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利用許諾契約の解釈(38)-契約の成立を否定した事例E-
「徴収金管理プログラム事件」平成26715日大阪地方裁判所(平成26()995

【コメント】本件は、原告が、原告を著作権者とする「徴収金事務管理支援システム」という名称のプログラム(「本件プログラム」)につき、被告との間で、その使用契約を締結して被告の運営する複数の高校のコンピュータにこれをインストールしたが、被告の債務不履行(使用料の不払い)により同契約は解除され終了したと主張して、本件プログラムの使用差止め等を求めた事案です(被告は、原告の主張する契約を否認し、それとは異なる使用許諾を含む契約を締結したと主張して争った)。


 判断
 前記で認定した事実を前提に,原告の主張する本件契約成立の事実又は被告主張契約成立の事実が認められるかにつき検討する。
(1) 原告の請求は,本件プログラムの基本価格コンピュータ1台あたり385万円を5年にわたり分割し,これに維持管理費を加算して支払う旨の契約が成立したことを前提とするものであるが,被告がこのような契約を締結するためには,市長又は専決者の決済を受け契約書を作成すべきところ,本件において本件契約を内容とする契約書が作成されていないことについては当事者間に争いがない。
(2) また,本件プログラムを導入するにあたり,市立5校の事務長らが,各校の備品として収納管理ソフトを25万円で購入することを前提に経費を概算し,原告も,簡易なメンテナンスを含むパッケージソフトとしての商品単価を記載した請求書を発行して,これに対応する支払を受けていることは前記で認定したとおりであるが,この一連の過程において,本件プログラムの価格として,上記25万円を大幅に上回る金額が提示され,その一部の前払として上記支払がされたと解し得るような客観的証拠は提出されていない
 原告は,「教育委員会−学校間ネットワークシステム」をP1に提案した際に,スタンドアローンシステムで300万円,ネットワークシステムで500万円である旨を説明したとするが,前記で認定したところによれば,教育委員会,学校の複数の業務をOA化し,ネットワーク化することを内容とする前記システムと,各校毎に授業料及び諸費の収納管理のみを行う本件プログラムとを同一視することはできないし,原告が被告に交付した前記システムの説明文書には,300万円,500万円といった金額は記載されていない。
(3) 前記で認定したとおり,原告は,本件プログラムの導入に際し,各校につき252000円又は20万円の支払を受けた後,平成202月以降も各校につき7万円,5万円,3万円,6000円(1万円)といった金員の支払を受けている。
 しかしながら,前記で認定したところによれば,上記各追加支払については,原告が行った修正プログラムの作成や研修,あるいはデータ移行作業に対する対価又は報酬としての対応関係が認められるのであって,原告が主張するような内容で本件契約が成立しており,被告の予算の限度で,その一部の支払がされたと解し得るようなものではない。
(4) 仮に,原告が主張する内容で本件契約が成立していたとすれば,原告は,平成194月ころ,本件コンピュータ1ないし5に本件プログラムをインストールし,平成202月にこれを稼働させた後も,本件契約に基づく代金の支払いをほとんど受けられないまま,修正プログラムの作成等を行い,平成234月の時点では2000万円以上の未収金が生じていたにもかかわらず,本件コンピュータ6に本件プログラムをインストールしたことになる。
 しかしながら,前記で認定したところによれば,原告は,平成234月以降,双星高校の事務長との間でトラブルになった後に,本件契約の存在を主張するにいたったものの,原告が,それ以前に,市立5校の関係で,本件契約どおりの代金の支払を求めたり,あるいは本件契約の解除を主張して,本件プログラムの使用の停止を求めたことを示すような証拠は提出されていない
 原告は,平成23721日の面談の際のP1の発言や,その後,P1が,使用料,保守管理費を予算計上する旨述べたことを指摘するが,P1は,原告との間でトラブルとなり,原告が本件プログラムの使用停止を求めていることを考慮し,学務課の担当者として発言等しているにすぎず,上記発言等から,P1が本件契約の成立を前提としているということはできない。
(5) 以上検討したところを総合すると,原告と被告との間で,本件契約が成立したと認めることはできないというべきであり,原告の請求のうち,本件契約の成立を前提とする部分については,その余の点を検討するまでもなく理由がない。
 
また,前記で認定したところによれば,本件プログラムの導入に際し,被告はこれをパッケージプログラムとして購入し,備品購入費として代金を一括で支払うことを前提に交渉を行い,原告もこれに対応する請求書を発行して代金の支払を受け,コンピュータに本件プログラムをインストールした後は,プログラムの改修,研修,データ移行といった個別の事項について支払を受けた事実が認められるのであるから,本件プログラムを本件各コンピュータにインストールするにあたり,原告と被告の間では,原告の有する徴収金管理プログラムを被告の事務の実情に合わせて修正し,インストール後も簡易なメンテナンス作業を行うこと,本件プログラムの複製物については所有権を移転し,本件プログラムの使用については期限を定めずに許諾する旨の合意が成立したと解するのが相当であり,これによると,原告の請求のうち,被告の本件プログラムの使用が,原告の著作権侵害にあたることを前提とする部分も,やはり理由がないというべきである。











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