著作権重要判例要旨[トップに戻る]







「特掲」の程度(4)
「『会津若松ウィンドファーム(仮称)事業に係る環境影響評価準備書』意見書事件」平成260521日知的財産高等裁判所(平成25()10082 

【コメント】被控訴人エコ・パワーは、福島県環境影響評価条例において環境影響評価の対象事業に当たる「会津若松ウィンドファーム(仮称)事業」を計画し、同条例に基づき、「会津若松ウィンドファーム(仮称)事業に係る環境影響評価準備書」を作成し、平成231021日、これを公告し、同日から同年1121日にかけて縦覧に供したところ、同年116日から同年126日にかけて、同条例に基づいて住民から「本件意見書」が被控訴人エコ・パワーに送付されたことから、同条例に基づき、平成24618日までに、「本件意見書」を含む住民意見を抜粋ないし要約した記載のある「会津若松ウィンドファーム(仮称)事業に係る環境影響評価書」(「本件評価書」)を作成し、同日頃、これを福島県知事に送付し、同年810日、「本件評価書」を公告し、同日から同年910日にかけて、「本件評価書」を縦覧に供しました。
 本件は、控訴人は、本件意見書1ないし7の各著作者から著作権の譲渡又は管理委託を受け、出版権の設定を受け、本件意見書の原稿をまとめて出版を行い、また、本件意見書8の著作者との間で著作権管理委託及び出版権設定契約を締結したところ、本件評価書の「表821(1)(9) 準備書についての住民意見の概要及び事業者見解」の「環境保全上の見地からの意見」欄、「表822 準備書についての住民意見の概要及び事業者見解」の「その他意見」欄において、被控訴人らが、本件意見書の表現の一部を抜粋したり、表現を要約したりするなどして、本件意見書の表現を改変したことが、氏名表示権(著作権法19条)、同一性保持権(20条)、翻案権(27条)、出版権(80条)を侵害し、著作権者の名誉を毀損(パブリックコメントにおける意見者のオリジナリティを侵害・毀損)するなどと主張して、控訴人から被控訴人らに対し、本件評価書の回収及び所定の損害賠償金の連帯支払を求めた事案です。
 原判決は、控訴人の主張する氏名表示権、同一性保持権、翻案権及び出版権の各侵害並びに著作権者の名誉毀損(パブリックコメントにおける意見者のオリジナリティを侵害・毀損)はいずれも認められないとして、控訴人の請求を全部棄却したため、控訴人がこれを不服として控訴したものです。


4 翻案権侵害について
 本件評価書では,同書の「表821(1)(9) 準備書についての住民意見の概要及び事業者見解」の「環境保全上の見地からの意見」欄,「表822 準備書についての住民意見の概要及び事業者見解」の「その他意見」欄において,本件意見書の表現の一部を抜粋したり,表現を要約したりされている。
 しかし,前記2のとおり,本件意見書の著作者は控訴人とは認められない。
 そして,控訴人がいかなる根拠に基づいて本件意見書の翻案権を有するのかはその主張から必ずしも明らかではないが,著作権を譲渡する契約において翻案権が譲渡の目的として特掲されていないときは,翻案権は譲渡した者に留保されたものと推定されるところ(著作権法612項),前記2において認定した本件意見書の各著作者と控訴人間の管理委託及び出版権設定契約書においては,翻案権が譲渡の目的として特掲されておらず,また(証拠)中の「※意見書については,著作権及び版権は,©風の谷委員会に帰属します。」との記載だけでは,翻案権が譲渡の目的として特掲されていたということはできない。他に控訴人が本件意見書の翻案権を有することを認めるに足りる証拠はない。
 そうすると,控訴人が本件意見書の翻案権を侵害された旨の主張は理由がない。

※参考:原審-平成250830東京地方裁判所(平成24()26137-

3 翻案権侵害について
(1) 本件評価書の「表821(1)(9) 準備書についての住民意見の概要及び事業者見解」の「環境保全上の見地からの意見」欄,表822 準備書についての住民意見の概要及び事業者見解」の「その他意見」欄においては,本件意見書の表現の一部を抜粋したり,表現を要約したりしている。
(2) しかし,本件条例2122号によれば,事業者は,評価書に「第18条第1項の規定により述べられた意見の概要」を記載することが義務づけられているのであるから,事業者に意見書を提出した者は,その意見における表現が評価書において意見の概要を表す限度で改変されることを当然に容認した上で意見書を提出したものとみなされる。
 本件意見書の各作成者も,評価書において意見の「概要」が記載されることを容認した上で本件意見書を被告エコ・パワーに提出したのであるから,本件評価書において意見の概要を表す限度で本件意見書の表現を改変したとしても,翻案権侵害は成立しない。
(3) なお,本件評価書を作成し,縦覧に供したのは事業者である被告エコ・パワーであって,被告福島県が本件評価書における本件意見書の表現の改変に関与した形跡はない。











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