著作権重要判例要旨[トップに戻る]







ゲームシナリオの改変を同一性保持権侵害と認定した事例
「サウンドノベルゲーム用シナリオ無断改変事件」
平成130830日大阪地方裁判所(平成12()10231 

【コメント】「サウンドノベルゲーム」とは、「プレイヤーがゲーム画面に表示された文章を読み、物語中に数個用意された分岐点において複数表示された選択肢から一つを選ぶことにより、その後のストーリー展開が変化したり、一定の得点が得られる仕組みのゲーム」のことです。 

 本件シナリオは、前記前提事実記載のとおり、サウンドノベルゲームという種類のゲームソフトのためのシナリオであり、その内容は、…というストーリーのものである。そして、本件シナリオは、主題の設定、登場人物及び場面の設定、ストーリー展開に独自の工夫をこらし、具体的な文章表現においても、語句の選択、台詞の言い回しなどに原告独自の表現といえるものが存在するから、原告の思想又は感情を言語によって創作的に表現したものとして言語の著作物(著作権法1011号)に該当することが明らかである。したがって、その著作者である原告は、本件シナリオについて著作者人格権としての同一性保持権(同法201項)を有する。
 
著作権法201項にいう著作物の意に反する「変更、切除その他の改変」とは、著作者の意に反して著作物の表現に増減変更を加えることをいうと解されるところ、被告による本件改変には、別紙対照表記載のとおり、@物語の主たる舞台となる主人公マイの住居を61間のアパートから高級マンションに変更し、室内の調度類の描写を一部削除する、A分岐を追加して新たに14行書き下ろす、B…、C…、D…のように、本件シナリオの具体的文章表現に著しい増減変更を加えることにより、作品の構成やストーリーの展開に影響を与えたり、1パラグラフの中に文体や視点の異なる文章が混在する状態を生じさせるものが含まれている。このような大幅な改変を、原告の了解を得ずにその意思に反して行った以上、本件改変は、著作権法201項にいう著作者の意に反する著作物の「変更、切除、その他の改変」に当たるといえる。
 また、本件改変の多くは、平仮名表記を漢字表記に変更したり、アラビア数字を漢用数字に変更したり、疑問符又は感嘆符を加えたり、改行位置を変更するものであるが、このような変更も本件シナリオの外面的表現形式に増減変更を加えることに変わりはない。しかも、本件シナリオのように、小説と同様にゲームのプレイヤーが文字で表現された文章を読む形式の著作物においては、ある語を漢字で表記するか平仮名で表記するか、疑問符・感嘆符を用いるか、改行位置をどこにするかなどの表記方法の選択も、著作者の個性を表現する方法の一つであり、これらが表現上効果を及ぼす場合もあることを考慮すれば、このような表記方法の選択も著作者の創作意図に委ねられるものというべきである。したがって、本件改変のうち、表記方法に関する改変の部分も、原告の了解を得ずにその意思に反して行った以上、前同様に、同一性保持権の侵害となる著作物の改変に当たる
 (略)
 
被告は、ゲーム製作に当たり部材となるシナリオに修正、変更が加えられることは、ゲーム業界の事実たる慣習であり、同一性保持権の侵害に当たらないと主張し、本件において被告が提出した陳述書では、ゲームソフト開発に従事する者2名が、プレイステーション用ゲーム開発においては、最終段階で行われるソニーの内容チェックを見越して、開発者側で、外注先から提出されたシナリオやコンピュータグラフィック等について、事前に指摘が予測される箇所を修正、変更することがある旨の陳述をしている。しかしながら、上記各陳述によっても、ゲーム業界全体において、ソフト開発者がシナリオ原作者の了承なくして事前にシナリオ中の表現を修正、変更できるという事実たる慣習が形成されていると推認することはできず、他にこのような事実を認めるに足りる証拠はない。
 
また、被告は、本件改変は著作権法2023号に該当し、同一性保持権の侵害を構成しないと主張する。しかし、著作権法2023号は、プログラムの著作物の改変に関する規定であり、言語の著作物である本件シナリオには適用されないことが明らかであるから、被告の上記主張は失当である。
 
さらに、被告は、本件改変は著作権法2024号に該当し、同一性保持権の侵害を構成しないと主張する。
 しかし、著作権法2024号いう「やむを得ないと認められる改変」に該当するには、著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らし、著作権者の同意を得ない改変を必要とする要請が同項1号ないし3号に掲げられた例外的場合と同程度に存在することを要するものと解される。
 
前記のとおり、サウンドノベルゲームは、プレイヤーが主としてゲーム画面に現れた文章を読み、物語中に数個用意された分岐点において選択肢から一つを選ぶことによって、ストーリー展開を変化させ、ポイントを獲得するというゲームであるから、この種ゲームにおいて原作シナリオが果たす役割は、背景画像、音楽等と比較しても大であるといえる。このような本件シナリオについて、前記のような内容の本件改変が、著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らし、やむをえないものと認めることはできない。したがって、本件改変が著作権法2024号に該当するとはいえない。











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