著作権重要判例要旨[トップに戻る]







女性芸能人の人格権及び人格的利益の侵害を認定した事例(パブリシティ権侵害は認定せず)
「胸部イラスト合成写真事件」平成27129日東京地方裁判所(平成26()7213/平成2785日知的財産高等裁判所(平成27()10021
 

【コメント】本件は、被告会社が、原告らの肖像写真に裸の胸部(乳房)のイラストを合成した画像を用いた記事(「本件記事」)を掲載した本件雑誌を出版し、販売したことについて、原告らが、原告らのパブリシティ権並びに人格権及び人格的利益が侵害されたと主張して、(1)被告会社に対し、本件雑誌の印刷及び販売の差止め並びに廃棄を、(2)被告会社、その代表取締役であった「被告代表者」、発行人である「被告発行人」及び編集人である「被告編集人」に対し、被告発行人及び被告編集人につき民法709条、被告代表者につき民法709条又は会社法4291項、被告会社につき民法709条、715条又は会社法350条に基づく損害賠償金等の連帯支払を求めた事案です。

【原審】

※【 】…控訴審で補正された箇所。

1 争点(1)(パブリシティ権侵害の成否)について
(1) 個人の氏名,肖像等(以下,併せて「肖像等」という。)を無断で使用する行為は,①肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用する,②商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品等に付する,③肖像等を商品等の広告として使用するなど,専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とすると認められる場合に,パブリシティ権を侵害するものとして,不法行為法上違法となると解される(最高裁平成2422日第一小法廷判決参照)。
 原告らは,本件記事は肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用するもの(上記)であり,専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするから,パブリシティ権の侵害となる旨主張する。
(2) そこで判断するに,本件記事は,幅広く芸能活動を行って広く知られた原告らの肖像等を用いたものであるが,前記前提事実のとおり,裸の胸部のイラストを合成し,性的な表現を含むコメント等を付したものであり,肖像等そのものを鑑賞させることではなく,原告らを含む女性芸能人の乳房ないしヌードを読者に想像させる(妄想させる)ことを目的とするとみることができる。しかも,本件記事は,全248頁の本件雑誌中の巻末に近いモノクログラビア部分に掲載されたもので,表紙には取り上げられていない上,各原告の肖像等は1頁当たり9名又は10名のうち1名として掲載されるにとどまっている。これらの事情によれば,原告らのファン等が本件記事中の肖像写真を入手するために本件雑誌を購入することがあるとはおよそ考え難い。そうすると,本件記事に原告らの肖像等を無断で使用する行為は,上記の肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用するものとはいえず,また,上記以外の理由により専ら原告らの肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするものと認めることもできない。
 以上によれば,原告らの肖像等を用いた本件記事を本件雑誌に掲載する行為が原告らのパブリシティ権を侵害するとは認められない。
(3) したがって,パブリシティ権侵害に基づく原告らの請求は,その余の点について判断するまでもなく,理由がない。
2 争点(2)(人格権及び人格的利益の侵害の成否)について
(1) 原告らは,本件記事の氏名及び肖像の無断掲載は,原告らの人格権としての氏名権,肖像権及び名誉権並びに人格的利益としての名誉感情を侵害するものである旨主張する。
