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利用許諾契約の解釈(37)-再リースの承認の有無が争点となった事例-
「プログラム使用許諾権設定契約事件」平成261029日東京地方裁判所(平成25()32154
 

【コメント】本件は、ソフトウェアプログラム(「本件ソフトウェア」=自動車整備業務において売上管理や顧客管理等を行うソフトウェアの著作権者である原告が、リース業者である被告に対し、所定の不当利得金(被告がユーザーから受領した再リース料相当額)等の支払を求めた事案です。

 なお、本件における「前提事実」として以下参照:
(3) 本件直接契約
ア 原告は,平成1949日,「林兼石油」に対し,パソコン等のハードウェアを販売するとともに,本件ソフトウェアの使用を非独占的に許諾する契約(以下「本件直接契約」という。)を締結した。
イ 原告と林兼石油は,平成2445日,本件直接契約に基づく本件ソフトウェアの使用許諾の期間が5年間であることを前提とした上で,同契約の期間を1年間更新する旨の合意をし,原告は,林兼石油から,その対価として343875円(消費税込み)を受領した。
ウ その後,原告は,林兼石油から,本件ソフトウェア使用の対価を原告と被告に二重払いしているとの申立てを受けて,上記イの343875円を林兼石油に返金した。
(4) 本件使用許諾権設定契約
ア 原告は,平成19412日,住信リースからの注文書による申込みに対し,注文請書によりこれを承諾して,住信リースに対し,本件ソフトウェアの使用を非独占的に許諾し,住信リースが林兼石油と締結するリース契約に基づき,リース期間中,林兼石油に本件ソフトウェアをリースすることを承認する契約(以下「本件使用許諾権設定契約」という。)を締結した。
イ 被告は,平成2241日,住信リースを吸収合併したことにより,本件使用許諾権設定契約に係る住信リースの契約上の地位を包括的に承継した。
(5) 本件リース契約
ア 住信リースは,平成19412日,林兼石油に対し,本件ソフトウェアを含む物件5点を,同月20日から5年間リースする旨のリース契約(以下「本件リース契約」という。)を締結した。
イ 被告は,平成2241日,住信リースを吸収合併したことにより,本件リース契約に係る住信リースの契約上の地位を包括的に承継した。
ウ 被告と林兼石油は,平成244月頃,本件リース契約の期間を1年間更新する旨の合意をし,被告は林兼石油から平成24年分の再リース料を収受した。
エ 被告と林兼石油は,平成254月頃,本件リース契約の期間を更に1年間更新する合意をし,被告は,林兼石油から平成25年分の再リース料を収受した。
オ 林兼石油は,平成26122日,被告に対し本件リース契約を更新せず終了させる旨の通知をし,本件リース契約は,同年419日の満了をもって終了した。』


