著作権重要判例要旨[トップに戻る]







インターネット掲示板への投稿文章の著作物性
HP掲示板投稿文章書籍出版事件」
平成140415日東京地方裁判所(平成13()22066/平成141029日東京高等裁判所(平成14()2887 

【原審】

 
著作権法による保護の対象となる著作物は,「思想又は感情を創作的に表現したものである」ことが必要である。
 「思想又は感情を表現した」とは,単なる事実をそのまま記述したような場合はこれに当たらないが,事実を素材にした場合であっても,筆者の事実に対する何らかの評価,意見等が表現されていれば足りる。また,「創作的に表現したもの」というためには,筆者の何らかの個性が発揮されていれば足りるのであって,厳密な意味で,独創性が発揮されたものであることまでは必要ない。他方,言語からなる作品において,ごく短いものであったり,表現形式に制約があるため,他の表現が想定できない場合や,表現が平凡かつありふれたものである場合には,筆者の個性が現れていないものとして,創作的な表現であると解することはできない
 そこで,上記の観点から,原告各記述部分について,著作物性の有無を検討する。
 (略)
 原告各記述部分は,その表現及び内容に照らして,後記の原告各記述部分を除いたその余の部分については,筆者の個性が発揮されたものとして,「思想又は感情を創作的に表現したもの」といえるから,著作物性が認められる。
 なお,被告森拓之事務所及び被告Lは,原告各記述は,それらに対応する質問又は回答と組み合わさって初めて価値が生ずるものであり,単独では価値がないから,原告各記述には著作物性が認められない旨主張する。しかし,言語の作品について,情報としての価値があるか否かは,思想及び感情の創作的表現であるか否かの判断に影響を与えるものということはできないから,同被告らの上記主張は失当である。
 また,被告森拓之事務所及び同Lは,本件掲示板への書き込みは匿名ですることも可能であるが,匿名で書き込みをした者は,自らが書き込んだ文章に対して責任を負うことはないのであるから,上記文章についての著作権を認める合理性はない旨主張する。匿名による著作物の公表であっても,著作物性を肯定する妨げにならないことは,著作権法上明らかであるから,同被告の上記主張は失当である。
 もとより,インターネットにおける掲示板上に書き込んだ投稿文章であっても,著作物性の成否に関する前記の判断基準に何ら消長を来すものではない。
 これに対して,原告各記述部分のうち,以下の部分は,@文章が比較的短く,表現方法に創意工夫をする余地がないもの,Aただ単に事実を説明,紹介したものであって,他の表現が想定できないもの,B具体的な表現が極めてありふれたもの,として筆者の個性が発揮されていないから,創作性を否定すべきである。

【控訴審】

 
上記で述べた解釈に照らすと,原告各記述部分は,それ自体としてみても,原判決が著作物性を否定した部分も含め,いずれも,程度の差はあれ記述者の個性が発揮されていると評価することができるから,著作物性を認めるのが相当である。この点において,当裁判所は,原判決と判断を異にする。
 (略)
 控訴人らは,原告各記述部分のようなインターネット上の掲示板への書込みの著作物性について,@インターネット上の掲示板への書込みは全世界において毎秒単位で膨大な数がなされ,しかも,随意に消去されているため,その全容を把握することが困難であること,Aインターネット上の書込みを利用するために,書込みをした者の承諾を得ようとしても,書き込みが多くの場合匿名でなされるため,連絡をすることが困難であることから,このような承諾手続が必要となるとインターネット上の情報の利用が制約されることとなり,ひいてはインターネットの発展を阻害することになること,Bインターネット上での掲示板への書込みは,多くの場合対価が得られないような程度の内容のものが大部分であること等の実状に鑑みると,インターネット上の掲示板への書込みの著作物性の判断に当たっては,従来の情報伝達手段におけるより厳格な基準によるべきであり,具体的には「何らかの評価,意見」や「何らかの個性」があるだけでは足りず,「相当程度にまとまった独自の思想又は感情に基づく独創性が表現されている」ことを必要とすると解すべきである,と主張する。
 しかしながら,膨大な表現行為が行われているため全容の把握が困難であること,匿名で行われた場合に表現者の承諾を得るのが困難であること,対価が得られないような程度の内容の表現行為が多く見られることは,インターネット上の書込みに限られず,他の分野での表現についてもいえることであるから,これらの事情は,インターネット上の書込みの著作物性の判断基準を他の表現についてよりも厳格に解釈することの根拠とすることはできないというべきである。控訴人らは,インターネット上の書込みについて,承諾を必要とする範囲を広く解すると,インターネット上の情報の利用を制約することになり,ひいてはインターネットの発展を阻害することになる,と主張する。しかしながら,インターネット上の書込みについて,その利用の承諾を得ることが全く不可能というわけではない。また,承諾を得られない場合であっても,創作性の程度が低いものについては,多くの場合,表現に多少手を加えることにより,容易に複製権侵害を回避することができる場合が多いと考えられるから,そのようなものについても著作物性を認め,少なくともそのままいわゆるデッドコピーをすることは許されない,と解したとしても,そのことが,インターネットの利用,発展の妨げとなると解することはできないというべきである。











相談してみる

ホームに戻る