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ソフトウェア開発委託契約につき当該ソフトのソースコード引渡し義務を否定した事例
「テスト自動作成ソフト開発委託契約事件」
平成26612日大阪地方裁判所(平成26()845 

【コメント】本件は、原告が、被告に対し開発を委託したソフトウェアに関し、当該ソフトウェアのソースコードを引き渡すべき契約上の義務を怠った債務不履行があるとして、債務不履行に基づく損害賠償と損害賠償の請求の日である本訴状送達日の翌日からの遅延損害金の支払を求めた事案です。
 なお、本件において、原告から被告に対し本件ソフトウェアの開発を依頼し、被告はこれに応じることとしましたが、「この際,契約書等は作成されず,また,開発言語に関し,原告からの指定等は特になかった」と事実認定されています。


 本件委託契約上,被告が,本件ソースコードを原告に引き渡すべき義務を負うかについての判断
1)本件委託契約の履行に伴う著作権移転の合意の不存在
 原告の主張は,本件委託契約に基づき,本件ソフトウェア及び本件ソースコードの著作権の譲渡が合意され,これに伴い,ソースコードの引渡義務も発生するというものである。
 前記によると,被告が,本件ソースコードを制作したものであり,本件ソースコードの著作権は原始的に被告に帰属していると認めることができる。
 その一方で,前記の見積書等,原告と被告との間で取り交わされた書面において,本件ソフトウェアや本件ソースコードの著作権の移転について定めたものは何等存在しない
 前記のとおり,被告は,原告に対し,本件ソースコードの開示や引渡しをしたことはなく,原告から本件ソースコードの引渡しを求められたが,これに応じていない。
 また,原告にしても,平成2311月に至るまで,被告に対し,本件ソースコードの提供を求めたことがなかっただけでなく,前記のとおり,原告担当者は,被告に,本件ソースコードの提供ができるかどうか問い合わせているのであり,原告担当者も,上記提供が契約上の義務でなかったと認識していたといえる。
 以上によると,被告が,原告に対し,本件ソースコードの著作権を譲渡したり,その引渡しをしたりすることを合意したと認めることはできず,むしろ,そのような合意はなかったと認めるのが相当である。
 なお,この点について,原告は,継続的契約であったから本件ソースコードの引渡しを求める必要がなかったと反論するが,後記(3)のとおり,継続的契約であることを前提とする主張には理由がない。
2)ヘルプファイルにおける著作権表示と甲第15号証
 原告は,前記の事情から,本件ソースコードについても原告が権利を取得した旨を主張するが,本件パッケージソフトウェアのヘルプファイルに示された著作権表示をもって,本件ソースコードの著作者を推定するものとはいえない。  また,本件ソースコードの著作権が原始的に被告に帰属し,かつ,これが原告に移転していないことは上記(1)のとおりであり,上記ヘルプファイルに示された著作権表示をもって,原告が本件ソースコードに対する権利者であることの根拠とすることはできない。
 また,甲第15号証の電子メールにおいて,被告は,上記ヘルプファイルの表示を了承した旨記載しているが,このことをもって,被告が原告に対し本件ソースコードや本件ソフトウェアの著作権を原告に譲渡・処分する旨の意思表示をしたとみることはできない。せいぜい,被告が,原告に対し,本件ソフトウェアを複製することを許諾していることを表示するのみというべきである。
3)継続的契約関係の下における損害発生防止(減少)義務
 原告は,ソフトウェア開発の当初から,被告において,本件ソフトウェアを継続的にアップデートすることが予定されており,このような継続的契約関係においては,損害発生防止ないし減少義務の履行として,本件ソースコードの引渡義務を負うと主張する。
 しかし,前記における一連の取引は,発注の都度,原被告間に個別の業務委託契約が成立し,被告の納品した成果物に対し,検収を経て原告が報酬を支払うことによって本旨履行が終了したものというべきであり,それ以上のものとは認められないというべきである(継続的契約におけるような,基本契約の締結があったことを認めるに足りる証拠は何らない。)。
 また,前記のとおり,被告は,本件ソフトウェアが最新のオペレーションシステムに対応していないことを言明しており,永続的なアップデートの約束がされたことと相容れない状況となっている。
 すなわち,本件委託契約は,事実上継続して取引があったにすぎず,継続的契約関係とも認められない(保守契約が結ばれたことさえ,これを認めるに足りない。)から,被告が,原告のいうような損害発生防止,軽減義務を負うこともない。原告の上記主張には理由がない。
4)まとめ
 
そうすると,本件委託契約上,本件ソースコードの原告への引渡しが被告の義務とされていたと認めることはできないし,同様の義務の発生を認めるだけの契約関係にあったと認めることもできない。











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