著作権重要判例要旨[トップに戻る]







ゲームソフトを改変するデータ編集プログラムを販売した者の不法行為責任
PS2専用メモリーカード編集ツール販売事件」平成140830日東京地方裁判所(平成13()23818/平成160331日東京高等裁判所(平成14()4763 

【コメント】本件は、原告は、プレイステーション2(「PS2」)用ゲームソフト(「本件ゲームソフト」)のコンピュータプログラム及び本件ゲームソフトの登場人物の画像、音楽その他一切の著作物に関する著作権及び著作者人格権を有するところ、被告が、本件ゲームソフトに「かすみ」という名称で登場するキャラクターについて、そのユーザーが裸体の「かすみ」を選択できるようにメモリーカード上のパラメータ・データを編集できるプログラム(「本件編集ツール」)を開発し、これをCD-ROMマガジンのCD-ROM(「本件CD-ROM」)に収録し、全国で販売した(ユーザーが本件編集ツールを実行し、市販のPS2専用メモリーカードのデータを書き換え、このメモリーカード(「本件メモリーカード」)を使用すると、元来「かすみ」のコスチュームとして使用することが予定されていない裸体画像がコスチュームの1つとして選択可能となる。)ことから、原告が、そのキャラクターのコスチューム画像を改変し得る本件編集ツールを作成の上、それを本件CD-ROMに収録し、販売した被告の行為は、原告の翻案権又は同一性保持権を侵害するものであると主張して、損害の賠償を請求した事案です。

【原審】

 
以上述べたところを総合すると,本件編集ツールは,本件裸体画像を表示することができることを主要な目的としているところ,被告は,そのような本件編集ツールを使用して作成した本件メモリーカードを使用して,本件裸体画像を表示させる者がいることを予期して,本件編集ツールを含む本件CD-ROMを多数販売し,その結果,ユーザーが被告の指示した方法に従って機器を操作することによって本件メモリーカードを作成し,それを通常のメモリーカードの使用方法に従って使用することにより,本件裸体画像が表示され,本件ゲームソフトが改変されたものと認められるから,本件CD-ROMに本件編集ツールを収録して販売し,その使用を意図して流通に置いた被告は,本件メモリーカードの使用による本件ゲームソフトの同一性保持権の侵害を惹起したものとして,民法709条の不法行為に基づく損害賠償責任を負うと解するのが相当である(最高裁判所平成13213日判決参照)。
 
被告は,ユーザーによる本件メモリーカードを使用する行為は,通常それによって表示された「かすみ」の裸体画像を公衆に見せるものではないから,同一性保持権侵害に当たらないと主張するが,上記で述べたとおり,被告は,本件編集ツールを本件CD-ROMに収録して多くの本件CD-ROMを販売することにより,それを買い受けた者が,本件メモリーカードを使用して,本件ゲームソフトを改変するという結果を生じさせたのであるから,その結果は,広範囲に生じており,不特定多数の者が改変された映像を見たものと認められる。したがって,被告の行為により同一性保持権侵害が生じたものということができることは明らかである。
 
被告は,現実に利用行為を行っているわけではない者を規範的に利用行為の主体と認定するためには,@その者の管理,支配の下に,現実の行為者が当該利用行為を行っていること,Aその者が,現実の行為者により利用行為がされることにより利益の得ることを目的としていること,以上の要件が具備されることを要するところ,本件については,これらの要件を具備していないから,被告を侵害行為の主体と考えることはできないと主張する。
 
上記@,Aの要件を具備している者が,著作権侵害の主体として責任を負うことがあるとしても,著作権侵害の責任を負う者が,このような者に限定される理由はない。本件においては,前記のとおり,被告は,本件編集ツールを含む本件CD-ROMを多数販売し,その結果,ユーザーが,本件メモリーカードを作成使用することにより,本件ゲームソフトが改変されたものと認められるから,このような事実関係の下では,被告について不法行為の成立を認めるのが相当であって,それが妨げられる理由はない。

【控訴審】

 
… したがって,本件メモリーカードの使用は,本件ゲームソフトを改変し,本件同一性保持権を侵害するものというべきであるところ,本件編集ツールは,本件編集による本件メモリーの作成のみを目的とするものであるから,専ら本件ゲームソフトの改変のみを目的とするものと認めることができ,これを収録した本件CD-ROMを販売し,他人の使用を意図して流通においた控訴人は,他人の使用による本件同一性保持権の侵害を惹起したものとして,被控訴人に対し,不法行為に基づく損害賠償責任を負うものというべきである(最高裁平成13213日第三小法廷判決参照)。
 
