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編集著作権の侵害性判断(5)
「心理測定質問票事件」平成141115日東京地方裁判所(平成14()4677 

【コメント】原告の代表取締役であるBは、組織の生産性を向上させるためのFFS理論なるものを提唱し、その理論に使用するための質問票である「Qシート」を完成しました。被告会社は、日経BPが運営するウェブサイトに合計210問の質問から構成される「IT業界向け市場価値測定テスト」(以下「測定テスト」という。)を掲載したところ、その質問のうちの50問は、Qシートの質問と同一(以下、これを「本件50」という。)でした。

 
本件は、被告会社の代表取締役がその職務を行うにつき、本件50問を無断で使用した測定テストを作成・掲載することで、BのQシートに関する著作権及び著作者人格権(複製権、氏名表示権、同一性保持権)を侵害したところ、原告(Bが代表取締役を務める株式会社)は、QシートについてBから独占的利用許諾を受けているとして、被告らに対し、損害賠償を求めた事案です。

 
本件で問題となった「Qシート」は、80問の質問とその回答欄等から構成されており、その中の質問文は、いずれも最小5文字、最大34文字の短文であって、疑問文ではなく肯定文又は否定文であり、これに対し、「はい」・「?」・「いいえ」で回答する欄が作成されていました。一方、「測定テスト」は、合計210問の質問とその回答欄から構成され、「本件50問」の配列はQシートの配列とは全く異なっており、測定テストにおける他の160問と混在していました 


 したがって,本件50問の個々の質問文の表現に,作者の個性が表出されているとは認められないから,創作性は認められない。著作権法は表現を保護するものであって,思想やアイディアを保護するものではないから,いずれの質問文の表現にも創作性が認められない以上,著作物性は認められない。
 
そして,個々の質問文に著作物性が認められない以上,これらの独立した質問文を80問集めたものであるQシートの質問文全体についても,それが編集著作物として著作物性を認められるかどうかという点を別にすると,著作物性は認められない。
 
(略)
 
Qシートの80問の質問文全部が測定テストに使用されているのではなく,測定テストに使用されているのは,そのうちの本件50問である。
 
別紙のとおり,本件50問の質問内容のうち,第26問「少数派になるより,多数派でいることの方が好き」,第40問「燃えやすく,冷めやすい」を除く48問については,1977年に発表されたED式質問票の50問とほぼ同じ内容であると認められる。ED式質問票は,アメリカの精神分析学者・精神科医であるHの「TA(交流分析)」法に基づきアメリカの心理学者Cが開発した性格分析手法で,…をまとめて,合計50問としたものである。
 
このように,本件50問が,原告がQシートを完成する以前に発表されたED式質問票の50問のうち48問とほぼ一致することからすると,本件50問のうち48問は、ED式質問票又はその基となった質問票に依拠して作成されたものと推認することができる。そうすると、上記のとおりQシートの質問文全体が素材の選択によって創作性を有するとしても,被告会社が,測定テストに本件50問のうち上記48問を選択して使用した行為は,Qシートの選択についての創作性を有する部分を複製した行為ということはできない。また,Qシートの質問文全体が素材の選択によって創作性を有するとしても,それは,前述のような目的の下に最適の80問を選択したことにあるから,その創作性は,1問や2問の選択に認められるものではなく,したがって,被告会社が,測定テストに本件50問のうちED式質問票にない2問を選択して使用した行為が,Qシートの選択についての創作性を有する部分を複製した行為ということはできない。よって,被告会社が本件50問を測定シートの作成に使用した行為は,Qシートの質問文全体の素材の選択による創作性を有する部分を複製した行為ということはできない。
 
前記認定のとおり,測定シートでは,本件50問は,他の160問と混在しており,その順序も,Qシートとは全く異なっている。したがって,上記のとおりQシートの質問文全体が素材の配列によって創作性を有するとしても,被告会社が,測定テストの作成に当たって本件50問を使用した行為は,Qシートの配列についての創作性を有する部分を複製した行為ということはできない
 よって,被告会社の行為がQシートについての複製権を侵害したとは認められないから,Qシートについての複製権侵害を理由とする請求は理由がない。
 
原告は,Qシートの著作者ではないから,著作者人格権を有していない。したがって,Qシートについての同一性保持権及び氏名表示権の侵害を理由とする請求は理由がない。











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