著作権重要判例要旨[トップに戻る]







ブログ記事の漫画化に係る翻案性が問題となった事例
「風俗ライターブログ事件」平成251128日東京地方裁判所(平成24()3677 

【コメント】本件は、本訴において、原告・反訴被告(以下「原告」)が、被告・反訴原告(以下「被告」)らが漫画を掲載した雑誌を編集・発行したことが原告の著作物の著作権及び著作者人格権を侵害すると主張して、被告らに対し、不法行為による損害賠償請求権に基づく所定の金員の連帯支払、被告株式会社ジーオーティー(以下「被告GOT」)に対し、著作権法115条に基づく謝罪広告の掲載をそれぞれ求め、反訴において、被告らが、原告がブログに記事等を掲載したことが被告らの名誉・信用を毀損したと主張して、原告に対し、不法行為による損害賠償請求権に基づく所定の金員の支払並びに名誉権に基づく記事等の削除を求めた事案です。

1 本訴
(1) 原告の著作権の侵害の成否について
ア 原告記事1について
() 原告記事1の場面の流れと被告漫画1の場面の流れは,ほぼ共通し,同一性があるが,これはあらすじという表現それ自体でない部分において同一性があるにすぎないから,被告漫画1各記述が原告記事1各記述を翻案したものであるということはできない
() そこで,原告記事1各記述と被告漫画1各記述とを対比する。
a 原告記事1記述2は,風俗サービスに関する詳細な説明を記述しているのに対し,被告漫画1記述2は,主人公の短い発言のみを記述しているのであって,両記述は同一性がない。
b 原告記事1記述3ないし6は,極めて短く,筆者の個性が現れているとみることはできないから,被告漫画1記述3ないし6の記述と同一性があるとしても,表現上の創作性がない。
c 被告漫画1記述7と原告記事1記述7とは,相部屋の男性と会話したことやその会話の内容がほぼ共通し,同一性がある。原告記事1記述7は,相部屋の男性とのやりとりを創作的に表現したものであり,被告漫画1記述7は,原告記事1記述7の表現上の本質的特徴の同一性を維持し,被告漫画1記述7を一読しただけで,その特徴を直接感得することができる
d 原告記事1記述8ないし10は,極めて短く,筆者の個性が現れているとみることはできないから,被告漫画1記述8ないし10の記述と同一性があるとしても,表現上の創作性がない。
e 被告漫画1記述11と原告記事1記述11とは,露天風呂での場面を記述している点及びその著述の順序でほぼ共通し,同一性がある。原告記事1記述11は,露天風呂の場面を創作的に表現したものであり,被告漫画1記述11は,原告記事1記述11の表現上の本質的特徴の同一性を維持し,被告漫画1記述11を一読しただけで,その特徴を直接感得することができる
f 原告記事1記述12は,極めて短く,筆者の個性が現れているとみることはできないから,被告漫画1記述12の記述と同一性があるとしても,表現上の創作性がない。
g 被告漫画1と原告記事1記述13とは,主人公が深夜までセックス三昧の時間が続いたことを記述する点でほぼ共通し,同一性がある。しかし,これは情景を表現したものとしてありふれたもので表現上の創作性はない。
() そうすると,被告漫画1記述7及び11は,原告記事1記述7及び11を翻案したものということができるが,被告漫画1のその余の記述は,原告記事1のその余の記述を翻案したものということはできない。
イ 原告記事2について
() 原告記事2の場面の流れと被告漫画2の場面の流れは,ほぼ共通するが,これはあらすじという表現それ自体でない部分において共通するにすぎないから,被告漫画2各記述が原告記事2各記述を翻案したものであるということはできない
() そこで,原告記事2各記述と被告漫画2各記述とを対比する。
a 被告漫画2記述2と原告記事2記述2とは,主人公が夕刊紙に見慣れない広告を見つけたことを記述する点でほぼ共通し,同一性がある。しかし,これは,情景を表現したものとしてありふれたもので,表現上の創作性はない。
b 被告漫画2記述3と原告記事2記述3とは,主催者が女性のパンティーオークションをする旨発言したことを記述する点でほぼ共通し,同一性がある。しかし,これは,情景を表現したものとしてありふれたもので,表現上の創作性がない。
c 被告漫画2記述4と原告記事2記述4とは,主人公が精算を済ませるとバスタオルを渡されて,簡単な注意を受けたことを記述する点でほぼ共通し,同一性がある。しかし,これは,情景を表現したものとしてありふれたもので,表現上の創作性がない。
d 被告漫画2記述5と原告記事2記述5とは,主人公が女性の尻をなで回したこと,下着ごしに女性の性器を指で触ると下着にしみができたことを記述する点でほぼ共通し,同一性がある。これらは,風俗サービスの内容を創作的に表現したものであり,被告漫画2記述5は,原告記事2記述5の表現上の本質的特徴の同一性を維持し,被告漫画2記述5を一読しただけで,その特徴を直接感得することができる
