著作権重要判例要旨[トップに戻る]







二次的著作物の侵害性判断
「キューピー事件」
平成111117日東京地方裁判所(平成10()13236)/平成130530日東京高等裁判所(平成11()6345 

【コメント】本件は、原告が、キューピー人形について著作権を有するので、被告によるキューピーの図柄等の複製行為等が著作権(複製権、翻案権)の侵害に当たる旨等を主張して、被告に対し、当該行為の差止め等を求めた事案です。 

【原審】

 本件人形に関しては、Dによって創作された先行著作物があること、その一例として1903年作品A及び1905年作品が存在すること、右各作品は、いずれも日米著作権条約の効力発生前に発行され、我が国においてその著作権は保護されないことは、いずれも当事者間に争いがない。
 
ところで、原告が著作権法上の保護を求める著作物について、当該著作物が先行著作物を原著作物とする二次的著作物であると解される場合には、当該著作物の著作権は、二次的著作物において新たに加えられた創作的部分についてのみ生じ、原著作物と共通しその実質を同じくする部分には生じないと解すべきである。二次的著作物が原著作物から独立した別個の著作物として著作権法の保護を受けるのは、原著作物に新たな創作的要素が付加されたためであって、二次的著作物のうち原著作物と共通する部分は、何ら新たな創作的要素を含むものではなく、別個の著作物として保護すべき理由がないからである(最高裁平成9717日第一小法廷判決参照)。
 
以上の点に鑑みて、後記のとおり、本件人形は1903年作品A及び1905年作品の二次的著作物であると認められるから、被告イラスト及び被告人形と本件人形との類否を判断するに当たっては、第一に、原告が本件において保護を求める本件人形と1903年作品A及び1905年作品とを対比して、本件人形において創作的部分があるか否か、あるとして創作的部分はどの部分かを検討し、第二に、被告イラスト及び被告人形と本件人形とを対比して、右の創作的部分において共通するか否かを検討することとする。
 
(略)
 以上のとおり、本件人形と被告人形は、共通点を有するが、その共通点のほとんどは、既に1903年作品A及び1905年作品に現われているし、本件人形に付加された新たな創作的部分とはいえないこと、他方、右認定したとおり、両者には数多くの相違点が存在すること等の事実を総合判断すると、被告人形は、本件人形における本質的特徴を有しているとはいえず、両者は類似していないと解するのが相当である。
 
(略)
 
以上のとおり、本件人形と被告イラストは、共通点を有するが、その共通点のほとんどは、既に1903年作品A及び1905年作品に現われているし、本件人形に付加された新たな創作的部分とはいえないこと、他方、右認定したとおり、両者には数多くの相違点が存在すること等の事実を総合判断すると、被告イラストは、本件人形における本質的特徴を有しているとはいえず、両者は類似していないと解するのが相当である。

【控訴審】

 
複製又は翻案について
 
二次的著作物の著作権は、二次的著作物において新たに付与された創作的部分についてのみ生じ、原著作物と共通し、その実質を同じくする部分には生じないと解するのが相当である(最高裁平成9717日第一小法廷判決)。これを本件についてみると、上記のとおり、本件著作物は、本件イラスト著作物中に描かれたキューピーイラストを原著作物とする二次的著作物であり、また、原著作物であるキューピーイラストを立体的に表現した点においてのみ創作性を有するから、立体的に表現したという点を除く部分については、キューピーイラストと共通しその実質を同じくするものとして、本件著作権の効力は及ばないというべきである。
 
そこで、この見地から控訴人主張の複製又は翻案の成否について判断すると、本件著作物それ自体が証拠として提出されていない本件においては、その複製物である本件人形と被控訴人イラスト等を対比検討するのが相当である。
 
(略)
 
次に、被控訴人イラストは、平面的な著作物であるから、立体的な本件著作物の創作的な表現が再生されているというためには、被控訴人イラストから立体的な表現を看取することができるか、看取された立体的表現が本件人形の内容及び形式を覚知させるか、又は本件著作物の本質的な特徴を直接感得させるものであることを要するというべきである。…
 
そうすると、本件著作物が原著作物であるキューピーイラストを立体的に表現した点においてのみ創作性を有し、その余の部分に本件著作権は及ばず、他方、被控訴人イラスト等が上記の諸点において本件人形と相違し、全体的に考察しても受ける印象が本件人形と異なることに照らすと、本件著作物において先行著作物に新たに付加された創作的部分は、被控訴人イラスト等において感得されないから、被控訴人イラスト等は、本件著作物の内容及び形式を覚知させるに足りるものでもなく、また、本件著作物の本質的な特徴を直接感得させるものでもないから、本件著作物の複製物又は翻案物に当たらないことは明白である。
 
控訴人は、本件著作物の原著作物であるキューピーイラストについて我が国における保護期間が満了していないことを理由として、本件著作権の効力が原著作物に新たに付加された創作的部分についてのみならず本件著作物全体に及んでいると主張する。
 
しかしながら、二次的著作物の著作権が原著作物に新たに付加された創作的部分についてのみ生ずることは、二次的著作物の著作権者が原著作物について著作権を有していることによって影響を受けないと解するのが相当である。なぜならば、二次的著作物が原著作物から独立した別個の著作物として著作権法上の保護を受けるのは、原著作物に新たな創作的要素が付加されているためであって、二次的著作物のうち原著作物と共通する部分は、何ら新たな創作的要素を含むものではなく、別個の著作物として保護すべき理由がないところ(上記最高裁判決)、我が国において原著作物の著作権について保護期間が満了しておらず、かつ、二次的著作物の著作権者が原著作物の著作権者であるからといって、二次的著作物のうち原著作物と共通する部分について別個の著作物として保護すべき理由がないという点では、二次的著作物の著作権者が原著作物の著作権者でない場合と何ら異なるところはないからである。
 
したがって、キューピーイラストの著作権について我が国における保護期間が満了しておらず、かつ、控訴人がその著作権者であるということは、本件著作権の権利範囲に影響を及ぼさないというべきであり、控訴人の主張は、採用することができない。
 
また、控訴人は、原審第4回口頭弁論期日において、本件イラスト著作物について著作権の保護を求める著作物として主張する趣旨ではないし、今後もそのような趣旨の主張をするつもりはないと述べているとおり、本件において、上記原著作権に基づく請求をしていない以上、原著作物の著作権について保護期間が満了しておらず、控訴人が原著作権の著作権者であるということは、本件訴訟の結論に影響を及ぼさない。
 
したがって、被控訴人イラスト等が本件著作物の複製物又は翻案物であるということはできないから、控訴人の本件著作権に基づく差止め及び廃棄の請求は、その余の点について判断するまでもなく、理由がない。











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