(2) そこで判断するに,本件記事の内容は前記前提事実及び別紙原告らの記事目録に記載のとおりである。これに加え,…によれば,本件記事の大部分は原告らを含む女性芸能人の顔を中心とした肖像と裸の胸部のイラストで占められていること,その肖像に合成された乳房のイラストは,その輪郭こそ実線で描かれているものの,複数の陰影を付けた画像を重ね合わせることにより写真であるかイラストであるかが容易に判別できない程度にまで精巧に作られたものであること,元になった肖像写真は服を着た状態の上半身を撮影したものであるが,上記裸の胸部のイラストは,服や地肌の陰影,体の曲線等に自然に適合するように合成されていること,本件記事中の原告らの肖像に付されたコメントは,各人の芸能活動における特徴的な言動等をパロディ化して女性の胸に関する性的な表現に改変したものであること,以上の事実が認められる。
 これら事実関係によれば,本件記事は,一見しただけで原告ら女性芸能人の肖像に裸の胸部のイラストを合成したものであると判別できるようなものではなく,少なくとも第一印象として原告ら女性芸能人が自らの乳房を露出しているかのような誤解や印象を読者に生じさせる可能性があるものである。このような表現行為が,肖像を無断で利用された女性に強い羞恥心や不快感を抱かせ,その自尊心を傷付けるものであることは明らかである。
 しかも,本件記事は,上記のような加工がされた肖像に,原告ら女性芸能人の芸能活動に関係する性的な表現を含むコメントや,露骨な性的関心事を評価項目とするレーダーチャートが付されたものを複数羅列したものであり,読者の性的な関心をかき立てて原告らの羞恥心等を生じさせるだけでなく,原告ら及びその芸能活動を揶揄することをも目的とするものということができる。
 以上からすれば,本件記事は,社会通念上受忍すべき限度を超えた侮辱行為により原告らの名誉感情を不当に侵害するものであり,かつ,受忍限度を超えた氏名及び肖像の使用に当たるというべきである。
(3) これに対し,被告らは,原告らは芸能人であるから,「社会生活上」ではなく「芸能活動をする上での」受忍限度を超えるかどうかが問題とされるべきであり,原告ら自身が芸能活動においてファンの性的な好奇心や関心,妄想を呼び起こすような言動をしていることなどからすれば,本件記事の内容は受忍限度の範囲内である旨主張する。
 そこで判断するに,原告らは芸能人であり,その芸能活動に関し,自らの意図と異なる態様でテレビ,雑誌等に取り上げられることも一定程度は許容していると解されるから,芸能人の人格権及び人格的利益の侵害については,一般人とは異なる基準で判断すべきものと解する余地はある。しかし,…によれば,原告らの中には胸の大きさ等を強調するなどの芸能活動をしたことがある者がいるものの,胸の大きさ等を映画やドラマの役柄やストーリー,プロモーションビデオ等で間接的に表現するものにとどまることが認められる。これに対し,本件記事は,第三者である被告会社が,読者に原告らの乳房又はヌードを妄想させることを目的として,原告らの肖像等を無断で利用して露骨な性的表現を意図的に作出したものであり,原告らが上記胸の大きさ等を強調するような芸能活動を行っていたことをもって,原告らにおいて本件記事のような内容の記事の掲載を受忍すべきと解する理由はないというべきである。
 したがって,被告らの上記主張は採用することができない。
(4) 以上によれば,本件記事を本件雑誌に掲載する行為は,原告らの人格権としての氏名権及び肖像権並びに人格的利益としての名誉感情を侵害するものとして,不法行為法上違法となると解するのが相当である。
3 争点(3)(被告らの責任)について
(1) 被告発行人及び被告編集人は,それぞれ本件雑誌の発行及び編集を行った者であり,その職務の性質上当然に本件記事が本件雑誌に掲載されること及びその内容を認識していたものと認められる。そして,前記で判示した本件記事の態様に照らせば,これが原告らの人格権及び人格的利益の侵害になることにつき上記被告らに過失があったとみるべきものである。したがって,これに反する同被告らの主張は採用することができず,同被告らは原告らに対し不法行為責任を負うと判断するのが相当である。
