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データベースの著作物の侵害性が問題となった事例
「旅行業システム事件」平成26314日東京地方裁判所(平成21()16019 

【コメント】本件は、原告が所定のデータベース部分(「原告CDDB」。なお、「CDDB」はCDで提供されるマスターテーブルによるデータベースの趣旨である。)を含む旅行業者向けシステム(「原告システム」)につき、その開発・営業等を担当していた旧原告会社の社員であった被告らが、旧原告会社を退職した後、被告会社に入社して所定の業務用データベース(「被告CDDB」)を含む旅行業者向けシステム(「被告システム」)を制作し、顧客らに販売するに当たり、被告システムに含まれる被告CDDBを複製・頒布等する行為について、(1)原告CDDBについて原告が有する著作権(複製権・翻案権・譲渡権・貸与権・公衆送信権)を侵害するものであるとして、著作権法1121項に基づき、被告らに対し、被告CDDBの複製・翻案・頒布・公衆送信(送信可能化を含む。)の差止め(請求の趣旨1項)、(2)著作権法1122項に基づき、被告らに対し、被告CDDBを格納したCD-ROM等の記録媒体の廃棄とその記録内容の消去(請求の趣旨2項)、(3)損害賠償として、被告らに対し、連帯して、主位的に、著作権法1141項、民法709条に基づき、予備的に一般不法行為として民法709条に基づき、所定の金員の支払をそれぞれ求めた事案です。

 次に,著作物の複製ないし翻案については,複製とは,印刷,写真,複写,録音,録画その他の方法により有形的に再製することをいうとされているところ(著作権法2115号),著作物の複製は,既存の著作物に依拠し,これと同一のものを作成し,又は,具体的な表現に修正,増減,変更等を加えても,新たに思想又は感情を創作的に表現することなく,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持し,これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできるものを作成する行為をいうと解される。
 また,著作物の翻案(著作権法27条)とは,既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいう(最高裁平成13628日第一小法廷判決参照)。
 そして,著作権法は,思想又は感情の創作的な表現を保護するものであるから(著作権法211号),既存の著作物に依拠して作成又は創作された著作物が,思想,感情若しくはアイデア,事実若しくは事件など表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において,既存の著作物と同一性を有するにすぎない場合には,複製にも翻案にも当たらないというべきである。
 データベースについては,情報の選択又は体系的な構成によって創作性を有するものは,著作物として保護されるものであるところ(著作権法12条の2),上記のとおり,データベースにおける創作性は,情報の選択又は体系的構成に,何らかの形で人間の創作活動の成果が表れ,制作者の個性が表れていることをもって足りるものあるが,データベースの著作物として保護されるのはあくまでも,具体的なデータベースに表現として表れた情報の選択や体系的構成であって,具体的な表現としての情報の選択や体系的構成と離れた情報の選択の方針や体系的構成の方針それ自体は保護の対象とはならないというべきである。
 (略)
 しかし,データベースの著作物として保護されるのは情報の選択ないし体系的構成において創作性を有するものであり,データないしレコード等それ自体を保護するものではない。そして,前記のデータベースが著作物として保護される理由,その著作物性の有無や複製及び翻案の判断基準に照らせば,例え,原告のデータベースと被告のデータベースとの間に情報の選択において共通点があり,その共通点において,原告データベースの表現としての創作性のある部分が一部含まれているとしても,両データベース全体を比較した場合に,その保有する情報量に大きな差があるため,情報の選択として創作性を有する共通部分がその一部にすぎず,相当部分が異なる場合には,もはや情報の選択においてその表現の本質的特徴を直接感得できると評価することはできず,また,原告のデータベースと被告のデータベースとの間に体系的構成において共通点があり,その共通点において,原告データベースの表現としての創作性のある部分が一部含まれているとしても,両データベース全体を比較した場合に,共通しないテーブル,フィールド項目が相当数を占め,また,それら相互間のリレーションの仕方にも大きな相違がみられるため,体系的な構成として創作性を有する共通部分がその一部にすぎず,相当部分が異なる場合には,体系的構成においてもその表現の本質的特徴を直接感得できるということはできないというべきであって,そのような場合,被告データベースはもはや,共通部分を有する原告データベースとは別個のデータベースであると認めるのが相当である。
 
そうすると,本件においては,前記のとおり,被告CDDB(新版)は,原告CDDBと比較して,情報の選択及び体系的構成において相当な相違が存在し,共通する部分を有する原告データベースとは別個のデータベースとなったものというべきであるから,原告CDDBからコピーしたレコード自体が残存しているとしても,もはや,両者が情報の選択及び体系的構成において類似していると評価することは相当でないというべきである。











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