著作権重要判例要旨[トップに戻る]







パートナー契約の債務不履行(著作権上の瑕疵なきソフトの提供義務違反)に基づく損害賠償請求を認めた事例
「‘部品屋’シリーズ契約事件」平成250924日東京地方裁判所(平成23()34126

【コメント】本件は、原告が、被告との間のパートナー契約において、被告から提供されたソフトウェア中のプログラムにつき、著作権上の瑕疵があるとして、被告に対し、債務不履行に基づき、所定の損害金及び遅延損害金の支払を求めた事案です。

 なお、以下で登場する「ビーエスエス」とは、ソフトウェアの開発・販売等を業とし、被告代表者の夫であるA1が代表取締役を務める株式会社であり、「ソフトウェア部品開発」とは、ソフトウェアの開発・販売等を業とし、被告代表者が代表取締役を務め、A1が取締役を務める株式会社のことです。
 そして、本件において「パートナー契約」とは、原告が、平成2110月に、被告との間で締結した、ソフトウェア「部品屋2007」シリーズ(「本件ソフト群」)について、被告がこれを標準価格に基づく価格から30%割り引いた価格で原告に提供し、原告がこれを使用・再販及び複製等することなどを内容とする(「本件契約」)のことです。
 ※「本件ソフト群」は、A1の発意の下に、平成1812月ころから、ビーエスエスとその事業を譲り受けたソフトウェア部品開発によって順次開発された。
 原告は、平成232月、被告に対し、本件ソフト群中のプログラムがソフトウェア「BSSPACK」シリーズ(「先行ソフト群」)中のプログラムについて、「日本電子計算」が有する著作権を侵害するもので、原告がこれを利用したり、再販することができないとして、本件契約を解除するとの意思表示をするとともに、所定の損害金を支払うよう催告しました。


1 争点@(本件各プログラムが先行各プログラムを複製又は翻案したものであるか)について
(1) 本件ソフトウェア部品について
 …によれば,ビーエスエスとソフトウェア部品開発は,平成19年までに,約1500個の先行ソフトウェア部品に,新たに開発した約200個のプログラム「ソフトウェア部品」を加え,約1700個の本件ソフトウェア部品を制作したことが認められる。この事実によると,ビーエスエスやソフトウェア部品開発は,先行ソフトウェア部品に依拠し,これと一部が同一の本件ソフトウェア部品を制作したものと認められる。
 したがって,本件ソフトウェア部品の一部は,先行ソフトウェア部品を複製したものである。
(2) その余の本件各プログラムについて
 (略)
2 争点A(原告と被告以外の第三者が先行各プログラムの著作権(複製権又は翻案権)を有するか)について
 …によれば,ビーエスエスは,サンライズに対し,平成1847日に先行ソフトウェア部品を含む先行両ソフトの著作権を,同年927日に部品マイスターの著作権をそれぞれ譲渡したこと,先行各プログラムの著作権は,平成19919日には株式会社フロンテックに,平成21522日には日本電子計算に順次譲渡されたことが認められる。
 被告は,ビーエスエスが,平成8年ころに譲渡担保権者から指導を受け,先行ソフト群の知名度を上げて売上げを伸ばすなどの目的で代理店や先行ソフト群を購入する者等に先行ソフトウェア部品のソースコードを開示し,平成9年ころに先行ソフトウェア部品の著作権を放棄したと主張し,乙1(被告代表者の陳述書),乙4(A1の陳述書)及び証人A1の供述中には,これに沿う内容の陳述がある。…によれば,ビーエスエスは,平成8年ころから,先行ソフト群の知名度を上げて売上げを伸ばす目的で,代理店や先行ソフト群を購入した者等に対し,先行ソフトウェア部品のソースコードを記録したCD-ROMを提供する方法により,上記ソースコードを開示していたことが認められる。しかしながら,ビーエスエスが先行ソフトウェア部品のソースコードを開示していたとしても,このことから,当然にビーエスエスが先行ソフトウェア部品の著作権を放棄したということにはならない。そして,…によれば,ビーエスエスは,上記方法を通じて,先行ソフトウェア部品の著作権者として,先行ソフト群を購入した者等による先行ソフトウェア部品の改変を許諾していたことが認められる。また,…によれば,ビーエスエスは,平成9年ころ,先行ソフトウェア部品等に譲渡担保権を設定し,複数の金融機関から億単位の貸付けを受けて,先行ソフトウェア部品の開発を継続していたことが認められるところ,ビーエスエスが先行ソフトウェア部品の著作権を放棄するには,全譲渡担保権者の明確な同意を要すると解されるが,上記金融機関がこれを同意したことは窺えない
 さらに,…によれば,ビーエスエスは,平成710月に,ソフトウェア「BSS-PACKクライアント(メニュークリエイト)」について,著作物の内容を「これは業務処理用のアプリケーションプログラムである「BSS-PACK」のクライアント用に開発されたプログラムである。ライブラリー化されている業務処理プログラムを抽出・選択して,業務担当者ごとに処理メニューを構築する機能を有している。」として登録し,平成9314日に,ソフトウェア「BSS-PACKサーバー(WindowsNT版)」について,著作物の内容を「本プログラムは,統合業務管理システムBSS-PACKサーバーのWindowsNT版である。BSS-PACKは,企業体の業務処理をほぼ網羅するプログラム群で構成されており,これらのプログラムを組み合わせることにより,統合されたシステム化が実現できるものである。」として登録して,ビーエスエスが保有する著作物に先行ソフトウェア部品を含めて登録したこと,上記各登録後も,ビーエスエスは,金融機関等の債権者やサンライズとの間で,先行両ソフトの著作権につき,その範囲を限定することなく,譲渡担保権を設定したり譲渡したりする旨の契約書を取り交わしていたことが認められる(なお,ビーエスエスが平成13330日に金融機関等の債権者との間で取り交わした譲渡担保権設定契約書には,譲渡担保権の設定対象物からビーエスエスが著作権を放棄した著作物を除く旨の記載があるが,登録されていない著作物に係るものであって,登録された著作物に係るものではない。)。これらの事情に照らすと,被告の主張に沿う内容の上記各陳述は,たやすく採用することができない。そして,他に被告の主張事実を裏付ける的確な証拠がないことを併せ考えると,ビーエスエスは,先行ソフトウェア部品の著作権を放棄しなかったものと認められる。そうであるから,被告の主張は,ビーエスエスがサンライズに対し先行両ソフトの著作権を譲渡したとの前記認定を左右するものでなく,これを採用することはできない。
3 被告は,本件契約において,著作権上の瑕疵がない本件ソフト群を提供する義務を負っていたにもかかわらず,原告に対し先行ソフトウェア部品を複製した本件ソフトウェア部品を含む本件ソフト群を提供したのであるから債務の本旨に従った履行をしていない
 そして,被告が日本電子計算から先行各プログラムの利用の許諾を得る見込みはなく,給付の追完は不可能であって,原告は,被告の債務不履行により,本件契約をした目的を達することができなくなったのであるから,前記のとおり,被告に支払った合計2065000円に相当する額の損害を被ったと認められる。
4 したがって,被告は,原告に対し,債務不履行による損害賠償として,2065000円及びこれに対する催告の後の日である平成23315日から支払済みまで商事法定利率年6分の割合による遅延損害金を支払う義務があるから,原告の請求は,理由がある。











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