(2) 原告らは,これに加え,被告代表者が,本件雑誌の発行当時,被告会社の代表取締役として雑誌の編集方針を決定する権限があったことなどを理由に,民法709条又は会社法4291項による責任を負う旨主張する。しかし,代表取締役が抽象的には編集方針を決定し得るとしても,本件記事の作成及び掲載に関し,被告代表者がいかなる関与をしたのか,あるいはいかなる任務懈怠があったのかについては何ら具体的な主張立証はない。【この点,1審原告らは,本件記事が本件雑誌に掲載され販売されたという事実自体が,1審被告代表者による任務懈怠(一審被告会社が発行する雑誌の記事等が,他人の権利を侵害しないよう実効性のある体制を構築すべき義務の懈怠)の証左であると主張する。しかしながら,1審被告会社における出版物の発行による権利侵害のおそれの有無及びその程度,それに対応して整備すべき体制の内容についての具体的な主張立証がない以上,1審被告代表者が取締役として負うべき注意義務の存在を的確に認定することはできないのであって,それにもかかわらず,本件記事の掲載により権利侵害が生じたことのみから直ちに,1審被告代表者の取締役としての第三者に対する損害賠償責任を肯定することはできず(このような状況で損害賠償責任を肯定するのは,1審被告代表者に,一種の結果責任を負わせるのに等しいものといわざるを得ない。),1審原告らの上記主張を採用することはできない。】そうすると,原告らの被告代表者に対する請求は理由がないというほかない。
(3) 上記(1)の被告発行人及び被告編集人の行為は被告会社の職務としてされたものであるから,被告会社は,民法7151項に基づく不法行為責任を負う。
4 争点(4)(損害の額)について
【(1)】以上によれば,被告会社,被告発行人及び被告編集人は,原告らに対し,人格権及び人格的利益を侵害したことにつき連帯して不法行為責任を負うと認められる。
 そこで原告らの損害の額について検討するに,本件記事による原告らの人格権及び人格的利益の侵害態様は前記のとおりであり,【本件記事は,1審原告らの乳房や裸体を読者に想像させることを目的とするものと認められ,その掲載は,1審原告らにとってはその意に反する性的な嫌がらせに当たるともいうべきものであり,】これにより原告らは芸能人であることを考慮しても女性として羞恥心を著しく害されるなどの精神的被害を受けたとみることができる。これに加え,本件雑誌の発行部数が23万部に及ぶことからすれば,本件記事を本件雑誌に掲載したことによる原告らの人格的利益の侵害の程度は看過し難いものがあるといえるところ,他方において,前記前提事実のとおり,原告らの肖像等が掲載されている部分は全248頁の本件雑誌の一部に限定され,本件雑誌の中で特に目立つ位置にあるものでないことといった事情をも考慮すると,原告らの損害の額としては,各原告の肖像の掲載位置,大きさ,コメントの内容等には若干の相違があるものの,いずれも75万円を相当と認める。
 また,本件の事案の内容,審理の経過等に鑑みれば,上記被告らの不法行為と相当因果関係のある弁護士費用の額は,原告らそれぞれにつき5万円が相当である。
(2) 1審被告会社らは,本件記事に掲載された肖像の掲載位置,大きさ,これに付されたコメントの内容などによって,1審原告らそれぞれに対する慰謝料額に自ずから差異が生じると主張する。
 しかしながら,本件記事は,1審原告らの乳房ないし裸体を読者に容易に想像させるという点においては,1審原告らのそれぞれの肖像毎に質的な差異があるということはできず,それぞれの肖像の掲載位置,大きさ,これに付されたコメントの内容を踏まえても,1審原告らの慰謝料額に差を生じさせないことが不相当であるということはできない。
 次に,1審被告会社らは,1審原告らに対する慰謝料の算定に当たっては,性的な表現を伴う肖像等の利用について,芸能人として一定程度の受忍義務があることや,わずか3頁の記事中に25名もの女性芸能人が掲載されているという本件記事全体との対比を考慮すべきであると主張し,さらに,他の同種事案との均衡を指摘する。
 しかしながら,1審被告会社らの指摘する点を踏まえても,1審原告らにとっては本件記事の掲載がその意に反する性的な嫌がらせに当たるともいうべきものであること,これによる1審原告らの人格的利益の侵害の程度は看過し難いこと,その他前記(1)に説示した事情に照らすと,1審原告らに対する慰謝料額は前記(1)のとおり1人につき75万円と認定することが相当である。
 以上によれば,1審被告会社らの上記主張は,いずれも採用することができない。
5 争点(5)(差止め及び廃棄の必要性)について[管理人注:控訴審同旨]