1 不当利得返還請求について
(1) 証拠によれば,被告が本件ソフトウェアに関して林兼石油から収受した再リース料は,合計182448円(消費税別。消費税込みでは191570円。)であることが認められ,被告がそれ以上の利得を得たと認めるべき証拠はない。
(2) 上記金員は,形式的には被告と林兼石油との間の本件リース契約に基づいて収受したものであるが,仮にこれが原告から適法に再リース権限を取得していないのに林兼石油に再リースして得たものであるとすれば,原告との関係においてはその利得が法律上の原因のないものとして原告に返還すべきものとなる可能性もあるため,上記各金員を収受した当時,被告が林兼石油に再リースする権限を有していたかにつき検討する。
(3) 本件使用許諾権設定契約のソフトウェア条項11項及び8条は,それぞれ,次のとおり規定している(大括弧内の記載及び下線は裁判所が付した。)。
 「売主[原告]は,買主[住信リース]にプログラム・プロダクト[本件ソフトウェア]の使用を非独占的に許諾し,買主が表記顧客[林兼石油](以下,「顧客」という。)と締結するリース契約(再リース契約を含む。以下,「リース契約」という。)に基づき,リース期間中及びその再リース期間中,顧客にプログラム・プロダクトをリースすることを承認します。」
 顧客より本プログラム・プロダクトの使用継続の要望がある間は売主は買主に対し使用許諾を継続するものとし,売主は予めこれを諒承するものとします。ただし,リース契約が終了した場合,使用権も同時に消滅するものとし,買主は顧客から受領する契約終了に関する書面の写しの売主に対する送付を省略するものとします。」
 そして,本件使用許諾権設定契約には,使用許諾期間に関する記載がなく,再リースの際,被告が原告に追加で支払うべき対価の定めもない
 以上によれば,本件使用許諾権設定契約は,被告に対する使用許諾及び再リースの承認の期間を当初の5年間に限ったものとは認められず,原告は,被告に対し,被告と顧客との間で本件リース契約が更新された場合にはその再リース期間を含めて,あらかじめ被告に対する本件ソフトウェアの使用許諾及び再リースを承認したものと認めるのが相当である。
(4) 原告の主張について
ア これに対し,原告は,本件リース契約は本件直接契約に附従するものであり,サプライヤーであるソフトウェアベンダー(原告)が,ユーザー(林兼石油)との合意により定めた使用許諾の内容を超えた使用許諾をリース会社(被告)に付与することなどあり得ない,などと主張する。
 しかし,まず,本件直接契約の約款73項には,本件ソフトウェアの使用許諾の有効期間に関し,「本条項は,甲[林兼石油]が乙[原告]から本件ソフトウェアを含むコンピュータシステムの引渡しを受けた時点で成立し,リースによる提供を受けた場合はそのリース契約期間が満了するまで,そうでない場合は,ソフトウェア使用許諾及び提供サービス締結から原則5年を経過するまで,有効に成立します。リース契約が満了した場合,または本ソフトウェア使用許諾及び提供サービス締結から原則5年を経過した場合に,甲[林兼石油]が引き続き本件ソフトウェアを使用する場合には,甲[林兼石油]と乙[原告]の間で1年ごとに再使用許諾契約を締結するものとします。この場合の再使用許諾金額はソフトウェア金額の6分の1以内とし,甲乙[林兼石油と原告]相互の協議により決定するものとします。」との規定があり(大括弧内の記載及び下線は裁判所が付した。以下「本件有効期間条項」という。),リースによる提供を受けた場合はそのリース契約期間が満了するまでとされていることが認められるから,当然に,当該使用許諾の期間が当初の5年に限られていると解されるものではない
イ また,本件有効期間条項にいう「リース契約期間」に再リース期間は含まれないとしても,一般に,プログラム・リース取引において,ユーザーとソフト会社との間で直接の使用許諾契約が必須とされるものではなく,ユーザーがリース会社からのみ使用許諾を受け,ソフト会社とは特段の契約関係を有しない形態も十分あり得るのであるから,プログラム・リース取引におけるリース会社とユーザーとの間のリース契約やリース会社とソフト会社との間の使用許諾契約が,ソフト会社とユーザーとの間の使用許諾契約に附従し,リース会社のリース権限が当然にその範囲に限定されるということはできない
ウ 原告は,本件ソフトウェアの使用許諾は使用期間に応じて金額が設定されているのであり,再リース(それも期限を付与しない永久の再リース)を認めた場合の代金が5年分の本件ソフトウェアの使用許諾金額と変わらないことなどあり得ない,被告の主張によれば,被告は,未来永劫,原告に何ら支払をせずに林兼石油に本件ソフトウェアを再リースし再リース料を得ることができることになるが,そのような結論は極めて不合理であってあり得ない,などと主張する。
 しかし,前記のとおり,そもそも,当然に,本件直接契約における本件ソフトウェアの使用許諾の期間が当初の5年間に限られていると解することはできないし,仮にこの点を措くとしても,リースを利用することは,サプライヤーである原告にとっても,@ユーザー確保の機会の拡充,Aプログラム使用料の支払確保,及びB商機の取得,といったメリットがあるのであるから,再リース期間を含む本件ソフトウェアの使用許諾及び再リース承認の対価が,本件直接契約における5年分の使用許諾の対価と同一であったとしても,必ずしも不合理とはいえない。
 少なくとも,本件使用許諾権設定契約は,使用許諾期間を5年間に限定しない文言の契約となっていたのであるから,原告は,これに不服であれば,使用許諾期間を限定した使用許諾契約を締結するか(現に,…,原告は,本件ソフトウェアとは別個のソフトウェアに関するリース取引に関し,被告との間で使用許諾期間を限定した使用許諾契約を締結している。),想定される再リースの対価を含めて対価の増額の交渉をすれば良かったのである。
(5) 以上によれば,原告の被告に対する使用許諾及びリースの承認は当初の5年間に限定されたものではなく,被告は,原告から再リースの承認を受けて適法に本件ソフトウェアを林兼石油に再リースして再リース料を収受したものであるから,その再リース料が原告との関係で不当利得を構成することはない。











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