著作権重要判例要旨[トップに戻る]







プログラムの開発委託契約の成立性等が争われた事例
「ダンス協会プログラム開発委託事件」平成25121日東京地方裁判所(平成23年(ワ)13057/平成251030日知的財産高等裁判所(平成25()10053 

※【 】…控訴審での付加訂正箇所。

1 プログラムTに係る主位的請求(原告がプログラムTを作成し,これを被告に使用させていることの相当報酬としての商法512条の報酬請求権に基づく190万円の請求)について
(1) 事実認定
 (略)
(2) 判断
 上記認定事実に基づいて,原告の請求の当否を以下のとおり判断する。
ア プログラムTの作成についての相当報酬について
 原告の被告に対するプログラムTの作成に係る対価請求は理由がないものと判断する。その理由は,以下のとおりである。
 すなわち,上記認定事実によると,原告は,被告における会員名簿等の管理をデータベースソフトで処理するため,既存のパッケージソフトを使用して,プログラムTを作成したが,その作業の内容は,データの入力項目・入力方法の設定,その設定に従ったデータの入力,及び入力したデータの表示・印刷方法等の設定等であった。また,原告は,プログラムTの修整を行い,被告の従業員に対しその使用方法等の指導等をした。原告は被告から,平成10年以降,本件保守契約が締結される前である平成202月までの間に,プログラム(ソフト)作成料,プログラム使用料,データ入力料,パソコン指導料等の各種名目の下に,原告又はFを支払先として,合計1000万円を超える支払を受けた。
 ところで,原告と被告とは,平成203月に本件保守契約を締結し,保守料金の額について合意をしたが,その際,プログラムTの作成料については,格別何らの取決めもすることなく,また,原告がプログラムTを作成した平成10年以降平成232月までの間,原告が被告に対して,プログラムTの作成料を請求した事実もない。
 以上の事実を総合すると,原告は,プログラムTの作成に当たり,データ入力作業を行ったり,被告の従業員の指導等を行ったりしたことに対する支払名目で,被告から,長期間にわたって高額の支払を受けており,原告が実施した作業と支払名目が必ずしも対応していないとしても,本件保守契約締結以前に原告が行ったプログラムT作成作業に対する対価の支払は,既に完了していると解するのが相当である。
 また,原告がプログラムTの作成に関与したことに対する相当な報酬の額が,被告から支払を受けた金額を超えると認めるに足りる証拠もない。
イ プログラムTの使用料請求について
 原告の被告に対するプログラムTの使用料に係る請求は理由がないものと判断する。その理由は,以下のとおりである。
 すなわち,@プログラムTは,被告が使用する目的で作成されたものであり,被告が使用することは当初から予定されていたが,その使用料の支払についての合意がされていないことに照らすならば,被告が別途使用料を支払うことは当事者の間において想定されていないと解するのが合理的であること,AプログラムTの使用が開始された後においても,使用料の支払と窺える,被告から原告に対する定期的な支払はされていないこと(この点については,平成181113日及び平成19131日にプログラム使用料名目での支払がされているが,同支払は,必ずしも使用の対価として支払われたものとはいえない。また,原告もプログラムTの使用料の支払は受けていないと主張していることから,使用料は,単なる名目であると認めるのが相当である。),B上記のとおり,原告は,プログラムTに係る使用料の支払を受けていない事実があるにもかかわらず,平成232月に至るまで,使用料の支払を一切求めておらず,また,本件保守契約締結に際しても,使用料についての協議がされた形跡がないこと等の事実を総合すれば,原告,被告間において,原告がプログラムTの作成に関与したことについて,プログラムTの使用料の支払はない旨の合意がなされていたと認めるのが相当である。
(3) 小括
 以上のとおり,商法512条に基づくプログラムTの作成・使用料の請求は理由がない。
2 プログラムTに係る予備的請求(プログラムTの複製権侵害を理由とする190万円の請求)について
