著作権重要判例要旨[トップに戻る]







将来発生する著作権に基づく差止の可否
「『
THE WALL STREET JOURNAL』抄訳事件」平成61027日東京高等裁判所(平成5()3528 

【コメント】以下の判例中の「民事訴訟法226条」は、現在の「135条」に当たります。

[参考:民事訴訟法135条(将来の給付の訴え)]

将来の給付を求める訴えは、あらかじめその請求をする必要がある場合に限り、提起することができる。
 


 著作権法112条は、著作権を侵害するおそれがある者に対し、その侵害の予防を請求することができる旨規定しているから、既に著作権が発生している場合には、たとえ侵害行為自体はいまだなされていない段階においても、予測される侵害に対する予防を請求することができることはいうまでもない。
 問題は、請求の根拠となる著作物が口頭弁論終結時に存在しておらず、将来発生することとなる場合にも将来の給付の訴えとして差止請求を求めることができるかという点にある。
 民事訴訟法226条は、将来の給付の訴えについて、予めその請求をする必要がある場合にはこれを認めているが、この訴えが認められるためには、その前提として、権利発生の基礎をなす事実上及び法律上の関係(請求の基礎たる関係)が存在していることが必要であり、したがって、将来発生する著作権に基づく差止請求を無条件に認めることはできない
 しかし、新聞の場合について考えてみると、当該新聞が将来も継続して、これまでと同様の一定の編集方針に基づく素材の選択・配列を行い、これにより創作性を有する編集著作物として発行される蓋然性が高く、他方、これまで当該新聞の発行毎に編集著作権侵害行為が継続的に行われてきており、将来発行される新聞についてもこれまでと同様の編集著作権侵害行為が行われることが予測されるといった事情が存する場合には、著作権法112条、民事訴訟法226条の各規定の趣旨、並びに新聞は短い間隔で定期的に継続反復して発行されるものであり、発行による著作権の発生をまってその侵害責任を問うのでは、実質的に権利者の救済が図れないこと、新聞においては、取り上げられる具体的な素材自体が異なっても、一定の編集方針が将来的に変更されないことが確実であれば、編集著作物性を有するものと扱うことによって法律関係の錯雑を招いたり、当事者間の衡平が害されたりするおそれがあるとは認め難いことに鑑み、将来の給付請求として、当該新聞が発行されることを条件として、予測される侵害行為に対する予防を請求することができるものと解するのが相当である。
 (略)
 控訴人は、著作権は著作物の創作という事実によって発生するものであって、著作物の存在しない、その内容さえ分からない段階で著作物としての保護が与えられるなどということは、著作権法上考えられないことであり、また、具体的著作物が作成されていない段階で将来著作物が作成されたら、その著作権侵害の排除を求めるということは具体的法律関係に関する争訟とはいえず、将来発行される被控訴人新聞についての編集著作権に基づく差止請求は理由がない旨主張する。
 
しかし、前記に述べた理由により、被控訴人が将来発行する被控訴人新聞も、これまでと同様の編集著作権を取得するものと認めるのが相当であることを前提とし、かつ、将来の給付の必要性がある場合に当たるとして、被控訴人新聞が発行されることを条件に、発行により生じる編集著作権に基づく予防請求を認めたものであり、もとより具体的法律関係に関する争訟性も充足しているものであって、控訴人の右主張は理由がない。











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