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上映権侵害を否定した事例
「漫画『彼女の告白』映画化上映事件」平成251122東京地方裁判所(平成25()13598

【コメント】本件は、漫画家である原告が、映画プロデューサー・映画監督等として活動している被告に対し、被告の製作・監督に係る短編映画「帰省」(「本件映画」)について、原告の許諾なく、原告の短編漫画である「彼女の告白」(「本件漫画」)を映画化し、映画祭において上映したなどと主張して、①著作権(二次的著作物に係る上映権)侵害のおそれを理由とする著作権法112条に基づく差止・廃棄請求として、本件映画の上映禁止、本件映画が記録された映画フィルム及び電磁的記録媒体の廃棄、②著作権(翻案権)及び著作者人格権(氏名表示権・同一性保持権)侵害を理由とする不法行為に基づく損害賠償請求として所定の金員の支払、③著作者人格権(氏名表示権・同一性保持権)侵害を理由とする同法115条に基づく名誉回復等の措置請求として、被告の運営するウェブページ等における謝罪文の掲載を求めた事案です。 


2 著作権法112条に基づく差止・廃棄請求の成否について
(1) まず,被告が,本件映画の原著作物(本件漫画)の著作者である原告の,本件映画に係る上映権を侵害したか否かについて検討する。
 上映とは,著作物(公衆送信されるものを除く。)を映写幕その他の物に映写することをいい(著作権法2117号),上映権は,著作物を公に上映する権利である(同法22条の2)。また,当該著作物が二次的著作物である場合には,原著作物の著作権者は,二次的著作物の上映権を有する(同法28条)。
 前記のとおり,本件映画は本件漫画の二次的著作物であり,原告は本件映画の上映権を有するから,原告の許諾なく本件映画を公に上映した場合には,原告の本件映画に係る上映権を侵害したことになる。
 原告は,被告の具体的な上映行為として,本件各映画祭における上映を主張する。確かに,被告が本件各映画祭に本件映画を出展し,本件各映画祭において,本件映画が上映されたことは認められる(前提事実)。
 
しかしながら,上記のとおり,上映とは,著作物を映写幕その他の物に映写することであるから,本件各映画祭において,その主催者ではなく,被告が本件映画を上映したとは直ちにいい難い
 この点,原告は,本件各映画祭では,被告の応募行為に対応して本件映画を上映したものであり,被告は,映画監督・製作者としての名声や入賞すれば賞金を得るなどの利益を享受するから,被告が上映行為の主体である旨主張する。しかしながら,被告の出展が本件各映画祭における上映の契機であることや,原告の主張する被告の利益を考慮したとしても,被告が本件各映画祭における上映の枢要な行為をしたとは認め難いし,その他これを認めるに足りる証拠もない。
 したがって,被告が本件各映画祭において本件映画を上映したとは認められないから,被告が原告の本件映画に係る上映権を侵害したとは認められない
(2) 続いて,被告が原告の本件映画に係る上映権を侵害するおそれについて検討する。
 (略)
 以上のとおり,被告は,上記の交渉において,本件映画が本件漫画の著作権(翻案権)を侵害することを争っており,これは本件訴訟においても変わらない。このような被告の対応に照らすと,被告が自ら本件映画を上映するおそれがあると認めるのが相当である。
 したがって,被告が原告の本件映画に係る上映権を侵害するおそれがあると認められる。
 なお,被告は,本件映画が記録されたフィルム及び電磁的記録媒体を廃棄してもよい旨主張するが,実際に廃棄は行われていないから,上映権侵害のおそれは否定されない。
(3) そして,本件映画の上映禁止や本件映画が記録された映画フィルム及び電磁的記録媒体の廃棄について,その必要性を否定する事情は見当たらないから,原告の著作権法1121項に基づく差止・廃棄請求はいずれも理由がある。
3 不法行為に基づく損害賠償請求の成否及び損害額について
(1) 原告は,不法行為に基づく損害賠償について,著作権(翻案権)及び著作者人格権(氏名表示権・同一性保持権)侵害を主張する。
 そして,前記1のとおり,本件映画は本件漫画を翻案(映画化)したものであるから,被告は,原告の本件漫画に係る翻案権を侵害したものである。
 また,本件映画は,本件漫画の翻案(映画化)に伴い,本件漫画を改変したものであるから,被告は,原告の本件漫画に係る同一性保持権を侵害したものである。
 
他方で,前記2(1)のとおり,被告が本件各映画祭において本件映画を上映したとは認められないから,当該上映に際して原告の氏名が表示されていなくとも,被告が原告の本件漫画に係る氏名表示権を侵害したとは認められない











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