著作権重要判例要旨[トップに戻る]







寄附行為による著作権の譲渡を認めた事例
「『聖経 甘露の法雨』利用契約事件」平成27428日知的財産高等裁判所(平成25()10109

【コメント】
以下の「前提事実」参照:
(2) 控訴人は,亡Aの宗教的信念に基づき,困窮家庭の援護,社会福祉施設の経営等を目的として,昭和2118日に設立された財団法人(平成2441日,公益財団法人に移行)であり,亡Aが設立者として寄附行為を行い,東京都長官の許可を受けて設立された。
 控訴人の書面としての寄附行為である「財団法人生長の家社会事業団寄附行為」には,控訴人の基本資産として「A著作「生命の實相」ノ著作権」が,流動資産として「基本資産ヨリ生スル収入」が規定され(5条),また,基本資産は社会環境の自然的変化による減価滅失等による外,人為的には消費又は消滅せしめることを得ない旨(7条),控訴人の経費は流動資産をもって支弁する旨(9条)規定されている。
 そして,亡Aが作成した昭和2281日付け「證明書」には,「A著作「生命の實相」ノ著作権」を昭和2118日控訴人へ寄附行為したことを証明する旨の記載がある。
 なお,上記寄附行為は,その後,主務官庁の認可を経て変更されており,そこでは,控訴人の資産として,「A著「生命の實相」等の著作権」,「資産から生ずる収入」と規定されている(5条)。』 


2 控訴人は本件原著作物の著作権を有するか否かについて
(1) 控訴人は,本件原著作物1(「聖経 甘露の法雨」)に係る著作権は,著作権法27条及び28条に規定する権利を含めて亡Aの寄附行為により控訴人に帰属し,本件原著作物2及び3に係る著作権は,同法27条及び28条に規定する権利を含めて,それぞれその初版発行日に亡Aから控訴人への寄附により控訴人に帰属した旨主張する。
(2) 本件原著作物の著作権の帰属について
ア 本件原著作物1について
() 前記認定事実によれば,亡Aが保有していた「生命の實相」の題号を付して戦前に出版された10書籍の著作物に係る著作権は,亡Aが行った控訴人の設立行為の寄附財産であって,昭和2118日に控訴人が設立されたことにより,亡Aから控訴人へ移転し,控訴人の基本資産となったものと認められる。
 そして,前記記載のとおり,本件原著作物1(「聖経 甘露の法雨」)は,亡Aが創作した著作物であり,昭和12年頃に発行された「生命の實相」中に収録されていたものであるから,控訴人の設立により,その基本資産となった「生命の實相」に含まれる著作物であるといえる。
() また,寄附行為には,控訴人の基本資産として「A著作「生命の實相」ノ著作権」が,流動資産として「基本資産ヨリ生スル収入」が規定され(5条),基本資産は社会環境の自然的変化による減価滅失等による外,人為的には消費又は消滅せしめることを得ない旨(7条),控訴人の経費は流動資産をもって支弁する旨(9条)規定されていたこと,寄附行為や亡A作成に係る「證明書」には,「生命の實相」に係る著作権そのものではなく,著作権収入を取得する権利のみを寄附財産とする意思であったことをうかがわせるような記載はないことからすれば,控訴人の設立によりその基本資産となった権利は,著作権収入を取得する権利に限られるものではなく,これを含めて,「生命の實相」に係る著作権そのものであったと認められる。
() さらに,寄附行為や亡A作成に係る「證明書」には,寄附行為による移転の対象とする著作権を特定の支分権に限る旨の記載はないことに加え,前記認定のとおり,亡Aの死亡後,生長の家の常任理事会において本件原著作物1に係る著作権等の帰属が不明確であるとの意見があったため,これを明確にする目的で弁護士から鑑定意見の提出を受けるなどの経過を踏まえた上,控訴人と亡Aの相続人ら(代表行使者B)との間で,本件原著作物に係る著作権が,著作権法27条に定める翻訳権,翻案権等及び同法28条に定める二次的著作物利用に関する原著作者の権利を含めて全て亡Aから控訴人に基本財産と指定して寄附され,控訴人に帰属していることを確認する旨の確認書が作成されたこと,控訴人と亡Aの相続人ら(代表行使者B)との間で,本件原著作物の著作権譲渡日についての「覚書」を作成後,控訴人及び亡Aの相続人らは,F弁護士を代理人として,本件原著作物について著作権の譲渡登録の申請をし,本件原著作物1につき,昭和2118日に亡Aから控訴人に著作権(著作権法27条及び28条に規定する権利を含む)の譲渡があったことを原因とする,昭和63427日付け著作権の譲渡登録が,本件原著作物2につき,昭和231210日に亡Aから控訴人に著作権(著作権法27条及び28条に規定する権利を含む)の譲渡があったことを原因とする,昭和63427日付け著作権の譲渡登録が,本件原著作物3につき,昭和251220日に亡Aから控訴人に著作権(著作権法27条及び28条に規定する権利を含む)の譲渡があったことを原因とする,昭和63427日付け著作権の譲渡登録が,それぞれされたことに照らせば,控訴人の設立によりその基本資産となった権利は,著作権法27条及び28条に規定する権利を含めた「生命の實相」に係る著作権の全てであると認められる。
() 以上のとおり,本件原著作物1に係る著作権(著作権法27条及び28条に規定する権利を含む。)は,昭和2118日,亡Aから控訴人への譲渡により,控訴人に帰属したものと認められる
イ 本件原著作物2及び3について
 (略)
(3) 被控訴人の主張について
ア 被控訴人は,亡Aが,控訴人の設立趣意書に「恒久的流動資金として「生命の實相」の著作権収入を寄付行為す。」と記載したこと等を根拠に,亡Aが寄附行為により控訴人に移転した権利は,著作権ではなく「著作権収入」であったなどと主張する。
 しかしながら,亡A作成の「設立趣意書」中の「恒久的流動資金として,「生命の實相」の著作権収入を寄附行為す。」との記載は,前記記載の寄附行為の5条,7条及び9条の規定を前提とすれば,基本資産である「生命の實相」の著作権から得られる著作権使用料を「恒久的流動資金」と表現し,亡Aが「生命の實相」の著作権を基本資産を組成する寄附財産として出捐することを,著作権収入という観点から説明したものであると自然に理解することができる。
 そして,寄附行為や亡A作成に係る「證明書」には,「生命の實相」に係る著作権そのものではなく,著作権収入を取得する権利のみを寄附財産とする意思であったことをうかがわせるような記載はないことからすれば,前記記載のとおり,控訴人の設立によりその基本資産となった権利は,著作権収入を取得する権利に限られるものではなく,これを含めて,「生命の實相」に係る著作権そのものであったと認められる。
 
したがって,被控訴人の上記主張は理由がない。











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