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口述権侵害を否定した事例(2)
「祈願経文読誦事件」平成251213日東京地方裁判所(平成24()24933等) 

(2) 以上の事実を前提に,被告Bによる本件経文@ないしBの著作権(口述権)侵害の成否について検討する。
ア 著作者は,その言語の著作物を公に口述する権利を専有するところ(著作権法24条),「公に」とは,その著作物を,公衆に直接見せ又は聞かせることを目的とすることをいい(同法22条),「公衆」には,不特定の者のほか,特定かつ多数の者が含まれる(同法25項)。そして,当該著作物の利用が公衆に対するものであるか否かは,事前の人的結合関係の強弱に加え,著作物の種類・性質や利用態様等も考慮し,社会通念に従って判断するのが相当である。
イ そこで本件についてみると,被告Bが,「心検」の受講者等のうち,Eの勧めを受けて被告Bのもとを訪れた者の一部に対し,本件経文@ないしBを読み上げたことがあり(以下,本件経文@ないしBの読上げを「祈願」ということがある。),また,本件経文@ないしBを一人で又は被告Cとともに読み上げたことがあることは前記でみたとおりであるところ,上記行為は,いずれも,言語の著作物である本件経文@ないしBを口頭で伝達するものとして,「口述」(著作権法2118号)に該当する。
ウ しかし,上記イの口述のうち,後者(被告Bのみ又は被告C2人による読上げ)については,自宅内において,被告Bのみで又はその妻である被告Cと二人で行われたものであるから,上記口述が,公衆に直接聞かせることを目的として行われたものとは認められない
 したがって,上記読上げが「公に」なされたものと認められない以上,上記読上げが,本件経文@ないしBに係る原告の口述権を侵害するものとは認められない。
エ 次に,上記イの口述のうち,前者(被告Bが,同被告のもとを訪れた者に対し,本件経文@ないしBを読み上げたこと)が,本件経文@ないしBを「公に」口述したものとして,口述権侵害を構成するか否かについて検討する。
() 被告Bは,上記(1)のとおり祈願を行った人数について,Eから紹介を受けた5名のみであると述べている。他方,Eは,被告Bのもとを訪れて相談を受けるよう勧め,相談者からEが相談料金を受け取り,そこから紹介料を差し引いて被告Bに渡した人数につき,「心検」受講者について5名であり,それ以外に相談者が被告Bに直接相談料を支払った者が1名であるかのようにも受け取れる証言をしている。しかし,いずれにせよ,祈願を受けた人数は56名にとどまる。
 原告は,この点について,被告Bが,多数の者を対象として本件経文の読み上げを行ったと主張し,原告信者らの陳述書を提出する。しかし,上記陳述書の作成者のうち,自らが被告Bの祈願を受けたとする者は降霊会等への参加者を含めて4名である。
 以上によれば,被告Bが祈願を行った人数は56名にとどまるとみるべきであって,被告Bが多数人に対して祈願を行い,本件経文@ないしBを読み上げたものと認めることはできない
() この点に関し,原告は,上記読上げの時点における同席者が特定の少数人であったとしても,任意の条件の下に人数が増減する可能性があれば,不特定の者を対象にするものとして「公に」を充足するし,「公に」の要件が,排他的権利が及ぶ著作物の利用範囲を適切に画することにあるところから,当該行為が有償でなされたものであることは,私的領域の範囲を超えるものとして,「公に」の充足性についての重要な判断基準となると主張する。
 しかし,上記陳述書において,被告Bの祈願を受けたとされる者は,いずれもEから心検の「課外授業」等として被告Bの紹介を受けた者か,被告Bの子の友人等,被告Bと個人的な関係のある者として記載されているのであって,被告Bが,このような範囲を超えた者に対し,本件経文の読み上げを行ったことを認めるに足りるものではない。そうすると,祈願の対象となった範囲の者は限定されているのであって,原告が主張するように任意の条件の下に人数が増減するような範囲の者ではないというべきである。
 したがって,この点についての原告の主張を採用することはできない。
 さらに,前記(1)のとおり,被告Bは,同被告のもとを訪れた者から金員を受け取っていたことが認められるが,Eによれば,上記金員は,相談料名目で支払われたものであり,祈願を行うか否かによってその金額が上下するものではないとされる上,被告Bは,上記のとおり,実際に1時間から2時間程度,相談者の話を聞くなどしていたというのであるから,上記金員は,来訪者の話を聞き,相談に乗ることなどの対価として支払われたものとみるべきであり,これを祈願の対価と評価することはできないものというべきである。
 そして,原告信者らの陳述書をみても,上記の相談料名目の金員とは別に,祈願の対価として金銭を支払った旨の陳述をするものはみられず,かえって,祈願の対価を支払ったことはない旨記載したものがみられるのであるから,被告Bが,上記金員とは別に,祈願を受けた者からその対価を受領していたものとは認められない。なお,Gの陳述書中には,被告Bが「30万円の,精舎でしかやれない経営系の祈願を5万円でやってあげると言うと,喜んでどんどん受ける人たちがいる」旨の被告Bの発言を聞いた旨の部分があるが,被告Bが対価を受領して本件経文@ないしBの祈願を行っていたことを具体的に裏付けるに足りるものではない。
 したがって,対価の受領を理由として「不特定」であるとする原告の主張も採用することはできない
() 原告は,本件経文@ないしBの読み上げは,定期的かつ継続的に行われたものであるから,不特定の者に対してされたものであるとも主張する。
 被告Bは,本件経文@ないしBの読み上げを行った回数に関し,本件経文@につき10回程度,本件経文Aにつき1回,本件経文Bにつき5回程度にとどまるものと供述しているところ,上記供述は,被告Cの供述と概ね一致するものである。そして,前記原告が提出する陳述書によっても,被告Bの供述する上記回数が不自然なものとは認められない。したがって,本件経文@ないしBの読み上げ回数は被告Bの供述のとおりであると認められる。
 以上の事実に基づいて検討するに,被告Bが,上記カウンセリングを行うに際し,必ず本件経文の読み上げを行っていたものとは認められず,被告Bが必要であると感じた際に本件経文を読み上げたものと認められるにとどまることや,その延べ回数が,上記のとおり,本件経文のうち,多いものでも10回程度にとどまるものであることを考慮すれば,上記読み上げが,定期的かつ継続的になされたものと評価することはできない。
 したがって,この点についての原告の主張も採用することができない。
 このほかに,被告Bが「不特定」の者に対して本件経文@ないしBを読み上げたことを認めるに足りる証拠はない。
() したがって,被告Bが,同被告のもとを訪れた者に対し,本件経文@ないしBを読み上げたことが,本件経文@ないしBを「公に」口述したものに当たるとは認められず,口述権侵害に当たるものとはいえない。
(3) 以上によれば,被告Bにつき,本件経文@ないしBの口述権侵害は成立しないから,被告Bに対する本件経文@ないしBの口述の差止請求及び専ら口述権侵害行為に供された器具としての本件経文@ないしBの複製物の廃棄請求はいずれも認められない。











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