著作権重要判例要旨[トップに戻る]







差止請求権の代位行使の可否
「フィンランド‘トントゥ’人形ぬいぐるみ事件」
平成140131日東京地方裁判所(平成13()12516 

【コメント】本件は、原告(小物・雑貨の輸入卸及び販売を業とする会社)が、本件「オリジナル人形」の著作権管理を著作権者(フィンランド在住の人形作家「A」)から委ねられているとして、著作権者Aの著作権に基づき、被告らに対し、被告らが所持管理するぬいぐるみ(「本件ぬいぐるみ」)の頒布の差止めを求めた事案です。

 
本件では、原告とAとの間で締結されていた英文契約書の中身も問題とされましたが、当該契約書の「第12条」は、次のように規定していました(参考までに、「1条」と「3条」も掲載しておきます)。

1条:「Aは,イノップ(管理人注:原告のこと)に対し,日本国内において,本契約書に定められた条件でライセンシーに対しAの著作権の利用許諾を与える権限を授与し,イノップはこれを受諾した。」
3条:「日本国内においてAの著作権の利用許諾をライセンシーに授与する権限は,イノップに独占的に帰属する」
12条:「イノップはAの著作権を侵害する可能性のある者には,利用許諾を与えてはならない。イノップが日本においてAの著作権の侵害又は侵害のおそれを発見した場合には,イノップはAに通知し,当該侵害から著作権を防御するようすべての可能な手続を進めるものとする。侵害の場合には,本契約の当事者は,著作権を防御するために合理的な手段を講じるよう協力しなければならない。」

[参考:民法423条(債権者代位権)1]

債権者は、自己の債権を保全するため、債務者に属する権利を行使することができる。ただし、債務者の一身に専属する権利は、この限りでない。


 上記の契約書の条項によれば,原告との間の契約については,@「著作権管理契約書」と題されたものであり,AAが原告に対してオリジナル人形の著作権の利用許諾をライセンシーに与える権限を授与する旨の条項(1条,3条)のほか,ライセンシーへの許諾についての細目を定める条項が置かれているが,原告自身がオリジナル人形の複製物を製造又は販売することを前提とした条項は全く置かれておらず,B原告は,ライセンシーから受領した使用料の中から,一定割合の金銭を自己の報酬として控除した残額をAに送金することとされており(9条,10条),日本におけるオリジナル人形の著作権の利用による売上げの多寡について,原告自身は全く危険を負わないこととなっている。
 
これらの点に照らせば,オリジナル人形の著作権につき,原告が上記契約によりAから授与された権限は,日本におけるライセンシーを開拓し,ライセンシーに対してAに代わって著作権の利用を許諾し,ライセンシーからロイヤリティを受領してAに送金するということに尽きるものであって,原告自身がオリジナル人形の複製物の製造ないし販売をすることにつき許諾を受けることは全く内容とされていない
 
[著作権に基づく侵害差止請求権の代位行使の可否]
 
ところで,著作権者から著作物の独占的使用許諾を得ている使用権者については,著作権者に代位して当該著作物の著作権に基づく侵害差止請求権を行使することができるという見解が存在する。これは,特許権における独占的通常実施権者が特許権者に代位して特許権に基づく侵害差止請求権を行使することができるとの見解にならって提唱されているものと解されるが,著作物の独占的使用許諾を得ている使用権者であれば,特許権における独占的通常実施権者と同様に,当該著作物の模倣品の販売等の侵害行為により直接自己の営業上の利益を害されることから,独占的使用権に基づく自らの利益を守るために,著作権者に代位して侵害者に対して著作権に基づく差止請求権を行使することを認める余地がないとはいえない
 
しかしながら,本件においては,原告は,上記認定のとおり,オリジナル人形につき,著作権者から著作権の独占的な利用許諾を得ている者ではなく,単にライセンシーに対する許諾付与業務及びライセンシーからのロイヤリティの徴収業務を委任されているというだけであり,オリジナル人形の著作権を侵害する模倣品等が販売されたとしても,それにより直接自己の営業上の利益を害される関係にあるものではない。したがって,原告が,Aに代位してオリジナル人形の著作権に基づく差止請求権を行使することは,認められないというべきである。
 なお,仮に,原告とAの間の上記契約12条を,Aの著作権に基づく侵害差止請求権を原告が行使することを認めた条項と解することができるとしても,そのように著作権に基づく差止請求権について著作権者が契約により他者に行使させることを認めることは,弁護士法72条において弁護士以外の者の法律事務の取扱いが禁じられ,信託法においても訴訟信託が禁止されていること(信託法11条),及び,著作権等管理事業法上,著作権等の管理事業を営もうとする団体が登録制とされて種々の義務を負うなど事業上一定の制約を受けるものとされていること等の法制度の趣旨に反するものといわざるを得ない。したがって,上記契約の条項を根拠に,Aから契約上その権限が付与されているとして,原告がAの著作権に基づく差止請求権を行使することも,認められない
 
したがって,いずれにしても,原告がAの著作権に基づく差止請求権を行使することは認められないというべきである。











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