(1) 前記前提事実のとおり,本件雑誌は週刊誌であるから,その性質上,店頭販売されるのは発売日である平成25117日からの1週間に限られるのが原則であり,それ以降に被告会社が本件雑誌を店頭販売のために印刷し,販売することはないものと解される。
(2) これに対し,原告らは,被告会社がなお本件雑誌の在庫をバックナンバーとして販売しているとして,本件雑誌の印刷,販売の差止め及び廃棄の必要性がある旨主張する。
 そこで判断するに,…によれば,被告会社のホームページ上に,本件雑誌を含む過去に発行された「週刊実話」の表紙がバックナンバーとして掲載されていること,本件雑誌の購入を希望する場合には「お問い合わせフォーム」により被告会社に連絡するよう求める旨及びバックナンバーについては在庫完売等の事情により購入できない場合がある旨の記載があることが認められる。なお,原告らは,上記ホームページ(平成26820日にプリントアウトしたもの)を証拠として提出するのみであり,原告らが上記ホームページを通じて本件雑誌を購入することができたかを明らかにしていない。これらのことからすると,被告会社が本件雑誌の在庫を販売のため保有していると認めるに足りる証拠はないというほかない。
(3) したがって,本件口頭弁論終結時点において被告会社が本件雑誌を販売し,又は販売するおそれがあると認めることはできないから,上記差止め及び廃棄の必要性は認められず,原告らの差止め等の請求は理由がないと解すべきである。

【控訴審】

 当裁判所も,原判決と同様,①本件記事の本件雑誌への掲載は,1審原告らのパブリシティ権を侵害するとは認められないが,同人らの人格権及び人格的利益を侵害すると認められ,②1審原告らの請求のうち,本件雑誌の印刷,販売の差止め及び廃棄を求める部分については必要性が認められず理由がないが,金員の支払を求める部分については,1審被告会社らに対しそれぞれ80万円及びこれに対する遅延損害金の連帯支払を求める限度で理由があり,その余の部分はいずれも理由がないものと判断する。その理由は,次のとおりである。
1 争点(1)(パブリシティ権侵害の成否)について
(1) 人の氏名,肖像等(以下,併せて「肖像等」という。)は,個人の人格の象徴であるから,当該個人は,人格権に由来するものとして,これをみだりに利用されない権利を有する。そして,肖像等が有する顧客吸引力を排他的に利用する権利,すなわちパブリシティ権は,上記の人格権に由来する権利の一内容を構成しており,肖像等を無断で使用する行為は,①肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用し,②商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品等に付し,③肖像等を商品等の広告として使用するなど,専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合に,パブリシティ権を侵害するものとして,不法行為法上違法となる(最高裁平成2422日第一小法廷判決)。
 1審原告らは,本件記事における1審原告らの肖像等の使用は,肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用するものであり(上記の①類型),専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とする場合に当たると主張する。
(2) そして,1審原告らは,いずれも幅広く芸能活動を行い広く知られた女性芸能人であり,本件記事に用いられた1審原告らの肖像等は,顧客吸引力を有するものといえることは事実である。
 しかしながら,本件記事の内容は,前提事実及び原判決別紙原告らの記事目録に記載のとおりであり,「勝手に品評!!芸能界妄想オッパイグランプリ」との見出しや,「手の届かない美女だからこそ,エッチな妄想は膨らむばかり。そこで,本誌が勝手に検証した結果をもとに,彼女たちのオッパイを大公開します。禁断のヌードを股間に焼き付けろ!」との文章とともに,1審原告らを含む女性芸能人25名の顔を中心とした肖像写真の胸部に相当する箇所に,裸の胸部(乳房)のイラストを合成した画像を,同人らの乳房の形状等を想起させるようなコメントやレーダーチャートを付して掲載したというものである。