 原告は,主に,既存のパッケージソフトを利用して,データの入力項目・入力方法の設定作業及びデータの入力,入力したデータの表示・印刷方法等の設定作業を担当し,プログラムTを作成したものであり,既存のパッケージソフトは,これを利用し,定められた手順に従って設定,入力等を行うことにより,容易にプログラムが作成できるように作られており,プログラムTもこのようにして作成されたものであると認められる。そして,本件全証拠によるも,プログラムTが,著作権法211号,10号の210号の3各所定の「著作物」,「プログラム」及び「データベース」に該当することを認めるに足りる証拠はない。
 したがって,原告がプログラムTの著作権を有することを前提とした,複製権侵害による損害賠償請求は理由がない。
 仮に,原告がプログラムTに関して,何らかの著作権を有するとしても,被告がプログラムTについて複製,使用するに当たり,原告の許諾があることは当事者間に争いはなく,したがって,被告がプログラムTに関して,複製権を侵害したとの主張は,主張自体失当である。】
3】 プログラムUの開発委託料の請求について
 (略)
 以上の事実によれば、原告がプログラムUの開発・製作と主張する作業の内容は、結局のところ、被告が使用しているデータベースソフトにおけるデータの入力・出力の設定を変更して、被告の使い勝手に合わせる作業であって、それ自体を独立したソフトウェアの開発・製作と評価できるようなものではない。しかも、1年のほとんどをカナダに在住している原告が、本件保守契約に基づいて平成20年度から平成22年度までの3年間だけで合計108万円もの保守料金の支払を受けているという本件の特殊事情の下において、本件保守契約を締結しているデータベースの構築及び運用について行った作業であるから、原告が作業のために相当程度の時間を要し、また、その業務内容は単純な「保守」ではなく、データベースシステムの構築及び運用の改善にも及んでいるとしても、その作業は、本件保守契約に定める「システム構築及び運用に関する指導及び助言」に含まれる保守業務であると評価するのが相当であり、【原告,被告とも,プログラムUの作成は,本件保守契約における保守業務の一環として行われる作業と理解していたと認めるのが相当である。】
 よって、原告の主張するプログラムUの開発委託契約の成立が認められないから、原告の主位的請求のうち、プログラムUの開発委託料960万円の請求は、その余の点について判断するまでもなく理由がない。
4 プログラムUに係る予備的請求(当審において追加した予備的請求を含む)について】
(1) 請負契約に基づく報酬請求について
 上記認定判断によれば、本件保守契約に基づく保守業務の依頼とは別に、被告が原告に対し、プログラムUの製作を請け負わせる請負契約の申込みをしたわけではないから、原告と被告の間におけるプログラムUの製作請負契約の成立が認められない。したがって、請負契約に基づく相当額の報酬として960万円の支払を求める原告の予備的請求も理由がない。
(2) プログラムUの著作権侵害による損害賠償請求について
 前記のとおり,プログラムUは,プログラムTのソフトに新たな機能を付加,修整を施したものと認められる。しかし,本件全証拠によるも,プログラムUが,著作権法211号,10号の210号の3各所定の「著作物」,「プログラム」及び「データベース」に該当することを認めるに足りる証拠はない。
 したがって,原告がプログラムUの著作権を有することを前提とした,複製権侵害による損害賠償請求は理由がない。】
(3)】 不当利得返還請求について
 
上記認定判断のとおり、原告がプログラムUの開発・製作と称する作業は、被告が本件保守契約に基づいて原告に依頼した保守作業であるから、原告がこれらの作業を完了し、被告がこれによる利益を受けたとしても、被告が受けた利益には、本件保守契約に基づく原告の保守義務の履行という法律上の原因がある。被告には、その利益を不当利得として原告に返還すべき義務はないから、不当利得210万円の返還を求める原告の予備的請求も理由がない。











相談してみる

ホームに戻る