著作権重要判例要旨[トップに戻る]







人物漫画に黒い目隠しを施した行為の同一性保持権侵害性が問題となった事例
「『ゴーマニズム宣言』事件」
平成120425日東京高等裁判所(平成11()4783 

【コメント】本件は、漫画家である原告(控訴人)が、原告の創作した漫画のカットを採録した書籍の著者、発行者である被告らに対し、当該採録されたカットの一部は原告の意に反して改変されているから同一性保持権を侵害している等と主張して、被告書籍の出版の差止め等を求めた事案の控訴審です。

  
本件で問題となったカットのうち、「カット45354」(原カットに黒い目隠しを施したもの)については、その同一性保持権の侵害を認定しませんでした。 


 控訴人は、引用の場合においては、「やむを得ない」改変か否かの解釈認定は、より一層慎重な吟味が必要であり、他にとるべき方法が全くなく、真にやむにやまれぬ状況でない限り適法とすべきではないと主張する。
 
しかし、著作権法2024号においては、「やむを得ない改変」か否かについて、引用であるか、それ以外の場合であるかを特別に区別していない。そして、これを実質的に考えても、引用は、新しい文化活動をしようとする者と著作権者との調整として、著作物の利用を許した規定であって、著作物の利用が許されているという点において、著作物の利用が許されている他の場合と異なるものではないそうである以上、「やむを得ない」改変か否かの解釈において、「やむを得ない」か否かが「引用」との関連において判断されるという当然の点は別として、他の場合と異なる基準を設けなければならない理由はないのである。
 控訴人の主張は、採用することができない。
 
[カット45354について]
 控訴人は、@風刺画や似顔絵では、「辛辣さ」や「醜さ」こそが作者の主観的主張であり、出版物においての売り物であるから、これを第三者が、「醜い」などという極めて抽象的曖昧な概念を用い、「他人の推測的不快感」を理由に、著作物を勝手に改竄してよいということは、著作権法の精神にかなうものではない、A一般に目隠しが使われるのは、当該人物が特定できないようにして、そのプライバシーを保護する目的であって、描写の「醜さ」や当該人物の「不快感」の排除や「名誉感情」の保護を目的としているのではない、B目隠しされたカットの方は、非常に汚らしく、人物の雰囲気を実に怪しげなものにしているから、黒い目隠しは描写の「醜さ」を軽減してないと主張する。
 しかし、風刺画や似顔絵であるからといって、他人の名誉感情を不当に侵害してよいものではないことは当然である。そして、醜く描写されているために名誉感情を侵害するおそれがあるか否かということは、単なる主観によるものとしてではなく、常識に照らして客観的なものとして判断することができるものである。…を見れば、原カット()()()は醜く描写されているために名誉感情を侵害するおそれがあり、カット45354においては、目隠しによって、名誉感情を侵害するおそれが低くなっていることが明らかであるから、右目隠しは、相当な方法というべきである。…











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