 また,本件記事に用いられた1審原告らの肖像写真は,表紙を含めて248頁ある本件雑誌全体のうち,グラビア部分とはいえわずか3頁の中に,合計25名の女性の写真を組み込んだ記事において,その一部として用いられたものにすぎないこれらの写真は,いずれもモノクロ写真であって,写真の大きさも,縦6cm,横4cmのものから縦12.2cm,横10.7cm程度のものであり,それ自体として見れば,独立した鑑賞の対象としてはややありふれたものであり,かかる事情は,これらを本件記事に掲載された他の肖像写真と併せて全体的に評価したとしても,同様である。
 このような本件記事の内容やその体裁に照らすと,本件記事は,1審原告らを含む女性芸能人らの肖像写真それ自体を鑑賞の対象とすることを目的とするものというよりもむしろ,上記肖像写真に乳房のイラストを合成することによって,これらに付された上記のようなコメントやレーダーチャートと相俟って,1審原告らを含む女性芸能人らの乳房ないし裸体を読者に想像させることを目的とするものであるというべきである。そして,本件記事は,このような目的に供するために,1審原告らを含む女性芸能人らの肖像写真に乳房のイラストを加えることによって新たに創作されたものを,読者による鑑賞の対象とするものということができる。一方,本件記事における乳房のイラスト部分は,それ自体としては肖像写真を離れて独立の意義があるとは必ずしもいい難いものの,上記のような目的を踏まえると,コメントやレーダーチャートとともに本件記事における不可欠の要素となっており,これらを単なる添え物と評価することは相当ではない。
 そうすると,本件記事に1審原告らの肖像等を無断で使用する行為は,肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用するものとはいえず,また,専ら1審原告らの肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするものと認めることもできず,かかる行為が,1審原告らのパブリシティ権を侵害すると認めることはできない。
(3) 1審原告らは,本件記事は1審原告らを含む女性芸能人らの肖像が主要な構成要素になることにより初めて雑誌記事として成立しており,肖像部分を除いた部分は本件記事の添え物で独立した意義を認めることはできないと主張する。
 確かに,本件記事は,一般人ではなく1審原告らを含む女性芸能人らの肖像等を用いていることに,読者を惹きつける記事としての意味があるということができる。しかしながら,本件記事は,肖像写真に乳房のイラストを加えることによって新たに創作されたものを,読者による鑑賞の対象とするものであり,本件記事における乳房のイラスト部分は,それ自体としては肖像写真を離れて独立の意義があるとは必ずしもいい難いものの,本件記事における不可欠の要素となっているから,これらを単なる添え物と評価することは相当ではないのは前記(2)のとおりである。
 以上によれば,本件記事が,専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とする場合に当たるということはできない。
2 争点(2)(人格権及び人格的利益の侵害の成否)について
(1) 1審原告らは,本件記事における肖像等の無断掲載は,1審原告らの人格権としての氏名権,肖像権及び名誉権,並びに人格的利益としての名誉感情を侵害すると主張する。
(2) 前提事実及び原判決別紙原告らの記事目録に記載のとおりの本件記事の内容に加え,…によれば,本件記事の大部分は,1審原告らを含む女性芸能人らの顔を中心とした肖像写真に,裸の胸部(乳房)のイラストを合成した画像(以下,本件記事に用いられた,1審原告らを含む女性芸能人らの肖像写真に乳房のイラストを合成した画像を「本件画像」ということがある。)で占められていること,上記肖像写真に合成された乳房のイラストは,画像編集・加工ソフトにより作画されたものであり,乳房の輪郭を実線で描き,これに複数の陰影を付けた画像を重ね合わせて形成されたもので,一見しただけでは写真と誤解する可能性がある程度には精巧さを備えたものであると評価することができること,上記肖像写真自体は,被写体である人物が衣服を着用した状態の上半身を撮影したものであるが,その胸部に相当する箇所に,上記の乳房のイラストが合成されており,乳房のイラストの大きさや向き,位置関係,白黒の陰影の度合いは,被写体である人物の身体や,その地肌の陰影の度合いと,できるだけ違和感なく融合するように作画されていること,本件記事中の1審原告らに付されたコメントは,各人の芸能活動における特徴的な言動等をパロディ化して,乳房に関する性的な表現としたものであり,レーダーチャートについても,同人らの乳房の形状等を想起させるような要素を取り上げ,点数化して評価したものであることが認められる。
