著作権重要判例要旨[トップに戻る]







連射機能が付加されたゲーム機専用コントローラーの販売行為の同一性保持権侵害性が問題となった事例
テレビゲーム機『ネオジオ(NEOGEO)』事件」平成90717日大阪地方裁判所(平成5()12306 

【コメント】本件は、家庭用テレビゲーム機「ネオジオ(NEOGEO)」(本体とコントローラーからなるもの。以下「本件ゲーム機」)を製造販売している原告が、本件ゲーム機本体にのみ接続可能な専用コントローラー(「被告製品」)を販売している被告に対し、本件ゲームソフトウエアはプログラムの著作物として、その上映による影像及び影像の動的変化は映画の著作物として、その著作者である原告は、本件ゲームソフトウエア並びにその上映による影像及び影像の動的変化について同一性保持権を有するところ、被告は、被告製品にいわゆる連射機能を付加していることにより当該同一性保持権を侵害していると主張して、被告製品の販売の差止め等を請求した事案です。 

 被告製品には、原告製品と同様、キャラクターを前後左右に動かしたり、何らかの行動を起こさせたりするために必要なレバー一本及びゲーム操作用ボタン四個が設置されているが、その外に、原告製品にはない連射機能を発揮する「ターボスイッチ」と称するスイッチが設置されている。
 
(略)
 
前記認定のとおり、被告製品に付加されている連射機能は、前記の読込方法に対応するものであり、ボタンと発振回路の組合せにより、ボタンが押されている間、コントローラーからオンとオフの電気信号を高速かつ規則的に反復して出力するものであって、ターボスイッチをオンにしてボタンを押し続ければボタンを一秒間当たり約22回の割合で規則的に反復して押すのと同じ電気信号を本件ゲーム機本体内のCPUに入力することになるから、受像機の画面上には、ボタンを一秒間当たり約22回の割合で規則的に反復して押した場合と同じ影像が映し出される結果になる。
 
このように、被告製品における連射機能は、コントローラーからオンとオフの電気信号を高速かつ規則的に反復して本件ゲーム機本体内のCPUに入力するものにすぎず、右のように入力されたゲーム操作情報に基づき、本件ゲームソフトウエアに蓄積された情報に従った影像が受像機の画面上に映し出されるにすぎないから、本件ゲームソフトウエアのプログラム自体には何らの改変も加えるものでないことが明らかである。
 
そして、本件ゲームソフトウエアのプログラム及びその上映により受像機の画面上に映し出される影像は、個々のプレイヤーの熟練度、好み、操作の仕方等によりきわめて多種多様な変化ないしストーリー展開を予定しているものであることが明らかであって、各テレビゲームをする際の具体的な影像の変化ないしストーリー展開は、もっぱら本件ゲームソフトウエアを購入し、プレイをするユーザーにおいて、コントローラーのレバー、ボタンを操作していかなる方法、タイミングで電気信号を発するかに委ねられているというべきであるが、被告製品における連射機能が本件ゲームソフトウエアのプログラム自体に何らの改変も加えるものでない以上、連射機能を使用した場合でも、その影像の変化ないしストーリー展開は、本来本件ゲームソフトウエアが予定していた範囲内のものといわなければならない。
 
もっとも、被告製品に付加されている連射機能は、ボタンを一秒間当たり約22回の割合で規則的に反復して押すのと同じ電気信号を出力するものであるところ、熟練したプレイヤーでも、特別の道具を用いない限りこのような時間的間隔で規則的に反復してボタンを押すことは不可能であるとしても、このことは右のとおりユーザーに委ねられたコントローラーからの電気信号(ゲーム操作情報)の入力の仕方の問題にすぎず、このことと本件ゲームソフトウエアのプログラム及びその上映により受像機に映し出される影像自体の改変の問題とは直接関係がないというべきである。
 
原告は、被告製品の連射機能を使用することが本件ゲームソフトウエアのプログラムに込められた原告の思想及び感情を原告の意に反して改変してしまうものであるとする理由として、本件ゲームソフトウエアの開発設計において原告の意図した内容ないし難度を下げるものである旨主張する。確かに前記のとおり、同記載の各ゲームにおいてはその連射速度がゲームクリアの成否に大きな影響を与えるものであるから、連射機能の使用によりゲームクリアが簡単になり、その意味で難度が下がることは明らかである。しかしながら、前記説示のとおり、各テレビゲームをする際の具体的な影像の変化ないしストーリー展開は、もっぱらユーザーにおいて、コントローラーのレバー、ボタンを操作していかなる方法、タイミングで電気信号を発するかに委ねられているというべきであって、ユーザーがその任意の選択により被告製品の連射機能を使用し、結果的に本件ゲームソフトウエアの難度を下げるような操作をすることも、本来本件ゲームソフトウエアが予定していた影像の変化ないしストーリー展開の範囲を出ないというべきである。
 
原告は、また、被告製品の連射機能を使用することは、人気ゲームソフトウエア「餓狼伝説シリーズ」「龍虎の拳シリーズ」等における「必殺技」の攻撃手段を繰り出すことをできなくし、四個のゲーム操作ボタンを押すタイミングの妙によるテレビゲームとしての興味を削ぐなど本件ゲームソフトウエアのおもしろさを左右する重要な要素に影響を与える旨主張する。確かに前記のとおり、被告製品における連射機能を使用すれば、「必殺技」あるいは特殊攻撃を繰り出すことが困難あるいは不可能になるが、本件ゲームソフトウエアを使用したゲームの一場面において「必殺技」等を繰り出すかどうかは、正にその時点におけるプレイヤーの判断に委ねられているものであり、連射機能を使用したために右「必殺技」等を繰り出せなくなることは、プレイヤーがそのような選択をした結果にすぎず、プレイヤーが「必殺技」等を繰り出したいと考えれば、連射機能をオフにすることによりいつでも「必殺技」等を繰り出すことができるのであるから、本来本件ゲームソフトウエアが予定していた影像の変化ないしストーリー展開の範囲内でプレイヤーの選択に委ねられたところといわざるをえない。
 
以上のとおり、被告製品の連射機能を使用することは、本件ゲームソフトウエアのプログラムに込められた原告の思想及び感情を原告の意に反して改変するものとはいえないから、被告が連射機能を付加した被告製品をユーザーに販売する行為は、本件ゲームソフトウエア並びにその上映による影像及びその動的変化について原告が専有する同一性保持権を侵害するものとはいえない











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