著作権重要判例要旨[トップに戻る]







複製権又は翻案権侵害の判断基準(5)
「‘
独り暮らしをする若い女性’のイラスト複製翻案事件」平成210326日大阪地方裁判所(平成19()7877 

 著作物の複製とは,既存の著作物に依拠し,その内容及び形式を覚知させるに足りるものを再製することをいい,著作物の翻案とは,既存の著作物に依拠し,かつ,原著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することができる別の著作物を創作することをいう。したがって,被告各イラストが原告各イラストを複製又は翻案したものというためには,被告各イラストが原告各イラストの特定の画面に描かれた女性の絵と細部まで一致することを要するものではないが,少なくとも,被告各イラストに描かれた女性が原告各イラストに描かれた女性の表現上の本質的な特徴を直接感得することができることを要するものというべきであり(最高裁昭和5397日第一小法廷判決,同平成9717日第一小法廷判決参照),その結果,被告各イラストの女性が原告各イラストの女性を描いたものであることを想起させるに足りるものであることを要するものというべきである。
 したがって,原告各イラストの著作権者である原告において,被告各イラストが原告各イラストを複製又は翻案したと主張している本件においては,被告各イラストが原告各イラストに依拠して作成されたことを前提として,それが原告各イラストを複製したものか又は翻案したものかを区別することに実益はなく,少なくとも,原告各イラストのうち本質的な表現上の特徴と認められる部分を被告各イラストが直接感得することができる程度に具備しているか否かを検討することをもって足りるというべきである。以下においては,そのような観点から検討することとする。
 
(略)
 上記のとおり,原告としては,個々の被告各イラストがそれぞれ原告各イラストのうちどのイラストに依拠して作成したものであるかを具体的に特定することは必ずしも必要でないが,個々の被告各イラストが個々の原告各イラストを複製又は翻案したか否かを判断するためには,最低限,個々の被告各イラストが依拠したと考えられる原告各イラストを選択し,特定した上で,個々の被告各イラストが,このように特定された個々の原告各イラストの本質的な表現上の特徴を直接感得することができるか否かを検討する必要がある。したがって,まず,個々の原告各イラストの本質的な表現上の特徴がどこにあるのかを検討する必要がある。
 そして,この点を検討するに当たっては,個々のイラストを他のイラストとは切り離してそれ自体からその本質的な特徴は何かを検討するのではなく,原告各イラスト全体を観察し,原告各イラストを通じてそのキャラクターとして表現されているものを特徴付ける際だった共通の特徴を抽出し,これをもとに個々の原告各イラストの本質的な表現上の特徴がどこにあるかを認定すべきものと解される。なぜなら,原告各イラストは,原告が別紙原告イラスト目録で挙げるだけでも127点の多数に及ぶものであるところ,これらの各イラストは同一の女性(キャラクター)を表現するものとして同一のコンセプトの下に描かれたものであるから,そのキャラクターを特徴付ける共通の特徴を見いだすことができるのであり,その特徴は,まさに個々の原告各イラストの本質的な表現を特徴づけるものとみるのが相当だからである。もちろん,キャラクターなるものは,そのイラストの具体的表現から昇華した人物の人格ともいうべき抽象的概念であって,具体的表現そのものではなく,それ自体が思想又は感情を創作的に表現したものということはできない(前掲最高裁平成9717日第一小法廷判決参照)から,キャラクター自体に著作物性を認めることはできない。しかし,個々の原告各イラストの本質的な表現上の特徴が何かを検討する際に各イラストに共通する表現上の特徴を考慮することは,キャラクター自体に著作物性を認めることではないから,これを考慮することに何らの問題はないというべきである。











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