著作権重要判例要旨[トップに戻る]







著作権侵害の成否(5)-表現手法の共通性-
「テレビ番組スタジオセット事件」平成110723日東京地方裁判所(平成10()27729)/平成120118日東京高等裁判所(平成11()4444 

【コメント】本件は、被告が放送番組においてセットを制作した行為が、原告の著作権を侵害すると主張して、原告が被告に対し、損害賠償を請求した事案です。

 
本件では、原告が「水槽に満たした水に光を透過させた美術作品」(「原告作品」)を創作したところ、被告が、NHK総合テレビの番組「ライバル日本史」のスタジオにおいて、「水槽の水に光を透過させたセット」(「被告セット」)を制作したとして、原告が、「被告セットは、水の波紋に照明を当てて投影された波状の模様を組み合せることにより、空間演出を行うというものであり、原告著作物を複製ないしは翻案したものである。したがって、被告の行為は原告作品に係る原告の著作権を侵害する。」と主張しました。 


【原審】

 原告作品は、平面で囲まれた部屋が空間として用いられていること、小山状に盛り上げられた白い布素材が用いられていること、先端部が尖った黒色の波形をした柱が用いられていること、天井から吊り下げられた白い紗幕が用いられていること、水槽が鑑賞者から見える場所に配置されていること、配色として白及び青が選択されていること等の特徴があるのに対し、被告セットは、中央テーブルを中心に円弧状の壁面で囲まれた部分が空間として用いられていること、12体の彫像(12神将)の写真が配置されていること、柱、梁及び壇が設けられていること、水槽が視聴者から隠れた場所に配置されていること、赤及び黄色等の色彩が用いられていること等の特徴があり、それぞれの特徴に共通点はなく、両者は、その具体的表現形態において類似性がない。したがって、被告セットは原告作品を複製ないしは翻案したものと認めることはできない。
 
原告は、原告作品と被告セットは、光源を水槽の下に配置し、波紋の生じた水面に光を透過させて、物体に投影させる手法を用いている点において共通すると主張するが、このような手法の共通性があるからといって、前記類否の判断に影響を与えるものではない(なお、右のような手法そのものは、著作権法において保護の対象となる著作物ということはできない。)。

【控訴審】

 控訴人作品と被控訴人セットとの類似性について
 控訴人は、控訴人作品の属性のうち、例えば部屋の大きさや形の細部、オブジェの材質、紗幕の配置の仕方、平面作品の図案等は、控訴人作品の本質的特徴ではないと主張する。しかし、控訴人作品の右属性こそは、控訴人作品の具体的表現形態の特徴であって、これが本質的特徴ではないということはできない。したがって、控訴人作品と被控訴人作品とは、これらの特徴について共通点がない以上、波紋様の光が物体及び壁面等に当てられているという抽象的な共通性を有するとしても、両者を類似するということはできない
 
控訴人が控訴人作品の「本質的特徴」と主張するものは、結局のところ具体的表現をする際に使用する手法ないし技法にすぎないものというべきである。そして、右のような手法ないし技法は、それ自体では、思想又は感情を表現したものということはできないから、著作権によって保護される対象とはならない
 
そうである以上、控訴人が控訴人作品の「本質的特徴」と主張するものが、被控訴人セットに存在するとしても、被控訴人セットは、控訴人作品の著作権又は著作者人格権の侵害となるものではない。











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