 本件画像の内容や体裁は,被写体である人物が着用している衣服の胸部の部分のみが露わになっているような不自然さがあり,乳房の部分それ自体も注意深く見ればイラストであることに気付くことができるとはいえるものの,上記のとおり認定した諸事実を併せ考えると,これらの画像が,第一印象として,1審原告らを含む女性芸能人らが自らの乳房を露出しているかのような印象を,読者に与える可能性を否定することはできない。また,これらの画像は,少なくとも,1審原告らを含む女性芸能人らの乳房ないし裸体を読者に容易に想像(妄想)させるのに十分な程度には,巧みに合成されたものであるということができる。
 このような本件記事における表現の内容は,その肖像を無断で使用された女性にとっては,自らの乳房や裸体が読者の露骨な想像(妄想)の対象となるという点において,強い羞恥心や不快感を抱かせ,その自尊心を傷付けられるものであるということができる。
 さらに,本件記事は,肖像写真に乳房のイラストを合成した画像だけでなく,1審原告らの芸能活動に関係する性的な表現を含むコメントや,露骨な性的関心事を評価項目とするレーダーチャートが付されており,これらによって読者の1審原告らに対する性的な関心を煽り,1審原告らに羞恥心や不快感を抱かせるものであるということができる。
 以上によれば,本件記事は,社会通念上受忍すべき限度を超えて1審原告らの名誉感情を不当に侵害するものであるとともに,受忍限度を超えた肖像等の使用に当たるというべきである。
 よって,本件記事を本件雑誌に掲載する行為は,1審原告らの人格権としての氏名権及び肖像権,並びに人格的利益としての名誉感情を違法に侵害する不法行為を構成すると認められる。
(3) 1審被告らは,1審原告らの肖像に合成された胸部のイラストを読者が本物の乳房等と誤解するおそれは皆無であると主張する。
 しかしながら,本件画像は,その内容や体裁に照らして,第一印象として1審原告らが自らの乳房を露出しているかのような印象を,読者に与える可能性を否定することができないのは,前記(2)のとおりである。また,本件画像は,少なくとも,1審原告らの乳房ないし裸体を読者に容易に想像させるのに十分な程度には,巧みに合成されたものであることも前記(2)のとおりであり,このような点に照らして,1審原告らの人格権及び人格的利益を侵害するものであるということができるから,本件画像における乳房の部分が,被写体である人物自身の乳房の写真ではないことに読者が気付くことができるとしても,それによって本件記事の違法性は左右されない。
 よって,1審被告らの上記主張を採用することはできない。
 次に,1審被告らは,本件記事における肖像等の無断掲載は,1審原告らが芸能活動をする上での受忍限度の範囲内にあると主張する。
 この点,1審原告らはいずれも芸能人であるから,その容貌や姿態等は公衆の関心事であり,その芸能活動に関し,自らの意図とは異なる態様でマスメディアに取り上げられることも,一定程度は受忍すべきであると考えられる。そして,…によれば,1審原告らの中には,芸能活動において,胸の大きさを強調するような,水着や露出度の高い服装をし,そのような姿の写真や映像を公表し,胸の大きさ等を映画やテレビドラマの役柄等において表現するなどしている者がいると認められる。
 しかしながら,これらの芸能人としての活動を踏まえても,1審原告らにとって,自らの乳房ないし裸体そのものについては,依然として私事性,秘匿性が高いというべきであるから,自らの乳房や裸体を露骨に読者に妄想させることを目的として作出された本件画像が,マスメディアによって広く頒布されることを当然に受忍すべきということはできない
 
よって,本件記事における肖像等の無断掲載が,1審原告らの芸能活動をする上での受忍限度の範囲内にあるとの1審被告らの主張を採用することはできない。











相談してみる

ホームに戻る