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一般不法行為の成否-否認事例(36)-
「旅行業システム事件」平成26314日東京地方裁判所(平成21()16019

 一般不法行為の成否〔著作権侵害についての予備的主張〕について
(1) …なお,事案に鑑み,著作権侵害を認めない被告CDDB(新版)について,一般不法行為の成否についても検討し,判断を示すこととする。
 原告は,原告が費用や労力をかけて開発し,制作した原告CDDBにつき,その多数の部分を流用して被告CDDBを販売する行為は,先行者の築いた開発成果にいわばただ乗りする行為であって,取引における公正かつ自由な競争として許される範囲を逸脱するものとして不法行為を構成するというべきであると主張する。
 
しかし,著作権法は,著作物の利用について,一定の範囲の者に対し,一定の要件の下に独占的な利益を認めるとともに,その独占的な利益と国民の文化的生活の自由との調和を図る趣旨で,著作権の発生原因,内容,範囲,消滅原因等を定め,独占的な利益の及ぶ範囲,限界を明らかにしていることからすれば,ある著作物が同法による保護を受ける著作物に該当しないものである場合,当該著作物を独占的に利用する権利は法的保護の対象とはならないものと解すべきであるから,著作権法による保護を受けない著作物の利用行為は,同法の規律の対象とする著作物の利用による利益とは異なる法的に保護された利益を侵害するなどの特段の事情がない限り,不法行為を構成するものではないと解するのが相当である(最高裁平成23128日第一小法廷判決参照)。
 この観点から本件を検討すると,前記認定事実によれば,原告CDDBについての著作権侵害が認め難い被告CDDB(新版)については,体系的構成及び情報の選択のいずれについても原告CDDBとの同一性ないし類似性が認められないところであり,その情報の選択における判断において示したように,被告CDDB(新版)においては,原告CDDBから流用した情報の割合は,相当程度に低下している。
 確かに,原告の主張するとおり,被告CDDB(新版)においては,前記記載のとおり,原告CDDBから流用したものと推認されるレコードが存するものの,被告CDDB(新版)において,総レコード数からみた場合のこれら流用レコードの割合も相当に低いものとなっている。
 そうすると,原告が費用や労力をかけて作り上げた原告CDDBに関して主張する保護されるべき利益とは,結局,原告が著作権法によって保護されるべきと主張する法的利益,すなわち,原告CDDBの情報の選択方針や,情報内容それ自体といったアイデアや抽象的な特徴,ないし表現それ自体でないものに基づく利益と異なるものではないことになり,それらの点が著作権法によっては保護されないものであることは前記判示のとおりである。
 また,本件全証拠を精査し,原告システムからのリプレースをも目的とした営業活動がされていることを勘案しても,被告らが被告CDDBを含む被告システムを販売し,収益を得る行為が殊更原告に損害を与えることを目的として行われたなどの自由競争の範囲を逸脱する行為であると認めるに足りる事実も窺われない。
 そうすると,被告らが被告CDDBを販売等する行為には,著作権法の規律の対象とする著作物の利用とは異なる法的に保護された利益を侵害するなどの特段の事情は認められないというべきである。
 
したがって,被告らの上記行為については民法上の不法行為を構成するものではないと認めるのが相当であるから,著作権法上の請求が認められない被告CDDB(新版)に関して,一般不法行為の成立を理由に著作権侵害に係る損害と同額の損害の賠償を求める原告の予備的請求には理由がないというべきである。











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