(略)
 
控訴人は,本件編集ツールを用いて本件裸体影像をモニター上に表示させるユーザーは,一般に自ら本件裸体影像を楽しむために改変を行うのであって,自らのモニターに本件裸体影像が表示されている状態を公衆に見せるということは通常ないから,ユーザーが本件編集ツールを用いて本件裸体影像をモニター上に表示させたとしても,私的領域内にとどまる改変であり,本件同一性保持権は侵害されないというべきであると主張する(管理人注:下記「コメント」参照)。しかしながら,ユーザーによる本件メモリーカードの使用が私的領域内にとどまるとしても,控訴人の行為は,上記のとおり,他人の使用による本件同一性保持権の侵害を惹起したものというべきであるから,控訴人の上記主張は採用することができない。…
 控訴人は,改変行為の主体は各ユーザーであり,@本件CD-ROMを購入したユーザーは,控訴人の管理,支配の全く及ばない自宅等に持ち帰り,控訴人の意思にかかわりなくユーザー自身の自由意思をもって本件CD-ROMに収録された本件編集ツールを用いて本件メモリーカードを作成し,それを用いてコスチュームを選択し,本件ゲームソフトにおける対戦画面の実行を行うのであって,ユーザーが上記行為をすることについて控訴人がユーザーを管理,支配しているとはいえず,A控訴人が本件CD-ROMを販売する目的は,本件編集ツールを用いて本件メモリーカードを作成し,コスチュームを選択して対戦画面を実行するという「改変」行為をユーザーにさせることにより利益を得ることにあったとはいえないから,控訴人が本件CD-ROMを販売した行為は,昭和63年最判のいう各要件を具備せず,また,本件CD-ROMは,「かすみ」の影像の改変のみを目的とするものではないと主張する。しかしながら,昭和63年最判は,スナック等の経営者が,カラオケ装置と音楽著作物である楽曲の録音されたカラオケテープと備え置き,客に歌唱を勧め,客の選択した曲目のカラオケテープの再生による伴奏により他の客の面前で歌唱させるなどし,もって店の雰囲気作りをし,客の来集を図って利益を上げることを意図しているときは,右経営者は,当該音楽著作物の著作権者の許諾を得ない限り,客による歌唱につき,その歌唱の主体として演奏権侵害による不法行為責任を免れないとしたものであり,音楽の著作物に係る著作権である演奏権侵害に関する事案であって,著作者人格権である同一性保持権の侵害に関する本件とは事案を異にし,適切でない。また,本件編集ツールは,ツール使用法に従って操作すると,パソコンからPS2用メモリーアダプターを介して接続されたメモリーカードに本件編集がされたデータが転送され,本件メモリーカードが作成されるものであることは上記のとおりである。そして,本件CD-ROMには,本件編集ツール以外の多数のソフトやデータ集なども収録されていることが認められるが,本件編集ツール自体には,本件編集による本件メモリーの作成以外の目的があるとは認められない。

【コメント】「私的領域内にとどまる改変は、同一性保持権の侵害に当たらない」との控訴人の主張は、より具体的には、次のようなものです:

「本件編集ツールを用いて本件裸体影像をモニター上に表示させるユーザーは,一般に自ら本件裸体影像を楽しむために改変を行うのであって,通常,自らのモニターに本件裸体影像が表示されている状態を公衆に見せるということはない。したがって,ユーザーが本件編集ツールを用いて本件裸体影像をモニター上に表示させたとしても,私的領域内にとどまる改変は,同一性保持権の侵害には当たらないから,本件同一性保持権は侵害されないというべきである。個人的又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的する翻訳,編曲,変形又は翻案が,これらの行為に著作物の改変が必然的に伴うことから,著作者の同意なくして行えないとするならば,著作権法431号は無意味な規定ということになるが,同法50条は,同法431号を無意味にする規定と解すべきではなく,一定の場合に著作権を制限するという法の目的に合致するように,同一性保持権が構成されなければならない。私的使用目的の改変等について翻案権を制限するという同法431号の目的に合致するためには,改変された著作物が公衆に提供又は提示されない限り,同一性保持権の侵害は成立しないというべきである。」 












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