著作権重要判例要旨[トップに戻る]







送り仮名の変更、読点の切除等を同一性保持権侵害と認定した事例
「雑誌『法政』・懸賞論文事件」平成31219日東京高等裁判所(平成2()4279 

 原判決別表番号…は、いずれも送り仮名の変更であり、同…はいずれも「……、等」とある部分の読点の切除であり、同…はいずれも中黒「・」を読点に変更したものであり、同…は改行の省略であることは当事者間に争いがない。
 ところで、著作権法201項は著作者はその著作物及び題号について同一性を保持する権利を有するとして、いわゆる同一性保持権を規定しているものであるが、同項にいうところの、著作物及び題号についてのその意に反する「変更、切除その他の改変」とは、著作者の意に反して、著作物の外面的表現形式に増減変更を加えられないことを意味するものと解するのが相当であるところ、かかる見地からみると、被控訴人の前記各行為が本件論文の外面的表現形式に増減変更を加えたものであることは、明らかというべきである。
 
そこで進んで、被控訴人のかかる行為が著作権法2023号(管理人注:現4号。以下同じ。)の「著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしてやむを得ないと認められる改変」に当たるか否かについて検討することとする。
 
著作権法は、著作物は、著作者の人格の反映であることから、前述のように、著作者の意に反する著作物に対する変更、切除、改変等の行為を禁止し、著作物の同一性を保持することにより著作者の人格権の保護を図っているものである。しかしながら、他方、かかる同一性保持権を厳格に貫いた場合には当該著作物の利用上支障が生じ、かつ、著作権者においても同一性保持権に対する侵害を受忍するのが相当であると認められる場合については、同条2項において、著作権者の意思に係らしめず、その同意を得ることなく変更、切除、改変等の行為が許容される例外的場合を規定しているところである。これによれば、同項1号においては、用字、用語等において多くの教育的配慮が要請される教科用図書、すなわち、小学校、中学校又は高等学校その他これらに準ずる学校における教育の用に供される検定済図書等に著作物を利用する場合及び著作物を学校向けの放送番組において放送する場合又は当該放送番組用の教材に掲載する場合を、同項2号においては、主として居住という実用的目的に供される建築物の増築、改築、修繕又は模様替えの場合を、それぞれ規定しているところである。
 そこで、同項3号における「著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしてやむを得ないと認められる改変」の意義についてみると、同条2項の規定が同条1項に規定する同一性保持権による著作者の人格的利益保護の例外規定であり、かつ、例外として許容される前記の各改変における著作物の性質(主として前記2号の場合)、利用の目的及び態様(前記1号、2号)に照らすと、同条3号の「やむを得ないと認められる改変」に該当するというためには、利用の目的及び態様において、著作権者の同意を得ない改変を必要とする要請がこれらの法定された例外的場合と同程度に存在することが必要であると解するのが相当というべきである。
 
以上の観点から被控訴人のした本件改変の正当性に関する前記主張をみると、前記の送り仮名の変更については、日本新聞協会の新聞用語懇談会が取り決めた方式に準拠したもので、広く一般に通用する用語法に従ったものであるとし、同読点の切除については、一般的な用例に準拠したものであるとし、また、前記中黒「・」の読点への変更については論述内容の誤解の防止及び他の論文との表記の統一の観点から行ったものであり、さらに、前記改行については当該箇所においては改行の必要性が認められず、行数の削減にもなるとの観点から行ったものであるとするもので、いずれも前記の3号にいうところのやむを得ない改変に当たると主張するものである。
 
しかしながら、本件論文は大学における学生の研究論文であり、また、本件雑誌が大学生を対象としたものであることは、弁論の全趣旨により明らかであることからすると、利用の目的において、教科用の図書の場合と同様に前記のような改変を行わなければ、大学における教育目的の達成に支障が生ずるものとは解し難いし、また、前記のような性格の論文において、他の論文との表記の統一がいかなる理由で要請されるのかも明確ではない。
 
そうすると、被控訴人の主張するところからは、かような著作物の利用の目的及び態様に照らし、本件論文の掲載に当たって、前記の著作権者の同意を得ない改変の必要性が例外的に許容されている1号及び2号の場合と同程度に存したものと解することは到底困難というべきであるから、かかる改変が著作権法2023号の「著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしてやむを得ないと認められる改変」に当たるとすることはできない。そして、このことは、仮に、前記のような改変により、当該部分の実質的意味内容を害するものではないとしても、同一性保持権が外面的表現形式に係るものであることからすると、何ら異なるところではないというべきである。











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