著作権重要判例要旨[トップに戻る]







利用許諾契約の解釈(36)-契約の成立を否定した事例⑤-
「ソフトウェア著作権ライセンス契約確認等請求事件」平成27527日東京地方裁判所(平成27()2946/平成27101日知的財産高等裁判所(平成27()10082
 

【コメント】本件は、原告が、「著作権ライセンス契約(著作権使用許諾契約)」記載の著作権ライセンス契約(以下「本件契約」という。)を被告との間で締結したと主張して、被告に対し、本件契約が締結されていることの確認と、本件契約に基づく所定の著作権使用料の支払を求めた事案です。


【原審】

 当裁判所の判断
1 …によれば,次の各事実が認められる。
(1) 原告は,平成26923日付けで,被告に対し,被告との「契約終了」(ソフトウェアの継続的な発注及び納品という関係が終了することをいう。)に当たり,「今後当社ソフトウェアの著作権を●●様〔被告〕が使用するご意思がある場合,当社と著作権ライセンス契約(著作権使用許諾契約)を締結して頂く必要がございます。」,「著作権ライセンス契約の著作権使用料(ロイヤリティ)は月額150000円とし,著作権使用月の開始日までにお振込みにてお支払いいただきます。」などと記載された通知書を被告に送付した。
 これに対し,被告は,同年1010日付けで,原告に対し,被告が原告に「ロイヤリティ」なる金銭を支払うべき契約上ないし法律上の義務はなく,したがって原告の請求に応ずることはできない旨の回答書を送付した。
(2) 原告は,平成261013日付けで,被告に対し,被告は原告に「ロイヤリティ」を支払う義務がある旨を通知するとともに,同月26日付けで本件通知書を送付し,本件契約の規定を示した。
 これに対し,被告は,同月29日付けで,「貴社の主張は,およそ民法,民事訴訟法及び著作権法等関連法令を正解したものとはいえません。」,「貴社に対する回答は,当社の平成261010日付回答に尽きるものですから,本書面をもって,この点をあらためて通知します。」との回答書を送付した。
2 以上によれば,原告の本件契約の申込みを被告が承諾した事実については,これを認めるに足りず,かえって被告は同申込みを明示的に拒絶していることが明らかである。
 したがって,本件契約が締結されたとの原告の主張は,理由がない。
 この点に関して原告は,本件ソフトウェアの著作権は原告に帰属するところ,被告がこのうちいくつかを使用していることなどを指摘する。
 しかし,本件ソフトウェアの著作権の帰属については当事者間に争いがあるものの,この点を措くとしても,そもそも被告が原告に対してソフトウェアの発注をし,原告がこれを製作した上,被告又はその指定する納品先に納品して,報酬を受け取っていたというのであるから,被告又はその指定する納品先は,納品されたソフトウェアを当然に使用する権限を有しているものと解されるのであって(原告も,上記1(1)よりも前の時点においては,被告に対して著作権使用料等の支払を求めていなかった。),被告が本件ソフトウェアのうちいくつかを使用しているとの事実をもって,原告と被告が本件契約を締結したことの証左とすることはできない
3 よって,その余の点について判断するまでもなく,本訴請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。

【控訴審】

1 当裁判所も,控訴人の本訴請求はいずれも理由がないものと判断する。その理由は,…下記3のとおり,当審における控訴人の主張に対する判断を付加するほかは,原判決…記載のとおりであるから,これを引用する。
 (略)
3 当審における控訴人の主張に対する判断
(1) 控訴人は,本件ソフトウェアのうち番号1ないし9記載のソフトウェアの著作権者である控訴人は,これらのソフトウェアについて,被控訴人にソフトウェアの改変及び譲渡・貸与等のビジネスを行う意思(著作権を使用する意思)の有無を確認する権利を有し,これに対して,被控訴人は,これらの行為を行う意思がある場合,著作権ライセンス契約を締結する義務がある旨主張する。
 しかし,控訴人及び被控訴人に,控訴人主張にかかる権利及び義務がそれぞれ存することを認めるに足りる法令上又は当事者間の合意等の根拠の主張立証はなく,控訴人の上記主張は,採用することができない。
(2) また,控訴人は,著作権者である控訴人は,ソフトウェアの改変及び譲渡・貸与等のビジネスを行う意思(著作権を使用する意思)の有無について明確な回答がない場合,被控訴人がこれらの行為を行う意思があるとみなすとの通知を行っていることから,被控訴人が著作権ライセンス契約を締結したくなければ,ソフトウェアの改変及び譲渡・貸与等のビジネスを行わない意思(著作権を使用しない意思)を示す必要があったにもかかわらず,被控訴人が,ソフトウェアの改変及び譲渡・貸与等のビジネスを行わない意思を示さなかった事実は,控訴人と被控訴人間の著作権ライセンス契約締結の証左となる旨主張する。
 確かに,控訴人は,被控訴人に対し,平成26923日付けで,「今後当社ソフトウェアの著作権を●●様〔被控訴人〕が使用するご意思がある場合,当社と著作権ライセンス契約(著作権使用許諾契約)を締結して頂く必要がございます。著作権ライセンス契約の著作権使用料(ロイヤリティ)は月額150000円とし,著作権使用月の開始日までにお振込みにてお支払いいただきます。」,「●●様が当社ソフトウェアの著作権をご使用する意思の表示は,平成26103日(金)までとさせていただきます。平成26103日(金)までにご意思の表示がない場合は,自動的に著作権ライセンス契約(著作権使用許諾契約)を締結する意思があるとみなします。」などと記載された通知書を送付した。また,控訴人は,被控訴人に対し,同年1026日付けで,「貴社に当社からの依頼書にご回答の意思がないものとして以下に申し述べます。ここにおいて,「沈黙は相手の主張を認めることと同等」とする訴訟上の原則に従い,当社技術者が作成したソフトウェアの著作権はすべて当社にあることを貴社が認めたものとします。また,貴社にその著作権を使用する意思がある,あるいは,現在著作権を使用しているものと解釈します。」,「上記を理由として,ここで「著作権ライセンス契約(著作権使用許諾契約)」が成立したものとします。」などと記載された本件通知書を送付した。
 しかし,控訴人の上記各通知に対して,被控訴人がこれに回答すべき義務があることや,これに回答しなかった場合に本件契約が締結されたものとみなされるべき法令上又は当事者間の合意等の根拠の主張立証はない上,前記認定のとおり,被控訴人は,同年1010日付けの回答書及び同月29日付け通知書において,控訴人の上記各通知に対して,明示的に拒絶していることは明らかであるから,控訴人の上記主張も,採用することができない
4 結論
 
以上のとおりであるから,その余の点について判断するまでもなく,控訴人の被控訴人に対する請求はいずれも理由がない。したがって,控訴人の本訴請求をいずれも棄却した原判決は相当である。











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