著作権重要判例要旨[トップに戻る]







契約交渉の打ち切りは信義則違反に当たるか
「ゲームソフト『グリーン・グリーン』基本シナリオ事件」
平成150710日東京高等裁判所(平成15()546 

 控訴人は、本件の事実関係の下では、被控訴人ガンホーについて、契約締結上の過失の法理に基づく損害賠償責任(その他の被控訴人については加担者としての責任)が認められるべきであると主張する。しかし、控訴人の主張は、以下のとおり理由がない。
 
既に認定判示したところによれば、控訴人と被控訴人ガンホーとは、企画中の「グリーン・グリーン」について、被控訴人ガンホーが開発業務を、控訴人が販売業務を担当することを前提に、平成1212月ころから契約を締結すべく交渉を行っており、平成1315日には、両者の間で「グリーン」の開発に関して、被控訴人ガンホーが正式契約の締結に先立ち「グリーン・グリーン」の開発を開始すること、両者に正式契約を締結する意思のあることを確認すること等を内容とする本件覚書が取り交わされ、その後、両者の間で正式契約の締結に向けて交渉が続けられたが、支払その他の条件につき、結局合意を得るには至らず、被控訴人ガンホーは、「グリーン・グリーン」の販売元を被控訴人サカモトとすることとし、平成13315日付けで被控訴人サカモトとの間で商品開発契約を締結したのである。
 
控訴人は、被控訴人ガンホーが被控訴人サカモトと契約を締結し、控訴人との契約交渉を打ち切った行為は、信義に反し、契約締結への控訴人の正当な期待を裏切ったものであると主張するが、契約条件等が折り合わないために契約を締結することが困難と予測される場合に、交渉の打ち切りによって交渉関係から離脱することは、一般に契約自由(契約を締結しない自由)の範囲内のこととして許されるのであって、特別の事情がない限り、交渉を打ち切った側に責任が生ずることはないというべきである。
 
とりわけ、本件においては、被控訴人ガンホーは、自ら開発資金を先行支出して「グリーン・グリーン」の開発を進めており、契約交渉の難航に伴う開発資金の資金繰り等の負担を負う立場にあったのであるから、本件覚書の締結から2か月余を経過しても契約条件について合意が得られないという状況の下で、同被控訴人が契約交渉を打ち切ったことを、不合理ないし信義に反すると評価することはできない。また、本件覚書は、前記認定のとおり、被控訴人ガンホーが支出した開発資金を、販売元になる予定であった控訴人から確実に受け取れるようにする目的で作成されたものとみられるのであり、契約が確実に締結されるであろうとの信頼を控訴人に対して与える性格のものとは解されない。控訴人が契約締結についての期待を抱いたとしても、その期待は、本来、被控訴人ガンホーとの間で同被控訴人に支払うべき開発費の金額や支払時期について合意が得られ、契約締結に至った場合に初めて満足される筋合いのものである上、本件では、リスクを負って正式契約前に開発業務を進めていたのは被控訴人ガンホーであって、控訴人が契約交渉が継続していたことに起因してその地位を格別不利益に変更したというような事情も認められないから、控訴人の期待は、それ自体として法的保護に値するものではないというべきである。











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