著作権重要判例要旨[トップに戻る]







黙示の利用許諾を認定した事例(3)
「人形作品の写真集出版事件」
平成190131日横浜地方裁判所(平成16()3460/平成190725日知的財産高等裁判所(平成19()10022 

【コメント】本件は、原告が制作した人形作品を被写体とした写真集(「本件写真集」)が出版され、被告が著作権者として印税を受け取り、そのうちの30万円を原告に支払ったところ、原告が、被告が本件写真集の著作権を有するのであれば本件各人形の使用を許諾しなかったなどと主張して、被告に対し、不法行為に基づく損害賠償金の支払を求めた事案です。

 ここでの争点は、「本件写真集の制作及び出版が、本件各人形の著作権を有する原告の使用許諾を得ずにされたものとして不法行為に当たるか」です。 


【原審】

 原告は,被告が著作権を有するような写真集に,本件各人形の使用を許諾する意思はなく,また許諾した事実もない旨主張する。
 しかしながら,前記のとおり,原告は,被告から本件写真集を制作する話を持ちかけられ,写真集の制作に向けた打合せに参加し,謝辞を起案し,ゲラ刷りの写真集を確認する等して,その制作に種々協力しており,被告ないしトーイズから30万円の支払も受けているのであるから,原告は本件各人形を使用して写真集を制作することを許諾していたというほかはない
 確かに,原告は,本件写真集の著作権が自分に帰属するものと考えていたようにうかがわれるし,また,自分に著作権が帰属しないのであれば本件各人形の使用を許諾しなかったと供述しているが,それは原告の内心の事情にすぎず,他者が外部から知り得ることではない。すなわち,本件写真集の制作に当たり,原告は本件各人形が使用されることに何の異議も唱えていないし,かえって,上記のように色々と協力しているのであり,これについて著作権が自己に帰属することが前提である旨を被告その他の関係者に表示していたと認めるべき証拠はないし,また,被告がその旨を原告に告げる等して欺罔した等のことを認めるに足りる証拠もない
 したがって,被告が内心で著作権の帰属についてどのように考えていたにせよ,原告は本件各人形の使用を許諾したと認められるのであり,被告が本件各人形についての原告の著作権を違法に侵害したとか,それが不法行為になると認めることはできない。
 以上により,本件写真集の制作及び出版は,原告の本件各人形についての使用許諾を得てされたものであると認められるから,同使用許諾がないことを前提とする請求は理由がない。

【控訴審】

 控訴人は,本件各人形が使用されることに異議を唱えることなく,本件写真集(本件作品集)の制作に向けた活動を行ったのは,制作される本件写真集の著作権が控訴人に帰属することを前提とするものであり,自己以外の第三者が著作権者となる本件写真集に本件各人形を使用することを許諾した事実はないから,被控訴人が,控訴人からアイデアのすべてを提供させ,制作を進めて本件写真集を出版させたことは,本件各人形について控訴人が有する著作権を侵害する不法行為を構成する旨主張する。
 しかし,控訴人の主張は,以下のとおり理由がない。
 本件写真集の制作について,控訴人が創作的な表現に関与したと評価するに足りる行為を行っていないことは,前記のとおりである。また,前記認定のとおり,控訴人と被控訴人は,本件写真集の著作権の帰属についての具体的な話合いをしたことはないのであるから,被控訴人が制作される本件写真集の著作権を控訴人に帰属させ,又は移転したということもできない(かえって,…によれば,被控訴人は,本件写真集自体の著作権が控訴人に帰属するものとは考えていなかったことが認められる。)。
 また,本件全証拠によっても,被控訴人において,控訴人をして本件写真集の著作権が自己に帰属するものと誤信させるよう控訴人を欺罔した事実は認められず,被控訴人が控訴人の誤信に乗じて本件各人形の使用を許諾させた事実も認められない。
 (略)
 したがって,控訴人主張の被控訴人の不法行為は成立しない。











相談してみる

ホームに戻る