著作権重要判例要旨[トップに戻る]







「推定」(61条2項)を覆した事例
「振動制御器プログラム翻案権侵害請求事件」
平成180831日知的財産高等裁判所(平成17()10070 

 上記のとおり,本件プログラムの著作権は,92年基本契約,94年基本契約及びF3契約により,当然に,控訴人から被控訴人に譲渡されたところ,92年基本契約及び94年基本契約において,著作権に係る条項は,「本契約に基づき開発されたソフトウェアの著作権は甲(注,被控訴人)に帰属する。」とされ,F3契約においても著作権に係る条項は,「当該製品開発過程で生じる著作権の対象となりうるものは,甲(注,被控訴人)に帰属するものとする。」とされているのみで,本件プログラムの翻案権は,譲渡の目的として特掲されていないそうすると,著作権法612項により,上記翻案権は,本件プログラムの著作権を譲渡した控訴人に留保されたものと推定されることとなる。
 
被控訴人は,本件においては,上記推定を覆す事実が認められるとして,本件プログラムの翻案権は,控訴人に留保されずに著作権とともに被控訴人に譲渡された旨主張し,控訴人はこれを争うので,以下検討する。
 (略)
 これら交渉の過程に照らせば,F3契約においては,控訴人と被控訴人間においては,F3に係る本件プログラムについても,将来,改良がされることがあること,控訴人はその改良に積極的に協力するが,改良につき,主体として責任をもって行うのは,被控訴人であることが当然の前提となっていたことが認められる。すなわち,当事者間では,被控訴人が本件プログラムの翻案をすることが当然の前提となっていたと認められるのであって,これは,被控訴人による本件プログラムの翻案権を前提としていたものと解するほかない。
 したがって,上記に照らせば,控訴人と被控訴人間では,翻案権の所在について明文の条項は定められなかったものの,本件プログラムを改良するなど,被控訴人が本件プログラムの翻案権を有することが当然の前提として合意されていたものと認めるのが相当である。
 また,F3契約の条項に照らすと,第2条は,〔基本合意事項〕として,…上記で述べた趣旨を条項としたものというべきであり,控訴人が,「製品完成後においても市場および部品供給上や製品製造上の事情の変化に追随して,当該製品の市場競争力を維持するために必要な貢献」を行うことを規定する。同規定は,本件プログラムの改良等,本件プログラムが翻案される可能性を前提とするものであり,かつ,その翻案について,控訴人は「貢献」を行うとして,飽くまで翻案の主体は,被控訴人とするものであり,被控訴人が翻案権を有することを前提としているものと解することができる。
 したがって,F3契約の条項上も,被控訴人が本件プログラムの翻案権を有していることを前提としているものと認められる。
 以上によれば,F3契約において,本件プログラムの翻案権の帰属は,明文で定められているものではないが,控訴人と被控訴人間には,上記翻案権が被控訴人に帰属するものであるという合意が存在し,控訴人が開発する本件プログラムの著作権は,翻案権を含め,被控訴人に譲渡されたものと認めるのが相当である。
 (略)
 
以上によれば,著作権法612項の推定にかかわらず,本件においては,関係各証拠によって,上記推定とは異なる,本件プログラムの翻案権を控訴人から被控訴人に譲渡する旨の控訴人と被控訴人間の合意を認めることができるであり,この合意に基づき,本件プログラムの翻案権は,被控訴人が有するものというべきである。











相談してみる

ホームに戻る