著作権重要判例要旨[トップに戻る]







803項の解釈が問題となった事例
「検定英語教科書録音テープ無断販売事件」
平成30522日東京地方裁判所(昭和59()6312 

【コメント】本件は、検定済英語教科書「NEW HORIZON English Course REVISED EDITION」(「本件教科書」)を発行した原告が、Aら13名と共同して本件教科書を著作し、その著作者の一人として、本件教科書についての共有著作権の持分14分の1を有するが、本件教科書の原告以外の著作権者であるAら13名との間において、「出版契約書」と題する契約書(「本件契約書」)をもって、本件教科書を利用した録音テープを原告が独占的に製作販売することができる旨の契約を締結し、他の著作権者に対し、原告に本件教科書を利用した録音テープを独占的に製作販売させることを内容とする債権(「独占的録音テープ製作販売権」)を有しているところ、被告が、本件教科書の基本文、本文及び新出単語欄等を朗読して録音したテープ(「本件テープ」)を製作して本件教科書を複製し、これらを一個当たり1,500円の小売価格で販売したため、被告の本件テープの製作販売行為は、原告の有する独占的録音テープ製作販売権を侵害するものであると主張して、債権侵害による損害賠償を求めた事案です。 

 原告が、昭和581216日、原告以外の著作権者である前記Aら13名の編集委員との間において、本件契約を締結したことは、前認定のとおりであるが、…によれば、本件契約書中には、「各編集委員は、甲(注・原告)の承諾なくして、本書と同一の科目に属する教科書、および本書の全部または一部と同一、もしくは、明らかに類似と認められる著作物(同一内容にもとづく教師用指導書、解説書、図鑑、掛図、図表、地図、ワークブック、およびレコード、録音テープ、ビテオテープ、トランスペアレンシーその他の視聴覚教材等を含む)を自ら出版し、または他人をして出版させることはできない。」との条項(第6条)および「甲(注・原告)は、本書に付随し、または準拠する教師用指導書、解説書、図鑑、掛図、図表、地図、ワークブック、およびレコード、録音テープ、ビデオテープ、トランスペアレンシーその他の視聴覚教材等を本書の編集委員に編集を委嘱して発行し、または自ら編集発行し、もしくは、第三者に編集発行させることができる。」との条項(第10条)があることが認められる。
 
右認定の事実によると、原告は、Aら13名の本件教科書のその他の著作権者に対し、原告に本件教科書の内容を録音したテープを独占的に製作販売させることを内容とする債権を有しているものということができる。
 (略)
 
被告は、本件契約は、著作者の著作権行使の権能を事実上奪うものであって、過酷な財産権行使の制限に当たるから、公序良俗に違反し、無効である旨主張するが、著作権の全部の譲渡ですら認められていることに照らすと(著作権法611項)、前認定の本件契約書第6条及び第10条に定めるようなことは、著作権者として当然になしうることであることは、明らかであり、したがって、被告の右主張も、採用の限りでない。
 
被告は、本件契約には、原告に本件教科書の録音テープ等の製作販売権ないしその許諾権を付与した条項があるが、このような条項は、強行法規である著作権法803項の規定に違反し、無効である旨主張する。そこで審案するに、…によれば、本件契約書には、「乙(注・編集委員全員の代表者)は、甲(注・原告)に対し各編集委員の著作権持分につき本書の出版権を設定する。」(第2条)との条項があることが認められ、右認定の条項が原告に著作権法にいう出版権を設定するものであるとしても、出版権の制度は、「出版権者は、…その出版権の目的である著作物を原作のまま印刷その他の機械的又は化学的方法により文書又は図画として複製する権利を専有する。」(同法801項)ものとして、出版権者による独占的な出版を保障しようとするものであって、同法803項に、「出版権者は、他人に対し、その出版権の目的である著作物の複製を許諾することができない。」旨規定しているのは、若しも、出版権者が、第三者に対し、右の出版権と同一内容の複製の許諾をすることができるとすれば、その制度の趣旨を没却することになるからであり、したがって、右規定にいう「出版権の目的である著作物の複製」とは、出版権の内容である「著作物を原作のまま印刷その他の機械的又は化学的方法により文書又は図画として複製する」ことをいうものと解される。そうすると、本件契約の条項中、原告に本件契約書の録音テープ等の製作販売権ないしその許諾権を付与した条項は、出版権者である原告が、第三者に対し、出版権の目的である著作物の複製を許諾することができるとするものではなく、同法803項の規定に違反するものではないというべきである。もっとも、同法803項にいう「複製」の中には録音による複製も含まれるものと解すべきであるとしても、…によれば、本件契約書の録音テープ等の製造販売権ないしその許諾権を付与した条項は、本件契約の重要な内容を構成するものであることが認められるから、本件契約の解釈としては、同条項及び前示出版権設定の条項が両立するように解すべきであって、そうすると、前示出版権設定の条項にいう「出版権の設定」とは、むしろ、著作権法にいう出版権の設定ではなく、複製の許諾を意味するものと解するのが相当である。したがって、被告の主張は、採用するに由ないものといわざるをえない。











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