は,一体として本件成果物に該当すると評価できるものである。
3 争点(6)(本件契約の解除の効力発生の有無)について
(1) 本件契約の解除の有効性
 上記2に認定判断のとおり,本件映像動画1及び本件映像動画2は,本件成果物に該当し,本件契約第7条により,控訴人は被控訴人に対してこれらを納入する義務があるから(同条に定める納入期限は,本件証拠上不明であるが,本件作品を収録したDVD等が既に発売されている以上,この期限を経過していることは明らかである。),控訴人には本件契約第7[管理人注:『第7条(納期) 控訴人は,被控訴人の最終的承認済原板(及びその他本件成果物)を,別途被控訴人の指定する期日迄に被控訴人に対し納入するものとする。』]の違反があることになり,これは本件契約第9(10)の条項に該当することになる。そして,被控訴人が,本件映像動画1の引渡しの催告をし,催告期間経過後に本件契約を解除する意思表示をしたことは,前記に認定のとおりである。
 控訴人は,本件契約第9条の解約は,原板の検収が完了する前でなければならないところ,既に本件作品の検収が終了している以上,本件契約を解約することはできない旨主張する。しかしながら,「検収」に関する本件契約第8条@は,「前条所定の原板(及びその他本件成果物)を被控訴人に納入した後,被控訴人は仕上がり状況に関し検査するものとし,…」と,同Aは,「原板(及びその他本件成果物)が,本条に定める検収を完了する前に遺失又は毀損した場合…」と定めているから,同条にいう検収は,本件成果物を作成するための個々の映像素材を対象としているのであって,本件作品のみを対象としているのではない。また,本件契約第9条各号列記以外の部分は,同8条を承けて,「前条に定める原版の検収が完了する前において,被控訴人,控訴人のいずれかが次に定める各項のいずれかに該当する事由が生じた場合…」に解約権を行使できるとしているから,本件成果物である本件作品を収録したDVD等が発売された後であっても,同様に本件成果物である本件映像動画1及び本件映像動画2の「原板」の引渡しが未了である以上は,「原板」の検収は未了のままであるから,被控訴人において解約権を行使することは可能である。
 したがって,被控訴人のした本件契約の解約は,効力を有するものというべきである。
(2) 本件契約の解除の効果
 本件契約第10条は,被控訴人による解約により契約が終了した場合には,被控訴人が控訴人に対して既払金の返還を求めることができるとする定めを置く一方で(同条@),本件契約によって控訴人から被控訴人が取得した著作権及び本件成果物の素材の所有権を失わないとする特則を規定しており(同条A),被控訴人に片面的に有利な規定となっている。
 確かに,本件契約第9(10)を除く同条の他の号を見ると,受託者が順調に受託業務を遂行していない場合や委託者に成果物の著作権等を取得させることが困難となった場合など(同条(1)(3)),どちらか一方の金銭的信用力が極めて悪化した場合や破綻した場合など(同条(4)(7)),受託者に著しい不行跡があった場合など(同条(8)(9))であり,このような場合に委託者が契約を解約したときには,委託者が既に支払済みの金銭を回収するとともに,責めのない委託者が将来的な著作権等の権利をめぐる紛争に巻き込まれる懸念をなくし,あるいは,契約違反をした受託者への制裁又は違反の予防として,受託者から委託者に納入された映像素材の著作権等の権利を引き続き委託者が保有し続けるとしてもやむを得ないものであり,契約当事者双方もそのように解釈して本件契約を締結したものと推認される。したがって,本件契約第10条は,そのような場合にはこれを全面的に適用しても必ずしも合理性に欠けるものではないといえ,言葉を換えれば,本件契約第10条に定める契約解約後の権利関係の調整規定が全面的に適用されるのは,そのような場合に限られると解される。しかしながら,逆に,本件契約第10条が念頭においていないような場合については,同条の定める契約解除後の権利関係の調整をそのまま適用する前提を欠くことになり,これを当事者間の利害調整や衡平の観点から適宜調整の上適用することが,本件契約の合理的解釈といえる
 そこで,以下,上記観点から検討するところ,@本件作品を収録したDVD等は既に発売されおり,したがって,本件作品は映像動画として完成品と評価できること,A被控訴人が控訴人に支払った対価は,ほぼ上記本件作品の作成のために費消されたものと推認できること,B本件映像動画1及び本件映像動画2は,本件納品映像動画が撮影された同一機会に撮影の角度,画角を変えて撮影されたものであり,上記2に認定判断のとおり,本件成果物に該当するから,被控訴人がそれらを収録した映像素材の引渡しを受けるべきものであること,C仮に控訴人による当該映像動画の引渡未了や公衆送信化により被控訴人に損害が生じたのであれば,被控訴人は,別途,控訴人に対して損害賠償請求をすることが可能であること,D本件映像動画1及び本件映像動画2の合計は32映像であるが,本件作品に含まれるのは500映像であり,被控訴人に引き渡されなかった映像数が納入された映像数に比して格段に少ないこと,が認められる。以上の点を考慮すると,本件は,本件契約第10条が本来的に想定する事例とは異なるものであり,契約の合理的解釈として,同条Aに基づく権利等の維持の効果を認める必要性は高く,その適用はあると解されるものの,同条@に基づく既払金の返還の効果は,これを認める必要性は低いだけでなく,その時機も逸していて殊更に大きな負担を控訴人に強いるのであるから,その適用はないと解するのが相当である。
 そうすると,本件契約の解約の結果,被控訴人は,控訴人に対し,本件作品を返還する必要はなく,本件映像動画1及び本件映像動画2の著作権等の取得も継続されるが,既払金の返還を求めることはできないというべきである。
 
したがって,被控訴人の解除に基づく既払金の返還を求める請求は,理由がない。











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