e 被告漫画2記述6と原告記事2記述6とは,主人公が周囲の声に応えてパンティーを頭から被ったこと,恥ずかしいという心情が記述されている点でほぼ共通し,同一性がある。これらは,風俗サービスの内容,主人公の心情を創作的に表現したものであり,被告漫画2記述6は,原告記事2記述6の表現上の本質的特徴の同一性を維持し,被告漫画2記述6を一読しただけで,その特徴を直接感得することができる
f 被告漫画2記述7と原告記事2記述7とは,主人公と女性がシックスナインの状態にあることを記述する点でほぼ共通し,同一性がある。しかし,これは情景を表現したものとしてありふれたもので,表現上の創作性がない。
g 被告漫画2記述8と被告漫画2記述8とは,主人公のほか,見ていた2人の男が乱入したことを記述する点でほぼ共通し,同一性がある。しかし,これは,情景を表現したものとしてありふれたもので,表現上の創作性がない。
() そうすると,被告漫画2記述5及び6は,原告記事2記述5及び6を翻案したものということができるが,被告漫画2のその余の記述は,原告記事2のその余の記述を翻案したものということはできない。
ウ したがって,被告らは,被告漫画1記述7及び11を不可分的に有する被告漫画1を掲載した本件雑誌平成231月号を編集,発行し,被告漫画2記述5及び6を不可分的に有する被告漫画2を掲載した本件雑誌平成236月号を編集,発行し,これにより,原告の原告記事1及び2の著作権(翻案権)を侵害したものと認められる。
(2) 原告の著作者人格権の侵害の成否について
ア 原告記事1について
 被告漫画1は,原告の著作物を原著作物とする二次的著作物を含むところ,被告らは,本件雑誌の平成231月号の編集,発行に際し,被告漫画1に原告の氏名を著作者として表示しなかったから,被告らは原告の氏名表示権を侵害したと認められる
 また,被告漫画1記述7及び11は,原告記事1記述7及び11について,漫画にする方法により,原告の著作物における表現上の本質的特徴を維持しつつその外面的な表現形式に改変を加えて記述されたものであり,被告らは,被告漫画1を掲載した雑誌を編集,発行したから,原告の同一性保持権を侵害したと認められる
イ 原告記事2について
 被告漫画2は,原告の著作物を原著作物とする二次的著作物を含むところ,被告らは,本件雑誌の平成236月号の編集,発行に際し,被告漫画2に原告の氏名を著作者として表示しなかったから,被告らは原告の氏名表示権を侵害したと認められる。
 また,被告漫画2記述5及び6は,原告記事2記述5及び6について,漫画にする方法により,原告の著作物における表現上の本質的特徴を維持しつつその外面的な表現形式に改変を加えて記述されたものであり,被告らは,被告漫画2を掲載した雑誌を編集,発行したから,原告の同一性保持権を侵害したと認められる。
(3) 被告らの故意又は過失の有無について
 …によれば,本件ブログは「Yahoo!検索」,「Google検索」において「三行広告」のキーワードで検索すると検索結果の6番目に表示されることが認められるから,被告らは,Aから被告漫画1及び2の提供を受けるに当たり,その記述をインターネットで検索するなどして調査すれば,被告漫画1及び2の記述の中に原告記事1及び2に似た記述があることを知ることができたと認められる。それにもかかわらず,被告らは調査を怠ったのであるから,被告らには,原告記事の著作権及び著作者人格権を侵害したことについて過失がある
(4) 原告が受けた損害の額について
ア …によれば,被告ジップスがライターに支払う原稿料は1頁あたり5000円であることが認められるところ,被告漫画1記述7及び11は頁数で1頁を超えるものではなく,被告漫画2記述5及び6は,頁数で1頁を超えるものではないことが認められる。
 そうすると,原告が原告記事1及び2の著作権行使につき受けるべき金銭の額は,1万円を超えるものではないと認められる。
イ 原告は,被告らによる原告記事1及び2の著作者人格権侵害行為により精神的苦痛を被ったものであり,本件に現れた一切の事情を考慮すれば,その精神的苦痛に対する慰謝料の額は5万円とするのが相当である。
ウ 本件事案の内容,審理経過,前記認容額その他諸般の事情を考慮すると,被告らの侵害行為と相当因果関係にある弁護士費用の額は6000円とするのが相当である。
(5) 謝罪広告の要否について
 被告らの著作者人格権侵害行為により,原告の社会的声望名誉が毀損されたことを認めるに足りる証拠はない。
(6) 以上によれば,本訴は,原告の損害賠償請求のうち66000円の支払を求める限度で理由があるが,その余は理由がない。











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