著作権重要判例要旨[トップに戻る]







伝記的作品の翻案性(2)
「伝記文学『コルチャック先生』vs.
戯曲『コルチャック先生』事件」平成140918日大阪高等裁判所(平成14()287 

 言語の著作物の翻案とは,既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいう。そして,ここに同一性を維持しつつ,直接感得することのできる表現上の本質的な特徴とは,創作性のある表現上の本質的な特徴をいい,思想,感情若しくはアイデア,事実若しくは事件など表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において既存の言語の著作物と同一性を有するにすぎない著作物を創作する行為は,翻案には当たらないと解するのが相当である(最高裁判所平成13628日判決参照)。
 
(略)
 
しかし,控訴人著作においては,基本的に,史実と先行資料及び関係者の証言を織り混ぜ,それに説明を加えることによって,時代状況やコルチャックの行動,心情,人間関係等を客観的に描き出すという表現方法が採られているのに対し,本件戯曲は,舞台演劇という性質もあって,コルチャックや周囲の人々の会話(台詞)によって,時代状況,コルチャックと関係者の人間関係や心情等を描くという表現方法が採られている。
 
また,控訴人著作及び本件戯曲に描かれているコルチャックの生涯の大枠ないし客観的人物像については,…においても同様にコルチャックの生涯の大枠ないし客観的人物像が描かれているところであって,上記内容,表現に関する限り,コルチャックに関する著述・製作に関わる者にとり,基礎的な事実として一般に認識されているものと考えられ,上記生涯の大枠ないし客観的人物像において,控訴人著作のみに見られる表現上の本質的な特徴があるとはいえず,したがって,その同一性もない。
 
(略)
 
以上のとおり,本件戯曲の各場面のうちには,コルチャックのゲットー日記や手紙及び詩等控訴人著作の翻訳部分の複製であると認められるものがあり,また,シーン15 ワルシャワ近郊「僕たちの家」の場面が,控訴人著作の翻案であると認められるが,その余の各場面については,いずれも控訴人著作の複製又は翻案であるとは認められず,上記複製ないし翻案とされる場面は,その本件戯曲において有している意味・効果を考慮すると,本件戯曲全体に占める重要性や分量が小さく,その余の各場面の占める重要性や分量の方が大きいから,本件戯曲全体が控訴人著作の複製又は翻案であるとすることはできない











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