著作権重要判例要旨[トップに戻る]







黙示の利用許諾を認定した事例
「雑誌『法政』・懸賞論文事件」
平成21116日東京地方裁判所(昭和61()2867/平成31219日東京高等裁判所(平成2()4279 

【原審】

 
5回被告大学懸賞論文授賞式及び受賞祝賀会が昭和58120日に行われ、原告も、これに参加したが、その際、被告大学学務部学務課職員として、被告大学懸賞論文に関する事務を担当していたBが、原告に対し、優秀賞受賞論文である原告論文を被告雑誌の同年23月合併号に掲載することになった旨伝えたところ、原告は、これに対して異議を唱えるなど、特別の意思表示をしないままBと雑談を続けた、原告は、同年216日付消印の郵便をもって、被告大学通信教育部の訴外Cあてに書簡を送ったが、これには「授賞式の時に、学務課の担当の方が、雑誌「法政」にも載せると言っておりましたので、正しい原稿を渡して下さるようにお願いいたします。」との記載がある、以上の事実が認められる。
 右認定の事実によれば、被告は、第5回懸賞論文募集に当たって、応募者に対し、応募論文の著作権の帰属、出版等の利用に関する事項を何ら明らかにしていないのであるから、被告雑誌発行の趣旨及び被告大学懸賞論文の制度の趣旨が前記被告の主張のとおりであるとしても、そのことから直ちに、応募者の応募行為が、応募論文の著作権の贈与、出版権の設定又は出版の許諾等の意思表示に当たるものと認定することは困難である。また、原告は、右認定の応募歴、受賞歴を有しているから、第5回懸賞論文に応募する際には、もし、優秀賞を受賞すれば、自分の論文が被告雑誌に掲載されることもありうるといった程度の認識を有していたであろうことは認定しえないではないが、第4回懸賞論文までの優秀賞受賞論文のすべてが被告雑誌に掲載されたわけでもなく、原告自身、優秀賞を受賞しながら、被告雑誌に掲載されなかったという経験を有しているといった右認定の事実に照らすと、原告の第5回懸賞論文の応募行為自体が、直ちに被告に対する著作権の贈与、出版権の設定又は出版の許諾の意思表示であると認定することも困難である。しかしながら、右認定の事実によれば、Bが、原告に対し、原告論文を被告雑誌に掲載することになった旨伝えたという事実は、これをもって、被告大学懸賞論文の事務担当者が、原告に対し、原告論文の出版の許諾を求めた行為に当たると認定することができ、また、これに対する原告の態度は、右に対する黙示の承諾に当たると認定することができる。そして、右認定の事実は、原告の右承諾の意思を裏付けるものであるということができる。この点について、原告は、Bとの会話は、祝賀会での飲酒中になされた雑談にすぎないから、承諾の意思表示というようなものではない旨主張するが、仮に飲酒中の雑談であったとしても、飲酒中であったため、意思表示に瑕疵があったという事実についての主張立証はなく、かえって、原告の意思表示が承諾の意思表示であることを裏付けるに足りる事実が認められるのであるから、原告の右主張は、採用することができない。

【控訴審】

 
前記に認定したように、控訴人は昭和58120日に開催された第5回被控訴人大学懸賞論文授賞式及び受賞祝賀会において、右懸賞論文の事務を担当していた同大学学務部学務課職員のAから本件論文を本件雑誌へ掲載することになった旨の申入れを受けたのに対して何らの異議を述べていない上、その後、前記に認定したように、本件論文の本件雑誌への掲載を前提とした内容の書簡を被控訴人大学宛に送付していることからすると、控訴人は、前記の受賞祝賀会の席におけるAからの論文掲載の申入れに対して、黙示の承諾をしたものと推認するのが相当というべきである。控訴人は、前記Aとの話においては、掲載許諾において通常は必ず同意されるところの校正のスケジュール等に関する内容などの事項は全くなく、ただ前記Aからの一方的な申入れがあったにすぎないと主張するが、かかる内容が確定されなければ掲載許諾の合意が成立し得ないものとは解されないから、右主張は採用できないし、控訴人は前記受賞祝賀会における掲載許諾を前提とした書簡を被控訴人に送付していることは前述のとおりである以上、前記Aからの一方的な申入れがあったにすぎないとすることはできず、控訴人の前記主張は採用できない。











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